食肉卸業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

2025.03.31

公開日:2025.03.31

2025.03.31

2026.02.01

更新日:2026.02.01

2026.02.01

食肉卸業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

昨今、食肉卸業界はコスト上昇や生産から販売までの体制が問題となり、M&A取引が活発に行われるようになっています。

食肉卸業界では、コスト削減や事業拡大、効率的な物流・在庫管理などを目的としてM&Aが注目されています。

では、具体的に食肉卸業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の食肉卸業界のM&A事情を解説します。さらに、食肉卸業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。

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食肉卸業界とは?業界の現状を解説

食肉卸業界の動向

食肉卸業界は、日本の食生活を支える重要なインフラです。現在は、コスト高騰の影響を受け、大きな転換期を迎えています。まずは、業界の定義や最新の現状について整理して解説します。

食肉卸業界の定義

食肉卸業界とは、仕入れた食肉を加工し、小売店や飲食店へ供給する産業です。枝肉を部位ごとに切り分ける工程において、付加価値を生み出します。

産地と消費者をつなぎ、食肉の安定供給を支える重要な役割を担っています。安全な商品を届けるための品質管理や、効率的な物流網の構築・維持が主な業務内容といえるでしょう。

また、顧客の要望に応じた細かなカットや小分け包装など、現場のニーズに寄り添ったサービスも提供しています。このように、専門的な加工技術と物流機能を併せ持つことで、食肉流通の中核として機能しています。

食肉卸業界の動向

食肉卸業界は、消費者の価値観の変化を背景に、変革を迫られています。飼料価格の上昇が続くなかで、より高い経営努力が求められる状況です。

人手不足への対応策として、機械化やIT化を急ぐ企業も増えています。また、食の安全意識の高まりから、流通履歴の適切な管理が不可欠となっています。こうした変化に的確に対応できるかどうかが、持続的な成長を実現する鍵となるでしょう。

食肉卸業界の市場規模

総務省・経済産業省が公表した「2024年経済構造実態調査(2023年実績)」によると、農畜産物・水産物卸売業の売上高は35兆3,892億円に達しています。前年の33兆円規模から増加しており、市場は底堅く推移しているといえるでしょう。

食肉卸業界では、必要な分を必要なだけ届ける「ジャストインタイム」の供給体制が一般的です。卸業者が在庫を一定程度抱え、柔軟に対応することで、小売店や飲食店の利便性を高めています。ただし、この体制を維持するには、管理費や人件費などの物流コストが大きな負担となります。

また、業界内では大手や老舗企業が価格決定において強い影響力を持っているのが実情です。このような構造から、新規参入を目指す企業にとっては、独自の強みを持たない限り厳しい環境といえるでしょう。

さらに、大手メーカーが川上から川下までを統合する内製化を加速させています。生産から販売までをワンストップで完結させる動きは、中小卸業者にとって大きな脅威となります。生き残りを図るためには、専門性を高めた差別化戦略が求められます。

サービス・運営形態の多様化

近年の食肉卸業界では、多様なサービス展開が進んでいます。ポーションカットなどの加工機能を強化する企業が増えています。

また、ウェブサイトでの直接販売によって販路を広げる事例も目立ちます。さらに、味付け肉やミールキットといった半調理済み製品を提供し、食の簡便化ニーズにも対応しています。

こうした付加価値の提供は、価格競争から脱却し、利益率を改善するための有効な手段です。単なる納品業者から、顧客の課題を解決するパートナーへと立ち位置を変えつつあるといえるでしょう。

高齢化社会の進展

高齢化社会の進展は、業界の需要構造に変化をもたらしています。健康維持の観点から、タンパク質摂取が推奨されているためです。シニア層の肉類消費が伸び、介護施設向け製品の需要も高まっています。

卸売業者は、やわらかさに配慮した専用商品の開発を強化しています。高タンパクな食材の提案も、積極的に行われています。高齢者の食生活を支える役割は、業界にとって大きな好機といえるでしょう。

コロナ禍の影響

コロナ禍は、食肉の流通構造を見直す契機となりました。外食需要が激減し、家庭向け小売へと舵を切る企業が増えたためです。供給網のリスクを経験したことで、現在は調達ルートの分散が進んでいます。

また、業務のIT化も急速に進展し、より効率的な運営体制が整いました。こうした変化により、突発的な環境変化に対する耐性が高まったといえます。デジタル化を前提とした運営は、現在では業界標準として定着しています。

食肉卸業界のM&A動向とは?

