医薬品製造業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

2025.03.30

公開日:2025.03.30

2025.03.30

2026.01.01

更新日:2026.01.01

2026.01.01

医薬品製造業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

近年、医薬品製造業界ではM&A取引が活発に行われています。創薬コストの高騰や中小企業の経営難を背景に、有力な解決手段として注目を集めています。本記事では、最新の市場動向や売却のメリット、具体的な事例を解説します。

自社の出口戦略を検討中の経営者様は、ぜひお役立てください。さらに、医薬品製造業界でのM&Aのメリットや事例も紹介しています。M&Aを検討中の方は、ぜひ参考にしてください。

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医薬品製造業界とは?業界の現状を解説

医薬品製造業界の動向

医薬品製造業界は、人々の生命や健康を支える重要な役割を担っています。現在は、政府による薬価抑制策の影響を受け、厳しい経営環境が続いています。多くの企業が生き残りをかけた変革を迫られているのが実情です。ここからは、最新の市場動向を詳しく見ていきましょう。

医薬品製造業界の定義

医薬品製造業界は、主に医薬品の研究開発や製造を担う業種を指します。新薬を創出する先発メーカーや、特許が切れた医薬品を扱う後発医薬品メーカーが含まれます。

近年では、製造工程を専門に受託するCDMO(医薬品開発製造受託機構)の存在感が高まっています。本業界は、薬機法(医薬品医療機器等法)による厳しい規制下にあります。そのため、他業種と比較しても参入障壁が格段に高い点が特徴です。

生命に関わる製品を扱うため、参入障壁は非常に高く設定されています。許可を受けた施設において、厳格な手順を遵守した生産を行うことが基本です。こうした枠組みの中で、各社は独自の技術力を磨き続けています。

医薬品製造業界の動向

現在は、「分業化」と「デジタル化」が急速に進んでいます。以前は、一社ですべてを完結させる垂直統合型が一般的でしたが、開発費の高騰を背景に、外部へ委託する水平分業が主流となりつつあります。

また、AIを活用して新薬開発の成功率を高める取り組みも始まっています。

膨大なデータを解析することで、開発の成功率を高めようとする動きです。従来の慣習にとらわれず、変化に対応する姿勢が求められます。激動の時代を勝ち抜くには、新しい技術や仕組みを柔軟に取り入れていくことが重要でしょう。

医薬品製造業界の市場規模

厚生労働省の「薬事工業生産動態統計」によると、2023年(令和5年)の医療用医薬品の国内出荷額は11兆2,569億円(速報値ベース)に達しました。

2021年の約10.5兆円から増加に転じています。先発医薬品が約8割を占める構造に大きな変化はないものの、高額なバイオ医薬品や新薬の登場が、出荷額全体を押し上げています。

同統計の推移を見ると、2016年までは漸増傾向にあり、その後は毎年の薬価改定や後発医薬品の普及により、横ばいから微減で推移していました(2019年の調査手法変更による断絶を含みます)。

2020年には、新型コロナウイルスの影響で受診控えが生じ、出荷額は減少しました。しかし、2021年以降は回復基調に転じ、2023年にはコロナ前を大きく上回る過去最高の出荷額を記録しています。これは、一部の感染症治療薬の需要増に加え、高単価な新薬の市場投入が主な要因と考えられます。

また、医療費抑制に向けた政府の施策により、後発医薬品(ジェネリック)の普及はさらに進んでいます。2023年9月時点の数量シェアは80.2%に達し、政府目標である「80%以上」を維持しています。

一方、金額ベース(薬剤点数ベース)では、依然として2割程度にとどまっており、高付加価値な先発医薬品と、低価格な後発医薬品という市場構造が、より鮮明になっています。

サービス・運営形態の多様化

医薬品製造における運営形態は、近年、非常に多様化が進んでいます。最近では、自社工場を持たずに製造を外部へ委託する企業が増えています。固定費を抑え、研究開発に資金を集中させることが可能です。

また、特定の疾患領域に特化したスペシャリティファーマ(Specialty Pharma)も台頭しています。独自の強みを尖らせることで、大手企業との差別化を図る戦略です。画一的なビジネスモデルから、自社の特性を活かす形へと変化しています。

中堅以下の企業であっても、特定分野においてトップシェアを狙える環境が整いつつあります。柔軟な組織運営を行うことが、変化の激しい市場で生き残る鍵となります。

高齢化社会の進展

日本の高齢化社会は、医薬品需要を長期的に下支えする大きな要因です。特に、生活習慣病や認知症に関連する薬剤の重要性は、一段と高まっています。ただし、社会保障費の増大により、政府による価格抑制の圧力は強まる一方です。

需要は増加しているものの、単価は下がるという難しい市場構造に直面しています。企業には、需要の増加を確実に収益へ結びつけるための経営努力が求められます。例えば、在宅医療に適した製剤の開発など、新たなニーズへの対応が挙げられます。

高齢者の利便性を考慮した製品は、今後さらに重宝されるでしょう。市場の変化を先読みし、必要とされる製品をいち早く届ける姿勢が重要です。

コロナ禍の影響

コロナ禍は、医薬品のサプライチェーンに対する認識を大きく変えました。海外からの原料供給が滞り、国内生産の重要性が改めて認識されるようになりました。政府も、ワクチンの国内開発や生産体制の整備を後押ししています。

また、対面での営業活動が制限されたことを受け、情報のデジタル化が進展しました。Web会議やデジタル資料の活用により、業務効率は大幅に向上しています。この経験は、従来は保守的とされてきた業界全体のDXを加速させる大きな契機となりました。

従来の働き方に戻るのではなく、新しい手法を定着させる動きが広がっています。危機を乗り越えたことで、より強固な供給体制が構築されつつあります。

医薬品製造業界のM&A動向とは?

