印刷業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

2025.04.30

公開日:2025.04.30

2025.04.30

2026.02.19

更新日:2026.02.19

2026.02.19

印刷業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

昨今、印刷業界では、デジタル化の影響を受けて市場規模が縮小傾向にあります。

印刷業界では事業の多角化や安定化を目的として、M&Aが有効な解決手段として注目されています。

では、具体的に印刷業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の印刷業界のM&A事情を解説します。さらに、M&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。

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印刷業界とは?業界の現状を解説

印刷業界の動向

印刷業界は、紙媒体への印刷にとどまらず、情報の複製や加工を通じて価値を伝える役割を担っています。
ここでは、業界の定義と動向を整理し、現状を分かりやすく解説します。

印刷業界の定義

印刷業界とは、文字や画像などの情報を、紙やプラスチック、金属などの媒体に定着させ、大量に複製する産業を指します。新聞や書籍を扱う出版印刷、チラシやカタログなどの商業印刷、食品や商品のパッケージを担う包装印刷など、その領域は多岐にわたります。

近年は、単なる紙への印刷にとどまらず、デジタルデータと連携した情報発信や、ICタグの埋め込みといった高付加価値なサービスも提供しています。

このように、情報を形にして社会に流通させるインフラとしての役割が、業界の大きな特徴といえるでしょう。

また、顧客のニーズに合わせて、企画からデザイン、印刷、配送までを一貫して請け負う形態が一般的です。近年では、デジタル技術の進化に伴い、Web制作やマーケティング支援など、情報コミュニケーション全般を支援する産業へと進化を続けています。

印刷業界の動向

印刷業界は、デジタル化の進展や社会情勢の変化により、大きな転換期を迎えている産業です。ペーパーレス化の影響で、従来の出版物や事務用伝票の需要は減少傾向にある一方、EC市場の拡大に伴い、梱包資材やラベルなどの包装印刷分野は堅調な推移を見せています。

また、印刷通販の普及により、小ロット・低価格での発注が容易になり、ユーザーの利便性は大きく向上しました。さらに、環境意識の高まりを背景に、植物性インキの採用やリサイクル可能な資材の活用など、サステナブルな取り組みが企業評価に直結しています。

加えて、労働力不足への対応として、AIによる自動検品や生産工程のDX化が急速に進んでいます。こうした技術革新を柔軟に取り入れ、製造業からサービス業へと事業領域を広げることが、今後の成長において極めて重要といえるでしょう。

印刷業界の市場規模

日本印刷連合協会の「印刷産業 Annually Report」によると、印刷産業の令和4年の製品出荷額は、5兆462億3,300万円となっています。また、事業所数は13,520件です。

本業界の市場規模は、デジタル化の影響を受けて長期的な減少傾向となっているものの、近年は回復傾向にあります。

業種別にみると、出版印刷における生産金額は減少が顕著となっています。商業印刷は出版物のなかで最大規模を維持しているものの、ネット広告の普及やマーケティングのデジタル化に伴い、2015年以降は生産金額が減少している状態です。

特に2020年以降は、コロナ禍による広告費抑制の影響によって減少してから伸び悩んでおり、その背景はデジタル化の定着範囲が拡大した可能性が考えられています。

事務用印刷の生産額も、長期的な減少傾向にあります。2010年代半ばにはNISAやマイナンバーなどの制度開始によって需要が一時は底上げされたものの、情報のWeb化やペーパーレス化による長期的な需要減少の影響が大きいでしょう。

また、ほかの印刷業に比べ事務的な作業・用途が多く、企業側の経費削減や業務デジタル化の影響を受けやすい側面もあります。

事業所数は何度か増加しているものの、長期的にみると減少傾向にあります。平成15年と令和4年を比較すると、2万件ほど事業所数が減少している状態です。

サービス・運営形態の多様化

印刷業界では、従来の受注生産型モデルに加え、印刷通販(ネット印刷)の普及により、運営形態が多様化しています。オンラインで24時間発注できる仕組みは、小規模なニーズを掘り起こし、業界の利便性を大きく高めました。

また、単に印刷物を製造するだけでなく、発送代行や在庫管理までを一括で請け負うサービスも広がっています。マーケティング支援として、顧客データの分析に基づいたパーソナライズ印刷を提供する企業も増えています。

多様化するニーズに柔軟に応えるため、企業は製造業からソリューション提供型へと姿を変えています。こうした変化に対応できる体制の構築が、競争優位性を築く鍵といえるでしょう。

