会社分割と事業譲渡の違い!メリットやデメリット、選択のポイントも解説
公開日:2026.03.29
2026.03.29
更新日:2026.03.29
2026.03.29
特定の事業だけを第三者へ引き継ぎたい場合、候補になりやすいのが会社分割と事業譲渡です。どちらも会社全体をそのまま譲る手法ではありません。ただし、引き継がれる権利義務の範囲や必要になる手続き、税務上の扱いは同じではありません。違いを曖昧にしたまま進めると、想定していなかった負担が後から表面化しやすくなります。
本記事では、会社分割と事業譲渡の特徴を確認したうえで、両者の違いを解説します。
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会社分割と事業譲渡とは
会社分割と事業譲渡は、どちらも特定の事業を切り出して承継する場面で使われます。ここでは、まず両者の特徴を確認します。
・会社分割の特徴
・事業譲渡の特徴
最初に基本構造を押さえておくと、両者の違いも理解しやすくなります。
会社分割の特徴
会社分割は、会社が営む事業に関する権利義務を他の会社へ承継させる手法です。会社法上は、分割契約などで定めた事項が承継会社に包括的に承継される仕組みが前提になっています。対象事業を一体で動かしやすい点が、この手法の大きな特徴です。
そのため、契約や従業員を事業と切り離さずに引き継がせたい場合に使いやすいです。ただし、包括承継だからといって何でも自動的に済むわけではありません。労働者保護のための通知や協議が必要なうえ、債権者保護の手続きも必要になります。使いやすさだけで選ぶべき手法ではありません。
事業譲渡の特徴
事業譲渡は、会社の中にある特定事業を切り出して譲る手法です。譲渡の対象は会社そのものではありません。資産や契約などをどこまで移すのか、契約で定めながら進めます。売る範囲を明確にしやすい点がこの手法の特徴です。
一方で、承継したいものを一つずつ確認する必要があります。労働者を移すなら本人の真意による承諾が必要です。資産の譲渡には、消費税が課税される場面もあります。自由に切り分けやすい反面、確認事項が増えやすいのが事業譲渡です。
以下の記事では、余剰現金を譲渡対象外とする方法を解説していますので、ご覧ください。
余剰現金を「譲渡対象外」とするには?売り手オーナー経営者が知るべき“譲渡手法”の工夫
会社分割と事業譲渡の違い
会社分割と事業譲渡は、事業単位で承継できるという点では似ています。ただ、法的な構造は大きく異なります。ここでは、会社分割と事業譲渡の違いを順に見ていきます。
・法務上の違い
・債権や債務の違い
・雇用関係における違い
・許認可の違い
・税務の違い
・会計処理の違い
どちらを選ぶかで譲渡後の負担は大きく変わるため、見た目の分かりやすさだけで決めるべきではありません。
法務上の違い
法務上の違いとして大きいのは、会社分割が組織再編として扱われるのに対し、事業譲渡は個別資産の譲渡として扱われる点です。会社分割では対象事業に関する権利義務を単位に考えますが、事業譲渡では譲る対象を一つずつ定めながら処理します。
会社分割では何を包括的に動かすかが中心になりますが、事業譲渡では個別の資産や契約をどう扱うかが中心になります。似たように見えても法務上の立て付けは同じではありません。
債権や債務の違い
会社分割では、分割契約などで定めた権利義務が包括的に承継されます。これに対して事業譲渡では、どの債権を移すのか、どの債務を残すのかを個別に定める必要があります。
売り手からみると、会社分割は事業を一体で動かしやすい反面、承継範囲の設計が甘いと意図しない負担まで動きかねません。事業譲渡は範囲を細かく決められますが、その分だけ確認の手間が増えます。
雇用関係における違い
会社分割では、労働契約承継法に基づき、対象事業に主として従事する労働者の労働契約が承継される仕組みが設けられています。ただし、自動的に済むわけではなく、分割会社には労働者や労働組合への通知、労働者との協議、異議申出の機会の付与など、労働者保護のための手続きが求められます。
これに対して、事業譲渡では労働契約を移すために、労働者本人の承諾が必要です。会社分割のように事業と一緒に移るわけではありません。人数が多い会社ほどこの違いは大きくなります。
許認可の違い
許認可の扱いは手法だけで一律に決まりません。どの業法に基づく許認可かによって結論が変わるからです。
売り手にとって重要なのは、承継後にすぐ事業を続けられるかどうかです。許認可が前提となる業種では、この確認が遅れると案件全体が止まります。手法を先に決めるのではなく、承継後に許認可がどう扱われるかを先に確かめるべきです。
税務の違い
事業譲渡では、資産の譲渡が時価取引として扱われるのが原則です。含み益がある資産を移す場合は、その譲渡益が課税所得に反映されます。さらに、事業用資産の譲渡は消費税の課税対象になる場面があります。