医薬品製造業界のM&A動向

医薬品製造業界では、生き残りをかけた戦略的なM&Aが活発化しています。特に、中堅メーカーが大手企業の傘下に入る業界再編の動きが目立ち始めています。膨大な研究開発費の確保や、製造コストの低減を目的とした動きです。
ここからは、同業種および異業種における具体的なM&Aの傾向を解説します。

同業種間でのM&A

同業種間でのM&Aは、主にシェア拡大や生産効率の向上を目的として行われます。似た製品ラインナップを持つ企業が統合すれば、間接コストを抑えることが可能です。また、後発医薬品メーカー同士が統合し、供給能力を強化する事例も多く見られます。

これにより、重複する部門を整理し、経営の合理化を図れます。生産拠点を集約することで、スケールメリットを最大限に享受できるでしょう。厳しい市場環境の中で、競争力を維持・強化するための極めて有効な手段です。

互いの技術や販路を共有すれば、単独では難しかった事業展開も可能になります。相乗効果を明確に描き、共通の目標へ向かうことが成功のポイントとなります。

異業種間でのM&A

異業種から医薬品製造業界へ参入する動きも、近年、活発に見られます。例えば、化学メーカーが素材技術を応用する目的で製薬会社を買収するケースです。あるいは、IT企業がデータ解析技術を創薬に活用する例も増えています。

全く異なる視点や技術を取り入れることで、革新的な製品が生まれる可能性があります。新規事業としてヘルスケア分野を強化したい企業の意欲は非常に高いといえるでしょう。これにより、業界全体の活性化や技術革新が促進されることが期待されます。

売り手企業にとっても、新たな資本や技術に触れられる絶好の機会です。異文化の融合は組織に新しい風を吹き込み、成長を加速させます。柔軟な発想でパートナーを探すことが、新たな価値創造につながるはずです。

医薬品製造業界と類似している業界として、クリニック業界のM&Aについても下記記事で紹介しています。
クリニック業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

医薬品製造業界のM&Aの流れ

医薬品製造業界のM&Aの流れ

医薬品製造業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

医薬品製造業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

医薬品製造業界のM&Aのメリット

医薬品製造業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・豊富な資金によって研究開発を狙える
・個人保証を解除できる

・ブランド力、販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

それぞれ詳しくみていきましょう。

医薬品製造業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

医薬品製造業界のM&Aのメリット②:豊富な資金によって研究開発を狙える

医薬品製造業界では、先述の通り創薬コストが高く、中小企業ではなかなか研究開発がしづらい状況となっています。

しかしM&Aによって大手企業の傘下となれば、大手企業の資金や設備などを活用した研究開発の恩恵を受けられる可能性があり、今まで以上に売り上げが見込まれるようになるかもしれません。

現状資金不足で研究に注力できない場合、M&Aによって大手企業の傘下となることも検討すべきでしょう。

医薬品製造業界のM&Aのメリット③:個人保証を解除できる

中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていません。

M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。

医薬品製造業界のM&Aのメリット④:ブランド力、販売力を強化できる

M&Aによって大手企業のブランド名を活用できることは、大きな利点といえます。知名度の高い企業の傘下に入れば、自社製品の信頼性は格段に高まります。これにより、これまで接点を持てなかった医療機関へのアプローチも可能になります。ブランドの信用力は、新規顧客を開拓する際の強力な武器となるでしょう。

さらに、買い手が持つ広範な販売網を活用することで、全国へ販路を拡大できます。営業力のある組織と連携すれば、短期間での売上増加が期待できます。

自社単独では時間を要する市場浸透も、M&Aであればスピーディーに実現可能です。優れた製品をより多くの患者に届けるための、有効な手段といえます。

医薬品製造業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

M&Aを活用すれば、後継者問題を早期に解決し、事業を継続させることが可能です。親族や社員に適任者がいない場合でも、信頼できる企業へ経営のバトンを託せます。

また、オーナー経営者が個人的に抱える債務保証を解除できる点も魅力です。経営リスクを買い手企業へ移転させることで、将来の不安を払拭できます。創業者利益を確保しながら、従業員の雇用も守れる安心な選択肢といえるでしょう。

長年築き上げてきた事業を、より強固な経営基盤のもとで存続させましょう。ハッピーリタイアを実現するための手段として、検討する価値は十分にあります。残された社員や取引先にとっても、経営の安定は大きな安心感につながるはずです。