食肉卸業界のM&A動向

食肉卸業界では、経営基盤の強化を目的にM&Aが活発です。同業種間だけでなく、異業種による参入も目立つようになりました。ここでは、それぞれの視点から具体的な動向について解説します。

同業種間でのM&A

同業種間のM&Aは、主に規模の利益を追求する目的で行われます。近隣の競合を譲り受けることで、配送ルートの効率化が図れるためです。また、後継者不在の地方企業が大手グループの傘下に入るケースも増えています。

譲渡側は事業継続の安心を得られ、譲受側は新たな拠点を獲得できます。施設を統合すれば稼働率が向上し、生産性の改善にもつながるでしょう。互いの強みを融合させる動きは、今後も続くと見込まれます。

異業種間でのM&A

異業種とのM&Aでは、サプライチェーンの強化が主な狙いとなります。例えば、飲食店が卸売業者を譲り受けることで、原料の安定確保が可能です。物流企業が加工機能を持つ卸業者を買収する動きも目立ってきました。

こうした川上・川下への進出は、新たな競争環境を生み出しています。メーカーが卸業者を傘下に収め、製品開発のスピードを高める事例もあります。異業種との連携は、革新的なビジネスモデルを構築する近道といえるでしょう。

食肉卸業界のM&Aの流れ

食肉卸業界のM&Aの流れ

食肉卸業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向受領表明
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、M&A助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

食肉卸業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

食肉卸業界のM&Aのメリット

食肉卸業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる
・仕入れコストを削減できる

・ブランド力、販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

それぞれ詳しくみていきましょう。

食肉卸業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

食肉卸業界のM&Aのメリット②:仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる

事業承継において、廃業を選択した場合には、仕入先や取引先との契約を終了させる必要が出てきます。債権債務の整理をしたり、様々な影響が自社および取引先に波及します。

一方で、M&Aを実施する場合、一般的には既存取引先との契約関係は引き継ぐことが多く、廃業による影響を最小限に抑えられます。

食肉卸業界のM&Aのメリット③:仕入れコストを削減できる

M&Aによって大手企業の傘下となれば、今まで自社で仕入れていた商品を親会社にまとめて仕入れてもらえる可能性が高くなります。

一度にまとめて大量に仕入れてもらえる可能性が高いため、大量仕入れの実現によって単価が下がり仕入れコストを削減できるでしょう。

食肉卸業界のM&Aのメリット④:ブランド力、販売力を強化できる

M&Aにより、譲渡企業が持つ産地ブランドの権利を引き継ぐことができます。自社でゼロから構築するには、膨大な時間と労力がかかるためです。魅力的な商品を既存の販路に乗せることで、売上の拡大が期待できます。

また、知名度のある企業グループの一員となれば、営業活動における信頼性も飛躍的に高まります。これにより、新規顧客の開拓もスムーズに進めやすくなるでしょう。ブランドと販売網を活用できる点は、競争を勝ち抜くための強力な武器といえます。

食肉卸業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

M&Aは、後継者不足に悩む経営者にとって有効な出口戦略です。第三者への譲渡により、会社や従業員の雇用を将来にわたって守ることができます。個人保証を解除できるなど、精神的な負担も大きく軽減されるでしょう。大手グループの傘下に入れば、原料価格の変動にも柔軟に対応できるようになります。