高齢化社会の進展

日本の高齢化が進むにつれて、印刷業界では熟練の技術を持つ職人の退職が相次いでいます。ベテランのノウハウをいかに次世代へ引き継ぐかが、多くの企業にとって喫緊の課題となっています。

一方で、シニア層を対象としたユニバーサルデザイン(UD)書体の採用や、読みやすさに配慮した印刷物の需要は拡大しています。高齢者向けの医薬品パッケージや健康食品のラベルなど、視認性を重視した付加価値の高い製品が求められるようになりました。

企業は、人手不足を補うための自動化設備の導入と、高齢者ニーズに即した商品開発を並行して進める必要があります。高齢化という社会構造の変化は、技術革新と新市場創出の両面で、業界に影響を与えているといえるでしょう。

コロナ禍の影響

コロナ禍では、イベントの中止や外出自粛が相次ぎ、チラシやパンフレットなどの商業印刷の需要が一時的に激減しました。さらに、対面営業が制限されたことで、カタログや会社案内といった販促物の作成を見送る動きも広がりました。

一方で、在宅需要の増加により、ECサイト向けの梱包資材や宅配用の段ボールなどの需要は大きく伸長しました。非対面でのコミュニケーションが主流となった結果、ウェブサイトと印刷物を連動させるデジタル化の動きも一気に加速しました。

現在は以前の活気が戻りつつありますが、デジタルシフトの潮流が止まることはありません。オンラインとオフラインを融合させた新たな情報伝達の形を模索する企業が、今後の主流になると考えられます。

印刷業界のM&A動向とは?

印刷業界のM&A動向

印刷業界では、市場の成熟やデジタル化を背景に、生き残りをかけたM&Aが活発に行われています。
ここでは、同業種間と異業種間で、それぞれどのような目的の統合が進んでいるのかを詳しく解説します。

同業種間でのM&A

印刷業界における同業種間のM&Aは、主にスケールメリットの追求と生産体制の効率化を目的として行われています。市場全体の需要が縮小する中で、企業が単独で設備投資を続けることは、大きな負担となります。

そこで、近隣の同業者を譲り受けることで、稼働率の低い設備を集約し、コスト削減を図る動きが目立ちます。また、特定の地域に強みを持つ企業同士が統合することで、配送コストの低減や営業網の拡大を実現するケースも多いといえるでしょう。

このように、経営基盤を安定させるための「守り」の統合が、業界再編における大きな流れとなっています。

さらに、特殊な印刷技術や加工ノウハウを持つ中小企業が、大手グループの傘下に入る事例も増えています。これにより、譲渡側は後継者問題を解決でき、譲受側はサービスラインナップを拡充できるため、双方にとってメリットがあるといえるでしょう。

異業種間でのM&A

異業種間でのM&Aは、印刷技術を核とした事業領域の拡大や、デジタル分野への進出を目的として行われることが一般的です。近年では、印刷会社がIT企業やマーケティング会社を買収し、顧客の販促支援を一括で担う「ソリューション型企業」への転換を図る動きが加速しています。

単にチラシを印刷するだけでなく、ウェブサイトの制作やSNS運用までを提案できる体制を整えることで、収益源の多角化を狙っています。こうした動きは、既存の印刷ビジネスとの相乗効果が極めて高いといえるでしょう。

また、逆に広告代理店や物流企業が、自社サービスを内製化するために、印刷会社を譲り受けるケースも見られます。

このように、異業種との連携は、単なる製造業の枠を超えた新たなビジネスモデルの構築に寄与しています。激変する市場環境において、従来の印刷領域にとらわれない柔軟なM&A戦略が、企業の持続的な成長を支える鍵となるでしょう。

印刷業界のM&Aの流れ

印刷業界のM&Aの流れ

印刷業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

印刷業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

印刷業界のM&Aのメリット

印刷業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる
・個人保証を解除できる

・ブランド力、販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

それぞれ詳しくみていきましょう。

印刷業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

印刷業界のM&Aのメリット②:仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる

廃業を選択した場合には、仕入先や取引先との契約を終了させる必要があります。債権債務の整理をし、さまざまな影響が自社および取引先に波及します。

一方で、M&Aを実施する場合、一般的には既存取引先との契約関係は引き継ぐことが多く、廃業による影響を最小限に抑えられます。

印刷業界のM&Aのメリット③:個人保証を解除できる

中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。

M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。

印刷業界のM&Aのメリット④:ブランド力、販売力を強化できる

M&Aを通じて自社の技術を、より広い市場へ届け、信頼性を高められる点は大きな魅力です。単独では難しかった大手企業との取引も、買い手企業が持つ知名度や信用力を活用することで、実現しやすくなります。

