M&Aにデメリットはある?売り手目線で注意すべきポイントや対策方法を紹介
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- M&Aの基礎
公開日:2026.04.28
2026.04.28
更新日:2026.04.28
2026.04.28
M&Aは、会社の成長戦略や事業承継における有力な選択肢として注目されていますが、一方で「思ったより安く売却することになった」「従業員が離れてしまった」といった形で後悔につながるケースもあります。デメリットを理解しないまま進めると、準備不足のまま交渉が進み、売り手にとって不利な条件を受け入れてしまいやすくなります。
特に中小企業のM&Aでは、売り手と買い手の間に情報格差があり、仲介会社や買い手の提案を十分に検証せず受け入れると、本来得られたはずの条件を逃すことがあります。デメリットを事前に把握し、回避策を準備しておくことが、後悔のないM&Aにつながります。
本記事では、売り手の立場から見たM&Aのデメリットと回避策に加え、買い手側の注意点、手法別の比較、仲介会社の見極め方まで体系的に整理して解説します。
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M&Aの基礎知識
M&Aのデメリットを理解する前に、まずはM&Aの基本的な考え方と主な手法を整理します。手法によってリスクや手続きが変わるため、自社に合う形を選ぶためにも基礎知識が欠かせません。
M&Aとは
M&Aとは、Mergers and Acquisitions(合併・買収)の略で、会社や事業を他社に承継する取引全般を指します。中小企業では、会社全体を譲渡するケースや、特定の事業だけを切り出して譲渡するケースなど、状況に応じて複数の手法が使い分けられています。
売り手が選ぶ主な手法は以下の通りです。
- 株式譲渡:会社の株式を譲渡して経営権を移す手法。中小企業M&Aで中心的に用いられる
- 事業譲渡:会社の中の特定事業や資産を切り出して譲渡する手法
- 会社分割:事業の一部を別会社に承継させる組織再編手法
- 株式交換・株式移転:親子会社関係を作る組織再編手法
手法選択は、譲渡後の税務、契約承継、手続き負担に直結します。詳しい比較は以下の記事も参考になります。
M&Aのスキームを紹介!メリット・デメリットや最適なスキームを選ぶポイントを解説
近年M&Aが増えている背景
近年、日本企業全体のM&Aは増加傾向にあり、中小企業の事業承継M&Aへの関心も高まっています。レコフデータの集計によると、2024年の日本企業のM&A件数は4,700件となり、前年比17.1%増で過去最多を更新しました。特にオーナーや経営者が株式を売却する「事業承継M&A」は前年比31.4%増の920件となり、こちらも過去最多を記録しています。
背景には、経営者の高齢化と後継者不在の問題があります。中小企業庁の試算では、2025年までに中小企業経営者のうち約245万人が70歳以上となり、そのうち約半数が後継者未定の状態とされています。親族内承継が難しくなる中、廃業ではなく第三者に事業を引き継ぐ手段としてM&Aが選ばれるケースが増えています。
また、国や公的支援機関による事業承継・M&Aの支援策の整備も後押しになっています。事業承継・引継ぎ支援センターによる相談支援や、事業承継・M&A補助金、登録M&A支援機関の整備など、売り手・買い手双方が動きやすい環境が整いつつあります。小規模案件でもM&Aが検討される環境は広がっており、M&Aは出口戦略の一つとして現実的な選択肢となりつつあります。
※参考:2024年のM&A回顧(2024年1-12月の日本企業のM&A動向)
【売り手側】M&Aの12のデメリットと回避策
売り手がM&Aで直面し得る主なデメリットを整理して解説します。それぞれに回避策はありますが、実際にどこまで軽減できるかは案件ごとに異なります。
- 希望条件で売却できないリスク
- 買い手候補が見つかりにくいリスク
- 成約までに想定以上の時間がかかるリスク
- 従業員のモチベーション低下・離職リスク
- 主要取引先との関係悪化リスク
- 情報漏洩リスク
- 個人保証・連帯保証が外れないリスク
- 譲渡後も一定期間の関与を求められるリスク
- 競業避止義務によって次の事業に制約が生じるリスク
- 売却益への課税負担が発生するリスク
- 手数料が高額になるリスク
- M&A支援会社の選定を誤るリスク
希望条件で売却できないリスク
経営者が考える会社の価値と、市場(買い手)が評価する価値にはズレが生じやすく、希望価格を下回る条件でしか売却できないケースがあります。
回避策としては、複数の専門家による企業価値評価を実施して相場感を把握すること、複数の買い手候補から提案を受けて競争環境を作ること、売却前に企業価値を高める施策(収益改善、不要資産の整理など)を実行することが有効です。客観的な評価を踏まえて交渉に臨むことが重要です。
買い手候補が見つかりにくいリスク
業種・規模・立地などの条件によっては、買い手候補が見つからないケースがあります。特に地方の小規模事業者や、需要縮小が進む業界の企業では、買い手探索に時間がかかることがあります。