また、相続税の問題をクリアし、円滑に事業を次世代へ引き継ぐ手段としても有効です。大手グループに加わることで、老朽化した設備の更新にも対応しやすくなります。安定した経営基盤を得ることで、将来の不安を払拭できる点は大きな魅力といえるでしょう。

食肉卸業界のM&Aの相場

食肉卸業界のM&Aの相場

食肉卸業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

食肉卸業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

食肉卸業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

食肉卸業界のM&Aのポイント

食肉卸業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・準備期間や交渉期間に余裕を持たせる

それぞれ詳しく解説します。

食肉卸業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウ等を含むFAサービスの品質が重要です。

食肉卸業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する

売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

食肉卸業界のM&Aのポイント③:準備期間や交渉期間に余裕を持たせる

M&Aを実施するうえで、買い手探しや条件の交渉などが長期化するケースも少なくありません。そのため、スケジュールには余裕を持たせて早めにM&A会社に相談すべきです。

特に食肉卸業の場合、都心から離れた場所に拠点を構えていることも珍しくないため、デューデリジェンスや視察に時間がかかることが多いでしょう。さらに、工場や倉庫が多い場合も、時間がかかります。

最短でのスケジュールを想定していると遅れが生じる可能性が高まるため、日々の業務と並行してできるように余裕をもってスケジュールを想定しておくべきです。

食肉卸業界のM&A売却事例6選

食肉卸業界のM&A売却事例

ここでは、食肉卸業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。

・まん福ホールディングス×さくらや食堂
・木曽路×建部食肉産業
・地域経済活性化支援機構×ノベルズ

・スターゼン×ニックフーズ
・日本ハム×LJD Holdings
・エスフーズ×内外食品

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

食肉卸業界のM&A売却事例①:まん福ホールディングス×さくらや食堂

まん福ホールディングスは、2021年9月30日付でさくらや食堂を譲り受けました。

まん福ホールディングスは、「食に特化した事業承継プラットフォーム」として、後継者不足に悩まれているオーナーの方々に寄り添い、事業を承継させていただいた後も売却することなく、まん福グループとして相互に成長していくことを掲げる会社です。

さくらや食堂は2003年に創業した食肉加工会社です。取り扱う肉はすべて国産にこだわっており、厳選された和牛、国産豚肉、国産鶏肉、熊本馬刺しなどを店舗とオンラインショップ、ふるさと納税で販売しています。

本件M&Aにより、まん福HDは新商品開発を含めた「うまい」の追求、インターネット販売の強化や新規卸先開拓などの販路拡大、売上向上に対応する工場キャパシティ・生産性向上の3つを軸に発展を目指します。

食肉卸業界のM&A売却事例②:木曽路×建部食肉産業

木曽路は建部食肉産業を2022年10月1日付で買収し、全株式を取得しました。

木曽路は、しゃぶしゃぶ・和食「木曽路」と焼肉「大将軍」「くいどん」「じゃんじゃん亭」を中心に関東104、中部59、関西・九州31の計194店舗(2022年3月末)を展開している飲食企業です。

建部食肉産業は1985年に設立され、売上高は8億7,500万円ほどです。品質管理の徹底を図り、流通大手や学校給食や飲食店向けに製品を販売しています。

本件M&Aによって、木曽路は基幹業態であるしゃぶしゃぶ・和食「木曽路」業態店舗の新規出店に加えて、中部地区での焼肉業態店舗の出店拡大展開を図っています。衛生管理、品質管理が徹底された食肉を安定して確保できるでしょう。

食肉卸業界のM&A売却事例③:地域経済活性化支援機構×ノベルズ

地域経済活性化支援機構(以下、REVIC)は、ノベルズに出資して再生支援が決まり、2024年5月15日付で10億円の優先株式を引き受け、15億円を融資して経営人材などを派遣します。
同社と同社子会社の延与牧場(同)など11社について、みずほ銀行(東京)、日本政策金融公庫(同)、北洋銀行、北海道銀行(札幌市)、農林中央金庫(東京)が機構に対して支援の申込みを行い、機構は12月7日付で支援決定しました。