例えば、広域に営業拠点を持つ企業の傘下に入れば、自社が誇る特殊印刷や加工技術を、全国の顧客へ提案できます。さらに、買い手企業のマーケティング部門と連携することで、自社の強みを再定義し、ブランド価値を再構築することも可能でしょう。

これにより、既存の受注単価の維持や、新規案件の獲得を有利に進められます。印刷業界において価格競争が激化する中で、ブランド力と販売力の強化は、安定した収益確保に直結する重要な要素といえます。

印刷業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

印刷業界では、設備の老朽化や後継者不在が深刻な課題となっており、M&Aはその有効な解決策の一つです。第三者に事業を託すことで、経営者個人が抱える重い責任や、資金繰りに関するリスクを大幅に軽減できます。

特に中小規模の印刷会社では、高額な印刷機の導入に伴う多額の借入に、経営者保証が付いているケースが少なくありません。M&Aを活用すれば、これらの保証を解除できる可能性があるとともに、創業者利益として売却代金を得て、引退後の生活を安定させることも可能です。

また、従業員の雇用や、長年培ってきた印刷技術を途絶えさせることなく、次世代へ確実に引き継げます。将来的な不安を解消し、会社をより強固な経営基盤のもとで存続させられる点は、大きな安心材料といえるでしょう。

印刷業界のM&Aの相場

印刷業界のM&Aの相場

印刷業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

印刷業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

印刷業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

印刷業界のM&Aのポイント

印刷業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・自社との相性を考えて買い手を探す

それぞれ詳しく解説します。

印刷業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

印刷業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する

売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

印刷業界のM&Aのポイント③:自社との相性を考えて買い手を探す

M&Aを行う際は、M&Aによって何を得たいのかなど、取引を実施する目的を明確化させておく必要があります。
その目的を達成するには、自社との相性が良く、シナジー効果が見込まれる企業を探さなければなりません。

市場規模を拡大したい場合は、業界内で多くのシェアを誇る大手企業と、デジタル化を進めたい場合はデジタル技術に強みを持っている企業と取引ができれば効果的です。

印刷業界のM&A売却事例6選

印刷業界のM&A売却事例

ここでは、印刷業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。

・日本創発グループ×シルキー・アクト
・丸信ホールディングス×山陰プリントケース
・ポラリス・キャピタル・ホールディングス×宣伝会議・マスメディアン

・TOPPAN×アロワーズ
・TOPPANホールディングス×図書印刷
・日本創発グループ×新和製作所

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

印刷業界のM&A売却事例①:日本創発グループ×シルキー・アクト

日本創発グループは、シルキー・アクトを2025年4月2日付で買収し、阿部力代表取締役ら2人から2億円で全株式を取得しました。
日本創発グループは、印刷事業、セールスプロモーション開発、プロダクツ開発を行っている企業です。

シルキー・アクトは1993年に設立され、売上高は15億3,900万円です。
受注から製版・印刷・加工、袋入までを自社工場で一貫生産する体制で、量産品の製造から完全オーダーメイド製品の制作まで幅広く対応できます。また、大手広告代理店などから直接受注を行っており、再生PPの積極活用や不要製品の回収・リサイクルによる環境配慮への取り組みも展開しています。

本件M&Aによって、日本創発グループは印刷関連のグループ会社とのシナジー創出を図るとともに、付加価値の高い商品・サービスの提供へ繋げます。

印刷業界のM&A売却事例②:丸信ホールディングス×山陰プリントケース

丸信ホールディングスは、山陰プリントケースを買収し、子会社化したことを2024年12月1日に発表しました。
丸信ホールディングスは、食品包装資材販売、シール・ラベル印刷・加工などを行っている企業です。

山陰プリントケースは1983年に設立された企業です。シール製品を主力にデザイン制作から印刷までを行っています。

本件M&Aによって、丸信ホールディングスは互いの強みを生かしながら、価値の高い製品やソリューションの提供を目指しています。

印刷業界のM&A売却事例③:ポラリス・キャピタル・ホールディングス×宣伝会議・マスメディアン

ポラリス・キャピタル・グループはポラリス第五号投資事業有限責任組合などを通じて、2023年3月22日付で宣伝会議、マスメディアンを買収し、株式を取得しました。
ポラリス・キャピタル・グループは、企業の事業再編・再構築を支援するプライベートエクイティファンド運営会社です。