回避策として、業界ネットワークを持つFA(ファイナンシャル・アドバイザー)などの専門家を活用することが有効です。
成約までに想定以上の時間がかかるリスク
M&Aは一般的に、検討開始から成約まで半年から1年以上かかります。経営者の体調や事業環境の変化、買い手の意向変更などで、想定以上に時間がかかるケースもあります。
時間がかかる理由は、買い手探索、条件交渉、デューデリジェンス、最終契約といった各プロセスで調整が必要になるためです。回避策としては、資料の事前整備、決算書の改善、秘密保持体制の構築など、プロセスをスムーズに進めるための準備を早めに進めることが挙げられます。
従業員のモチベーション低下・離職リスク
M&Aの発表後、従業員が将来に不安を感じてモチベーションが低下したり、キーパーソンが離職するリスクがあります。特に中小企業では、特定の従業員が事業の中核を担っているケースが多く、離職は事業価値に直結します。
回避策として、従業員への説明タイミングを慎重に設計すること、買い手との交渉で雇用条件の維持を明確化すること、PMI計画(経営統合計画)を事前に策定することが重要です。キーパーソンへの説明時期や処遇設計を工夫することで、流出リスクを抑えやすくなります。
主要取引先との関係悪化リスク
経営権の変更を知った取引先が、警戒して取引条件を見直したり、契約を打ち切るケースがあります。長年の信頼関係に基づいて取引していた相手ほど、新しい経営者への不安を感じやすい傾向があります。
回避策は、主要取引先への早期かつ丁寧な説明です。売り手経営者と買い手が一緒に挨拶回りを行うことで、信頼を維持しやすくなります。また、買い手を選ぶ段階で、取引先への配慮がある企業を選定することも重要です。
情報漏洩リスク
M&Aの検討中に情報が漏洩すると、従業員の動揺、取引先の離反、金融機関の対応変化など、さまざまな悪影響が発生します。情報漏洩は売却条件の悪化や、最悪の場合は交渉決裂につながります。
回避策として、秘密保持契約の締結と情報管理の徹底、社内関与者を最小限にすること、段階的に情報開示することが基本です。関与者には秘密保持義務を明確に伝え、情報管理の徹底を共有する体制を作ることが重要です。
個人保証・連帯保証が外れないリスク
中小企業の経営者は、会社の借入金に対して個人保証を提供しているケースが多く、M&A後に個人保証が外れないと、経営者個人のリスクが残り続けます。買い手が債務を引き継がない場合や、金融機関が保証解除に応じない場合に発生します。
回避策は、経営者保証ガイドラインの活用、個人保証解除を交渉条件に明記すること、基本合意の段階から保証解除の論点を入れておくことです。金融機関との事前調整も重要で、早い段階から相談を始めることが望ましい対応です。
譲渡後も一定期間の関与を求められるリスク
M&A後、売り手経営者が一定期間会社に残ることを求められるケースがあります。これを「ロックアップ」と呼びます。事業の引き継ぎや組織の安定化のために設けられることが多いですが、売り手にとっては自由な引退を遅らせる要因になります。
回避策は、関与期間と条件を事前に交渉して明確にしておくことです。役割範囲、給与水準、拘束時間などを明確にし、売り手の希望する引退時期に合わせた設計を求めることが重要です。
競業避止義務によって次の事業に制約が生じるリスク
M&A契約では、売り手が同業他社での活動を制限される「競業避止義務」が設定されることが一般的です。契約上の競業避止義務では期間は通常2〜5年とされることが多く、地域や業種の範囲も定められます。次のキャリアでも同じ業界に関わりたい場合は制約となります。
回避策は、競業避止義務の範囲を契約時に交渉することです。地域・業種・期間を限定する、特定の活動を除外対象にするなど、過度な制限にならないよう調整することが重要です。
売却益への課税負担が発生するリスク
株式譲渡で得た利益には、個人株主の場合は譲渡所得税・住民税(合計20.315%)、法人株主の場合は法人税等(実効税率約30%)が課されます。譲渡価額が大きいほど税負担も大きくなり、想定より手取りが少なくなることがあります。
回避策として、役員退職金の活用、譲渡スキームの工夫(会社分割と株式譲渡の組み合わせなど)、早期の税理士相談が挙げられます。スキーム選択の段階から税務を組み込むことで、数百万〜数千万円単位で手取りが変わるケースもあります。
税金の詳細は以下の記事で解説しています。
「税引後の売却対価」はいくら?個人・法人の「株式の譲渡所得」にかかる税金
手数料が高額になるリスク
M&A支援会社の手数料は、レーマン方式で計算されることが一般的です。譲渡価額に応じて段階的に料率が変わる仕組みですが、案件によっては最低手数料が設定されており、小規模案件では手数料負担が相対的に重くなります。
回避策は、複数の支援会社の手数料体系を比較することです。着手金・中間金の有無、最低手数料、成功報酬の料率構造を確認し、サービス内容と照らし合わせて判断することが重要です。
手数料体系の詳細は以下の記事で解説しています。
M&Aにおける手数料とは?売り手が知るべきポイント徹底ガイド
M&A支援会社の選定を誤るリスク
