売却対価は「全額ペイオフ対象の口座」に預けなさい…事業売却後のオーナー経営者が「やるべきこと」「やってはいけないこと」

2025.01.14

公開日:2025.01.14

2025.01.14

2025.01.14

更新日:2025.01.14

2025.01.14

売却対価は「全額ペイオフ対象の口座」に預けなさい…事業売却後のオーナー経営者が「やるべきこと」「やってはいけないこと」

事業売却後にやるべきこと、やってはいけないこと

これまでのところで、事業売却後にオーナーが直面する環境の変化と、新たに直面しうる課題についてお話ししてきました。ここからは、このような大きな環境変化のなかで事業売却後のオーナーが「やるべきこと」、逆に「やってはいけないこと」についてお話をしておきたいと思います。当たり前に聞こえることもあると思いますが、対応が取られていないケースは案外散見されるため、改めて意識しておいていただくことが大切だという趣旨でご一読いただければ幸いです。

事業売却後にやっておくべきこと

新しい人生を豊かなものにしていくために取り組むべき優先事項は、オーナーによってさまざまです。ここでは、多くのオーナーに共通する「やっておくべきこと」をいくつか紹介したいと思います。

【納税資金の分別管理】

株式譲渡にかかる所得税、住民税の支払いは事後にやってきます。納税資金を意識せずに資産を現金以外の資産に組み替えてしまうと、納税時にまた現金を工面する必要が出てきてしまいます。極端なケースを挙げると、リスクが高い運用に手を出して大きく元本を毀損させてしまうようなことがあれば、納税すらままならない事態が起きかねません。納税に必要な資金は、事前に区別して管理しておくことをおすすめします。

【ペイオフ対策】

現在は、1金融機関・1預金者あたりの元本1,000万円までとその利息等が、ペイオフによる保護の対象となっています。金融機関が破綻した場合、それを超える部分は金融機関の残余財産の状況に応じて支払われることになります。事業売却の対価は大きく、そのほとんどがペイオフでは守られない可能性があるため、銀行預金に多額の現金を預ける場合には対策が必要です。

この点、当座預金や決済用普通預金などの〈無利息・要求払い・決済サービスを提供できること〉の3条件を満たす「決済用預金」は、全額が保護となっています。過去に、多数の銀行に預金を分散して対策を取っていたお客様の実例がありましたが、ペイオフ対策としては決済用預金口座の開設を検討することをおすすめします。

【ふるさと納税の活用】

株式譲渡での所得増加に伴い、ふるさと納税の活用限度枠が大幅に拡大します。ここで、ふるさと納税制度を活用して受領する返礼品は、税務上は一時所得となります。一時所得の特別控除額は最高50万円とされていますので、その年中の他の一時所得も含めた一時所得の収入金額の合計額が50万円を超えると、課税所得が別途発生します。事業売却後のオーナーにおいては、ふるさと納税の活用が高額になることが想定されるため、活用することで得られる返礼品とそれに関連した課税負担については、事前に税務専門家へ相談するとよいでしょう。

【健康診断や人間ドックの受診】

事業で多忙を極めるオーナー経営者のなかには、健康診断を長年おざなりにしてしまっているケースも散見されます。事業売却を実現して引き継ぎもひと段落したそのときは、これから長く豊かな人生を過ごしていくために何よりも大切な身体を見直してみるよい機会です。

早期発見・早期治療を目的として先端技術を導入した予防医療や、万が一異常が見つかった際の専門医療機関ネットワークなど、富裕層向け会員制健康管理サービスも多様化してきています。事業売却を機に、ご自身のニーズにあった医療サービスを探してみてはいかがでしょうか。

【家族との良好な関係性について考える】

より幸せになるための手段であるはずの資産が、場合によっては家族を引き裂くような事態を引き起こしかねません。たとえば、配偶者にとっては財産分与の対象となる大きな現金の存在を知ることで離婚に踏み切る後押しとなるケースもあるでしょうし、子に関しては、親に大金が入ったことを知ると急に仕事を辞めたり、働く意欲を失ったりするケースも考えられます。売却して得られる現金の規模によっては、家族にいつ、どのように、どこまでの情報を伝えるかも慎重に検討すべきことです。実生活においては退職によって1日の時間のバランスが崩れ、家族間でストレスを抱えてしまうことがありますから、事業売却後の新しい生活において、家族とよい関係性を新たに再構築していく必要があることも忘れてはなりません。

なお、家族との関係性に関連して、一族で数十億円以上の資産を継承していくような場合には、長きにわたって一族が一致団結して資産を継承していくことができる仕組みを作ることが、重要な課題となる場合があります。特に、その仕組みにおいては、富を得るきっかけとなった事業の創業者としての想いや、一族における理念や価値観、その資産を一族で承継していく意味合いなどを継承していくことが重要になります。ただ、日本においてはこうした無形資産の価値を継承する重要性が広く認知されてはおらず、支援サービスも広く提供されていないのが実情です。

事業売却後にやってはいけないこと

これまでお話ししてきたように、事業売却後にはオーナーに大きな環境の変化が訪れます。心境も大きく影響を受けることでしょう。事業売却後はともすれば気が大きくなりがちである(にも関わらずその自覚がない)ことや、判断が甘くなりがちな状況であることを認識し、冷静な判断を心がけて新しい人生のスタートを切ることが大切です。

以下では、事業売却後にやってはいけないことについてもお話ししていきたいと思います。

【すぐに運用を始めない】

事業売却の事実を周囲に認知されると、投資案件を紹介されることも増えるでしょう。こうした紹介を受けて是々非々の判断で投資を進めていくケースが見られますが、投資家として十分にリスクを理解したうえで投資できているのか疑問であるものも散見されます。特に、これから本格的に資産運用を始めていく場合は、ご自身が投資初心者であることを自覚し、投資リスクを十分に理解できない可能性があることを心得ておくべきでしょう。

なかには、十分にリスクを理解していないまま投資をして、大きく元本を毀損させてしまうケースも見られます。事業売却で多額の資産を得たはずが、その後運用の失敗で自己破産に至ってしまった事例すらあります。

信用取引や商品先物で高いレバレッジを活用した取引は特にリスクが高く、注意が必要です。

投資の進め方としては是々非々の判断で投資を重ねていくのではなく、資産全体を見て、全体最適の観点から運用のポートフォリオを設計することが大切だと考えています。その観点から、まずは現状分析から始めるとよいでしょう。事業売却後のオーナーが検討すべき資産ポートフォリオの考え方については、次項「売却資金を活用する」で詳細を詳しく解説したいと思います。

【お金を貸さない】

周囲に事業を売却した話をすると、お金を貸してほしいと相談を受けるケースがあります。「昔からの馴染みの人間だから」「返ってこなくてもよいと思える額だから」と貸してしまうと、返済されなかった場合に人間関係が壊れ、金額以上に精神的苦痛を負うことにもなりかねません。

この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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