REVICは地域金融機関その他関係者と連携し、地域における総合的な経済力の向上を通じた地域経済活性化及び地域の信用秩序の基盤強化に尽力している機関です。

ノベルズグループは2006年に設立され、従業員は650人ほどです。北海道十勝を拠点に、道内12牧場のほか山形県にも牧場を有し、乳牛、肉牛合計3万2000頭を飼養しています。

ノベルズの経営状況が悪化していた中で、本件M&Aによって資金余力を十分に確保し、併せて経営管理の高度化を推進することで、現在の厳しい外部環境を乗り越え、日本の畜産業を牽引する企業として、さらなる発展を目指しています。

食肉卸業界のM&A売却事例④:スターゼン×ニックフーズ

スターゼンは、2016年10月3日付でニックフーズを買収し、完全子会社化しました。

買い手のスターゼンは、食肉卸の大手企業です。牛・豚・鶏の集荷から加工、販売までを全国規模で手がける垂直統合型のビジネスモデルを確立しています。

売り手のニックフーズは、東京都葛飾区に本社を置く食肉卸売業者です。東京を中心とした首都圏の中食・外食向け販売に強みを持ち、きめ細やかな加工サービスを提供しています。業務用マーケットにおいて、長年にわたり強固な販売ネットワークを構築してきた企業です。

本件M&Aにより、スターゼンは首都圏での業務用販売シェアを大きく拡大しました。両社の配送網を統合することで、物流の効率化と顧客満足度の向上が図られています。

食肉卸業界のM&A売却事例⑤:日本ハム×LJD Holdings

日本ハムの米国子会社は、2024年12月11日付で米国のLJD Holdingsグループを買収し、その持分を取得しました。

買い手の日本ハムは、国内最大手の食肉メーカーです。世界各地に拠点を持ち、グローバル市場での食肉事業の拡大を経営戦略の柱として掲げています。

売り手のLJD Holdingsグループは、米国アイダホ州などに拠点を置く食肉加工会社です。米国内の大手顧客向けに鶏肉加工品などを製造・販売しています。高い生産技術と北米市場における安定した販路を保有しており、現地での信頼が非常に厚い企業グループです。

今回の買収により、日本ハムは北米での加工食品事業を飛躍的に強化します。現地の生産拠点を取り込むことで、需要の変化に即応できる供給体制の構築が期待されています。

食肉卸業界のM&A売却事例⑥:エスフーズ×内外食品

エスフーズは、2016年8月1日付で木徳神糧から内外食品を買収し、全株式を取得しました。

買い手のエスフーズは、「こてっちゃん」などのブランドを展開する食肉加工・卸売の主要企業です。国内外で食肉の調達から製造までを一貫して行っています。

売り手の内外食品は、千葉県船橋市に本社を置く食肉加工業者です。主に鶏肉を中心とした各種食肉の加工販売を手がけており、大手商社グループのサプライチェーンを支えてきました。都市近郊に加工拠点を持ち、鮮度を保ったまま迅速に配送できる体制を整えているのが特徴です。

本件M&Aによって、エスフーズは関東エリアにおける商品開発力と販売力を補完しました。拠点を有効活用することで、首都圏でのさらなる販売数量の増加が進むと考えられます。

食肉卸業界のM&Aに関するよくある質問

食肉卸業界のM&Aに関するよくある質問

食肉卸業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

食肉卸業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

食肉卸業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

まとめ

まとめ

食肉卸業界では、コスト削減や事業拡大、効率的な物流・在庫管理などを目的としたM&Aが活発に行われています。

M&Aを通じて、従業員の雇用や取引先との関係を維持しながら、仕入れコストを削減することが可能です。

自社の収益力や財務状況をしっかり把握し、十分な準備期間や交渉期間を確保したうえで、M&Aを進めましょう。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。より良い評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

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