「リアル+オンライン」「商社+製造開発」「医療+データ」――多様化するM&A戦略

2025.11.20

公開日:2025.11.20

2025.11.20

2025.11.20

更新日:2025.11.20

2025.11.20

「リアル+オンライン」「商社+製造開発」「医療+データ」――多様化するM&A戦略

本記事では、2025年10月29日~12月下旬に公表または実行予定のM&Aの中から、カインズ(埼玉県本庄市)、西華産業(東京都)、クオールホールディングス(東京都)の3件を取り上げます。

これらはいずれも、自社の既存機能を補強・拡張し、「新たな価値提供」や「新領域進出」を狙った成長戦略型M&Aと位置づけられます。

ホームセンター×EC、機械製造、医療データという異なる領域を通じて、M&A市場の広がりを俯瞰します。

カインズが大都を買収(ホームセンター×プロ向けBtoB-EC強化)

対象会社(大都)の概要

大都(大阪府大阪市/DIY用品EC事業) は1937年創業、従業員49人。DIY用品等を扱うBtoC(モール出店)による国内最大級のECサイト「DIY FACTORY」を運営してきたが現在は建設業や製造業等の事業者向けBtoB-ECサイト「トラノテ」も展開しています。

買い手(カインズ)の概要

カインズ(埼玉県本庄市/ホームセンター事業)は250以上の店舗網を有するホームセンターチェーンです。

M&Aの背景と狙い

カインズと大都は2016年に業務提携、2017年に資本業務提携を結んでおり、今回買収を通じて、カインズが持つ250以上の実店舗網+大都が運営するプロ特化ECによる450万点以上のアイテム、そして両社のネットワークをフルに活用し、それぞれの強みであるリアル+デジタル統合モデルを強化します。プロの建設・製造現場のニーズに応え、プロ市場における唯一無二のビ時寝るモデルを確立するのが狙いです。

案件カード

取引スキーム株式取得・完全子会社化
実行予定日2025年12月下旬
取得金額非開示
対象会社情報株式会社大都(大阪府/DIY用品EC・事業者向けBtoB-EC)
買い手企業情報株式会社カインズ(埼玉県/ホームセンター事業)
買い手の狙い実店舗網+プロ向けECを融合し、プロ市場の道具・材料購買インフラを強化

西華産業が旭サナックを買収(塗装機器・設備メーカーを傘下に)

対象会社(旭サナック)の概要

旭サナック(愛知県尾張旭市/塗装機器・塗装設備設計・製造・販売) は2021年11月設立、売上高約141億6,100万円。塗装機械・圧造機械・精密洗浄・コーティング装置の開発・製造・販売・アフターサービスを展開。

買い手(西華)の概要

西華産業(東京都/機械総合商社・産業機器販売)はドイツ・タイに合弁会社を設立し、グローバル展開にも強みがあります。

M&Aの背景と狙い

西華産業は、ドイツおよびタイにおける合弁会社設立等を通じて良好な関係を築いてきたが、旭サナックを完全子会社化することで、長年培ってきた機械総合商社としてのノウハウを活かし、販売面のみならず、事業開発面での協働を深化させることにより両社にとってより一層の事業成長を図ります。

案件カード

取り引きスキーム株式取得・完全子会社化
実行予定日2025年12月1日
取得金額非開示
対象会社情報旭サナック株式会社(愛知県/塗装機器・塗装設備メーカー)
買い手企業情報西華産業株式会社(東京都/機械総合商社)
買い手の狙い販売+開発協働によるグループ事業基盤の強化およびグローバル展開の加速

クオールホールディングスがクリンクラウドを買収(CRO事業のEDC体制を強化)

対象会社(クリンクラウド)の概要

クリンクラウド(東京都/EDC提供・臨床試験データ管理システム事業) は2014年設立。国内大手Fountayn社製EDCの唯一の国内代理店として、データマネジメント業務に特化したCRO事業を展開。

買い手(クオールホールディングス)の概要

クオールホールディングス(東京都/薬局事業、CSO・CRO等医療支援事業) は、医療・健康関連の事業拡大を進めています。

M&Aの背景と狙い

クオールHDの子会社であるアポプラスステーション(APS)を通じて、クリンクラウドをグループ化。CRO事業の拡充を実現し、食品の臨床研究分野にもEDC導入支援を行うなど相乗効果を図ります。
また、医薬品の薬価改定が実施されるなか、薬局事業においても新薬の取り扱いを増やすことが期待できるなど医薬品開発業務の強化も図っていく狙いです。

案件カード

取引スキーム株式取得・全株式取得
実行日2025年10月29日
取得金額非開示
対象会社情報クリンクラウド株式会社(東京都/EDC提供・臨床試験データ管理システム)
買い手企業情報クオールホールディングス株式会社(東京都/薬局・CSO/CRO事業)
買い手の狙いCRO体制の強化と、EDC導入による臨床研究サービスの高度化

【まとめ】

今週の3件は、いずれも既存事業の枠を広げ、自社の強みをさらに強化する方向へ舵を切ったM&Aでした。

カインズはリアル店舗とプロ向けECを統合することで、資材調達の利便性を高める購買インフラの再構築を進めています。

西華産業は、製造機能を取り込むことで、単なる商社ではなく開発・販売が一体となった事業モデルへの深化を図っています。

クオールホールディングスは、臨床データ管理という専門領域を強化することで、医療・ヘルスケア事業の高付加価値化に踏み込みました。

領域は異なりますが、三社ともに「高機能化」「サービスの高度化」「価値提供の精緻化」という共通した方向性を示しており、単なる規模拡大ではなく事業モデルそのものを進化させる成長志向型の意思が鮮明に表れています。


オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。

この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

まずは無料で
ご相談ください

お電話でのお問い合わせ

03-6831-9322

(平日9:00〜18:00