会社分割では、税制適格要件を満たすかどうかで扱いが変わります。適格に該当すれば、含み損益への課税が直ちに生じない形で処理できる余地があります。どちらが有利かは案件ごとに異なるため、価格だけでなく税引後の結果まで見て選ぶ必要があります。
会計処理の違い
事業譲渡では、譲渡した資産や負債ごとに売却損益を認識する考え方になります。会社分割では、組織再編として資産と負債を引き継ぐため、簿価承継か時価評価かといった論点が関わります。会計上の見え方も一致しません。
この差は決算説明にも影響します。譲渡前後で数字がどう変わるかを説明できないと、買い手との価格交渉でも不利になります。会計処理は後から考えるものではなく、手法選択の段階から見ておくべき論点です。
事業譲渡のメリット
事業譲渡の強みは、会社全体を動かさずに、必要な事業だけを譲れることです。残したい資産や事業を本体に残しやすいため、会社全体の売却に向かない場面でも使いやすい手法です。ここでは、事業譲渡を選ぶことで得られやすいメリットを紹介します。
・後継者問題を解決できる
・不採算事業を整理できる
・創業者利益の確保につなげられる場合がある
事業譲渡は、譲る範囲を売り手側で設計しやすい点に価値があります。
後継者問題を解決できる
後継者がいない会社でも、事業譲渡であれば事業そのものを第三者へ引き継げます。会社全体を渡すのではなく継続させたい事業だけを譲る形が取れるため、廃業以外の選択肢を持ちやすくなります。
売り手としては、会社そのものを手放すことに抵抗があっても、事業単位であれば承継を進めやすい場合があります。事業の継続を優先したいなら事業譲渡は現実的な選択肢になり得ます。
不採算事業を整理できる
事業譲渡では売りたい事業だけを切り出しやすいため、不採算部門や不要資産を本体に残すことができます。会社全体をそのまま売ろうとすると評価を下げる要因になる部分でも、事業単位であれば切り分けて考えやすくなります。
とくに、収益事業と赤字事業が同居している会社では、効果が出やすいです。買い手にとっても譲渡対象が見えやすくなるため、検討しやすい案件になりやすいです。結果として、売却の可能性を高めやすくなります。
創業者利益の確保につなげられる場合がある
事業譲渡では、譲渡対価は通常、会社に入ります。ただし、そこから役員退職金などの設計を通じて、創業者利益の確保につなげられる場合があります。会社全体の売却とは受け取り方が違いますが、事業の価値を現金化できる点は重要です。
もっとも、手元にいくら残るかは税務の設計で変わります。売却代金が入るという事実だけでは足りません。売り手としては、最終的な手残りまで見据えてスキームを考える必要があります。
事業譲渡のデメリット
事業譲渡は自由度が高い手法ですが、ここでは、事業譲渡のデメリットを確認します。
・課税や負債の処理に注意が必要になる
・移転・承継の手続きに時間・手間がかかる
事業譲渡を選ぶ際に、何が必要になるのかを先に理解しておく必要があります。
課税や負債の処理に注意が必要になる
事業譲渡では、資産の譲渡に伴う税務上の処理が問題になります。営業権や設備などに含み益があれば、その分が課税所得に反映されます。課税事業者が事業用資産を譲渡した場合は消費税の課税対象になる場面もあります。
負債の扱いも自動では決まりません。どこまで引き継ぐのかを契約で明確にしておかないと、譲渡後の責任分担が曖昧になりやすいです。売り手としては、譲渡価格だけでなく、税引後の手残りと負担の残り方まで見て判断すべきです。
移転・承継の手続きに時間・手間がかかる
事業譲渡では、承継したいものを個別に確認しながら移していきます。労働契約は本人の承諾が必要なうえ、契約関係についても相手方の同意が必要になることがあります。対象が多い会社ほど確認作業は増えてしまいます。
この負担を軽く見ると、譲渡の実行時期がずれたり、承継漏れが生じたりします。事業譲渡は柔軟に使える手法ですが、準備にかかる時間を十分に見込んで進めることが欠かせません。
会社分割のメリット
会社分割の強みは、対象事業に関する権利義務を一体で承継させやすいことです。事業譲渡では確認が増えやすい場面でも、会社分割であれば承継の枠組みを作りやすいことがあります。ここでは、会社分割を選ぶメリットを見ていきます。
・契約関係を包括的に承継しやすい
・現金対価を前提としない形も取り得る
・労働契約を包括的に承継しやすい
会社分割は、対象事業を一体で動かしたい案件ほど使いやすい手法です。
契約関係を包括的に承継しやすい
会社分割では、分割契約などで定めた権利義務が包括的に承継されます。対象事業を一体で引き継がせたいときには、この仕組みが大きなメリットになります。