宣伝会議は1954年に設立された企業で、月刊「宣伝会議」をはじめとした宣伝・販促・広告・クリエイティブ領域の月刊誌や書籍の出版などを手掛けています。

マスメディアンは2001年に設立された企業で、マーケティング・クリエイティブ領域に特化した人材紹介・派遣事業を展開しています。

本件M&Aによって、ポラリス・キャピタル・ホールディングスは培ってきた企業価値向上支援、DX・ESG施策推進支援などのノウハウを活用し、宣伝会議およびマスメディアンの成長実現のサポートを図っています。

印刷業界のM&A売却事例④:TOPPAN×アロワーズ

TOPPANホールディングス傘下のTOPPAN株式会社は、2026年1月20日付で株式会社アロワーズを買収し、完全子会社化しました。 買い手のTOPPANは、情報コミュニケーション事業や生活・産業資材事業を手掛ける大手印刷企業です。

売り手のアロワーズは、オフィスや店舗の設計および内装工事を専門に行う企業です。同社は空間デザインに加えてネットワーク構築までを一括で手掛け、顧客のニーズに即した利便性の高いオフィス環境の提案に強みを持っています。

本件M&Aによって、TOPPANはアロワーズの持つ設計施工のノウハウを取り込みます。これにより、空間デザインとデジタル技術を融合させた、次世代型のオフィスソリューション提供を加速させる見込みです。

印刷業界のM&A売却事例⑤:TOPPANホールディングス×図書印刷

TOPPANホールディングスは、2025年3月24日付で図書印刷を株式交換により完全子会社化しました。 買い手のTOPPANホールディングスは、印刷業界の最大手として多様な情報伝達やパッケージ製造などを手掛け、近年はデジタル変革に注力しています。

売り手の図書印刷は1911年に創業された歴史ある企業で、出版印刷を基盤に教科書や一般書籍の印刷、教育関連サービスなどを展開しています。同社は高度な製本技術や効率的な物流網を保有しており、学校教育現場向けのデジタル支援事業にも力を注いできました。

本件M&Aによって、TOPPANグループは出版・教育分野でのリソースを集約し、市場縮小への対応とデジタル教育新領域での成長を加速させる見込みです。

印刷業界のM&A売却事例⑥:日本創発グループ×新和製作所

日本創発グループは、2025年12月15日付で株式会社新和製作所を買収し、子会社化しました。 買い手の日本創発グループは、印刷事業を中核としながら、セールスプロモーションやプロダクト開発など、幅広いクリエイティブ事業を展開している企業グループです。

売り手の新和製作所は1955年に設立された、紙製ディスプレイや紙什器の企画・製造を手掛ける専門メーカーです。同社は大型の什器から複雑な構造のPOPまで、設計から生産までを一貫して行える体制に強みを持っています。

長年培った高度な加工技術と、大手メーカーや広告代理店との直接取引による豊富な実績は、業界内でも高く評価されているといえるでしょう。

本件M&Aによって、日本創発グループは販促物の製造ラインナップをさらに拡充します。グループ各社が持つデザイン力と新和製作所の立体造形技術を融合させることで、より訴求力の高い店頭プロモーションの提案を目指します。

印刷業界のM&Aに関するよくある質問

印刷業界のM&Aに関するよくある質問

印刷業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

印刷業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

印刷業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

印刷業界のM&Aに関するよくある質問③:印刷設備は資産として評価されますか?

自社で使用している印刷設備は、M&Aにおいて資産として評価されます。

ただし、その評価は設備の年式や稼働状況などによって大きく異なります。事前に状態を確認し、できるだけ良い評価をもらえる工夫をしておきましょう。

まとめ

まとめ

印刷業界では、デジタル化の影響を受けて市場規模が縮小している中、M&Aが活発的に行われています。
印刷業界でM&Aを実施すれば、個人保証を解除でき、後継者問題の解決にもつながるでしょう。

M&Aを実施する際には、適切な助言会社の選定や自社の収益力・財務状況を把握し、自社との相性を考えながら取引を進めることが重要です。これらを意識して、理想のM&Aを実現させましょう。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

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この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

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