医薬品製造業界のM&Aの相場

医薬品製造業界のM&Aの相場

医薬品製造業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

医薬品製造業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

医薬品製造業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

医薬品製造業界のM&Aのポイント

医薬品製造業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・シナジー効果が得られる企業とM&Aを実施する

それぞれ詳しく解説します。

医薬品製造業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

医薬品製造業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する

よい条件で売却するためには、自社の実質的な収益力と財務状況を把握することが重要です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

医薬品製造業界のM&Aのポイント③:シナジー効果が得られる企業とM&Aを実施する

医薬品製造業界では、医薬品ごとに対応している病気や症状に無数のジャンルがあります。すべての症状や病気に対応することは難しいため、それぞれの製薬会社には、得意としている分野が存在します。

自社が得意としている分野と買い手候補企業の得意分野がマッチしているかを確認し、シナジー効果が得られるか検討するようにしましょう。

医薬品製造業界のM&A売却事例3選

医薬品製造業界のM&A売却事例

ここでは、医薬品製造業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の3つの事例を紹介します。

・NISSHA×滋賀県製薬
・ワキ製薬×和平製薬
・ナチュラルホールディングス×日新製薬

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

医薬品製造業界のM&A売却事例①:NISSHA×滋賀県製薬

NISSHAは2025年1月8日付で滋賀県製薬を買収し、株式を取得しました。

NISSHAは成長事業としてメディカル分野に注力しており、米国を中心に医療機器などの受託生産を手掛けています。また、産業資材・ディバイス・メディカルテクノロジーの3事業およびその他の事業も展開しています。

滋賀県製薬は1943年に設立され、売上高は48億7,700万円です。風邪薬や解熱鎮痛剤などの一般用医薬品で、開発製造受託(CDMO)のビジネスモデルで市場地位を築き、顧客基盤を有しています。固形剤、液剤など多様な剤形への対応力に加え、さまざまな包装にも対応できる生産技術と品質管理能力を保有している企業です。

本件M&Aによって、NISSHAは医薬品CDMO事業へ参画し、滋賀県製薬の製造能力強化を図っています。また、フィルム状製剤の拡販や新たな事業機会の創出に向けたマーケティング活動を展開し、医薬品事業の規模拡大を目指しています。

医薬品製造業界のM&A売却事例②:ワキ製薬×和平製薬

ワキ製薬は2022年10月5日に和平製薬のグループ会社化、株式の取得を公表しました。岡井千佳子社長は退任し、岡井勇二氏が代表取締役に就きました。

ワキ製薬は医薬品製造・販売をはじめとし、健康補助食品や栄養機能食品の製造販売、機能性表示食品の製造販売、機能性成分の研究、HP作成、動画作成、受託セミナー、システム開発販売、アプリ開発販売を展開しています。

和平製薬は1945年に創業され、家庭配置薬の製造メーカーとして医薬品を提供しています。ユーザーの疾病予防と健康の創出を実現し、全ての方たちが健康と喜びに満ちた人生を送るための礎となる企業を目指しています。 

本件M&Aによって、販売先の廃業や薬剤師の高齢化など、多くの要因が重なり、製薬メーカーとして経営を継続していくことが困難になった和平製薬は、ワキ製薬のノウハウやサポートによって、配置薬業界を支える製薬メーカーを目指しています。

医薬品製造業界のM&A売却事例③:ナチュラルホールディングス×日新製薬

ナチュラルホールディングスは2022年5月13日付で日新製薬を買収し、全株式を取得しました。

ナチュラルホールディングスは、「ドラッグストアモリ」「ザグザグ」「くすりのベル」のドラッグストア3社を傘下に持ち、約500店舗を展開しています。すでに日新製薬とは関係があり、グループ内のドラッグストアの店舗を通じて日新製薬の商品を提供しています。

日新製薬は1957年に設立され、医薬品、医薬部外品、食品の販売並びに情報提供を行っている企業です。

本件M&Aによって、ナチュラルホールディングスは日新製薬の経営の安定を図り、従来商品を継続して販売することを目指します。

医薬品製造業界のM&Aに関するよくある質問

医薬品製造業界のM&Aに関するよくある質問

医薬品製造業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

医薬品製造業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

医薬品製造業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

医薬品製造業界のM&Aに関するよくある質問③:多くの買い手候補と接触すべきですか?

もちろん、ある程度の数の買い手候補と接触したほうが、自社にとって好条件を提示してくれる買い手候補と出会える確率は高まります。

しかし、買い手候補が多すぎると情報開示のクオリティが下がってしまい、良い条件を提示してくれる可能性がある企業から相手にされなくなったり、買い手叩きに遭う可能性が高まることに注意しなければなりません。

まとめ

まとめ

医薬品製造業界では業界再編が行われており、特に大手企業によるM&Aが多くみられています。

医薬品製造業界でM&Aを実施すれば、豊富な資金や設備を活用して研究開発ができ、後継者問題の解決にもつながるでしょう。

M&Aを実施する際には、適切な助言会社の選定や自社の収益力・財務状況を把握し、シナジー効果が見込まれる企業と取引をすべきです。これらを意識して、理想のM&Aを実現させましょう。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

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