もっとも、契約の内容によっては別途確認が必要です。ただし、契約数が多い会社では、個別承継を前提にするより進めやすい場面があります。対象事業のまとまりを重視するなら会社分割の方が適していることがあります。
現金対価を前提としない形も取り得る
会社分割は現金対価を前提にしなくても組める場面があります。対価の設計に柔軟性があるため、買い手が一度に大きな資金を用意しにくい場合でも、承継の形を作れる余地があります。資金面の制約だけで案件が止まりにくい点は、この手法の利点です。
売り手からみると、現金化のしやすさは別途確認が必要です。ただし、資金面の事情が理由で承継の選択肢が狭まっている場合には、会社分割の方が進めやすいことがあります。現金回収を優先するのか、承継自体を優先するのかで評価は変わります。
労働契約を包括的に承継しやすい
会社分割では、対象事業に主として従事している労働者の労働契約が包括的に承継される仕組みがあります。事業譲渡のように一人ずつ承諾を集めなくてよい点は大きな違いです。
ただし、法的に承継できることと、現場が安心して受け入れることは別です。売り手としては、従業員への説明まで丁寧に行う必要があります。
会社分割のデメリット
会社分割は事業を一体で動かしやすい手法でが注意点もあります。ここでは、会社分割のデメリットを見ていきます。
・株式の現金化が難しい場合もある
・一定の場合に株主総会の特別決議が必要になる
会社分割を使うなら、承継のしやすさと引き換えに何が残るのかまで見たうえで判断する必要があります。
株式の現金化が難しい場合もある
会社分割では、対価が株式で交付される形になる場合があります。その場合、売り手にとっては、すぐに現金を回収できるとは限りません。事業を切り出して承継できても、創業者利益の回収という意味では希望とずれるおそれがあります。
売り手としては、何を優先したいのかを先に固めることが重要です。事業承継を優先するなら受け入れやすい場合もありますが、現金化を重視するなら別の手法の方が合うことがあります。
一定の場合に株主総会の特別決議が必要になる
会社分割では、一定の場合に株主総会の特別決議が必要になります。特別決議は、原則として議決権を行使できる株主の過半数が出席し、その出席株主の議決権の3分の2以上の賛成で成立します。そのため、反対株主が一定割合いる会社では進めにくくなります。
経営者が前向きでも、それだけで実行できるわけではありません。株主が分散している会社では、事前の合意形成が大きな壁になります。手法を決めてから説得に入るのでは遅いことが多いため、株主構成と同意の見通しは早い段階で確認すべきです。
事業譲渡と会社分割を選択するポイント
事業譲渡と会社分割は、どちらが常に優れているという関係ではありません。ここでは、どのような場合にどちらを選びやすいのかを確認します。
・事業譲渡を選ぶべきケース
・会社分割を選ぶべきケース
手法選択では、仕組みの違いだけを見るのではなく、自社が優先したい結果から逆算して考えることが重要です。
事業譲渡を選ぶべきケース
事業譲渡を選びやすいのは、譲る範囲を細かく決めたい場合です。不要資産を残したいときや、不採算部門を本体に残したまま収益事業だけを譲りたいときに向いています。承継対象を契約で明確に定めたい場合にも使いやすいです。
一方で、個別承継の負担は増えやすくなります。包括承継のしやすさをそれほど重視しないのであれば、事業譲渡の方が目的に合うことがあります。
会社分割を選ぶべきケース
会社分割を選びやすいのは、対象事業に関する契約や人員を一体で承継させたい場合です。事業譲渡では個別に確認する項目が多すぎる会社でも、会社分割であれば承継の枠組みを作りやすいことがあります。
ただし、組織再編としての法務・税務の確認は欠かせません。承継のしやすさを優先する場面では、会社分割を選びやすいといえます。。
まとめ
会社分割と事業譲渡は、どちらも特定事業を承継させるための手法ですが、仕組みも結果も同じではありません。事業譲渡は切り分けの自由度が高い反面、個別承継に伴う確認事項が増えます。会社分割は対象事業を一体で動かしやすい反面、組織再編としての手続きや社内調整が必要になります。
特に売り手の立場で重要なのは以下の点です。
・どの事業を譲り、どの事業を残したいのか
・税引後にいくら残るのか
・許認可の確認をどこまで進められているのか
・株主や関係者の合意に無理がないのか
手法選びを誤ると、価格以前の段階で案件が進みにくくなります。会社分割と事業譲渡のどちらが自社に合うか迷う場合は、承継したい範囲と譲渡後に残したいものを先に固めたうえで、専門家と一緒に進め方を考えることが重要です。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
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