M&A支援会社の選定を誤ると、買い叩かれたり、不利な条件を飲まされたりするリスクがあります。特に仲介会社は、中立の立場で両方を支援する構造上、売り手の利益だけを追求する立場には立ちにくいためです。
回避策は、売り手専属のFA(ファイナンシャル・アドバイザー)を検討することや、複数社からセカンドオピニオンを得ること、契約形態や利益相反の構造を理解したうえで選定することです。本記事後半の「仲介会社の見極め方」のセクションで詳しく解説します。
【買い手側】M&Aの8つのデメリットと回避策
売り手側ほど語られにくいものの、買い手側にもM&A特有のリスクがあります。売り手として買い手の目線を理解しておくことで、交渉時に買い手の懸念事項を先回りして整理しやすくなり、条件交渉も進めやすくなります。
- 簿外債務・偶発債務が買収後に表面化するリスク
- のれんの減損リスク
- 買収金額が過大になるリスク
- 想定したシナジー効果が生まれないリスク
- PMI(統合プロセス)が失敗するリスク
- キーパーソンが流出するリスク
- 企業文化の違いが統合の障害になるリスク
- 許認可の扱いを誤り、事業継続に支障が出るリスク
簿外債務・偶発債務が買収後に表面化するリスク
株式譲渡の場合、会社に内在する簿外債務や偶発債務(将来発生する可能性がある債務)もそのまま引き継ぐことになります。決算書に現れない債務が買収後に発覚すると、買い手にとって想定外の負担となります。
回避策は、財務・法務デューデリジェンス(DD)を徹底すること、表明保証や補償に関する条項を契約で整理することです。売り手としては、事前に自社の債務や潜在リスクを整理しておくことで、DD時の信頼を得やすくなります。
のれんの減損リスク
買収価格が対象会社の純資産を上回る場合、その差額がのれんとして計上されることがあります。買収後の業績が想定を下回ると、のれんの減損損失が発生し、買い手の決算に大きな影響を与えます。
回避策は、適正な企業価値評価を行うこと、買収後のモニタリング体制を整えることです。売り手としては、買い手が納得できる事業計画を示すことで、減損リスクの懸念を軽減できます。
買収金額が過大になるリスク
買い手間の競争や交渉過程によって、買収金額が買い手にとって割高になるケースがあります。いわゆる高値掴みのリスクです。
回避策は、複数のバリュエーション手法(インカム・マーケット・コストアプローチ)による検証と、撤退基準の明確化です。売り手としては、価格の根拠を明確に説明できる資料を準備しておくことで、買い手の納得感を高めやすくなります。
想定したシナジー効果が生まれないリスク
買収時に想定していたシナジー効果が実現しないケースがあります。市場環境の変化、文化の違い、統合プロセスの停滞など、理由はさまざまです。
回避策は、シナジー仮説の事前検証、PMI計画の事前策定、段階的な統合プロセスです。売り手としては、買い手にとっての戦略的価値や補完関係を具体的に示すことで、シナジーの説明力を高められます。
PMI(統合プロセス)が失敗するリスク
M&A後の経営統合(PMI:Post Merger Integration)が失敗すると、想定した効果が得られないだけでなく、既存事業にも悪影響が及びます。組織の混乱、キーパーソンの離職、取引先の離反などが連鎖的に発生します。
回避策は、PMI専任チームの編成、統合計画の事前策定、段階的な統合プロセスです。売り手としては、買い手のPMI方針を交渉時に確認し、必要に応じて従業員対応や引継ぎ方針を条件面で整理しておくことが重要です。
キーパーソンが流出するリスク
M&A後にキーパーソンが離職すると、事業の継続性が損なわれます。特に中小企業では、特定の従業員が顧客関係や技術ノウハウを抱えているケースが多く、流出の影響は大きくなります。
回避策は、キーパーソンへの事前面談、インセンティブ設計、買収後の役割明確化です。売り手としては、重要な従業員の情報を買い手と共有し、継続雇用の条件を交渉条件に入れることが重要です。
企業文化の違いが統合の障害になるリスク
買い手と売り手の企業文化が大きく異なる場合、統合後に摩擦が発生します。働き方、意思決定のスピード、コミュニケーションのスタイルなど、表面に出にくい違いが累積するとトラブルにつながります。
回避策は、企業文化の事前把握と、統合後のコミュニケーション設計です。売り手としては、自社の文化的特徴を買い手に正確に伝えることが、ミスマッチ防止につながります。
許認可の扱いを誤り、事業継続に支障が出るリスク
業種によっては、許認可が会社に紐づいており、M&Aの手法によっては引き継げないケースがあります。許認可は業種や手法によって扱いが異なるため、事前に個別確認が必要です。
回避策は、採用するスキームと許認可の関係を事前に確認し、必要な承認・再取得・届出の要否を整理しておくことです。売り手としては、自社の許認可の引き継ぎ要件を把握し、買い手と早期に共有することが重要です。
M&A手法別のメリット・デメリット
M&Aの手法によって、売り手・買い手が負うリスクや得られるメリットが変わります。自社の状況に合った手法を選ぶために、それぞれの特徴を理解しておくことが重要です。
- 株式譲渡
- 事業譲渡
- 会社分割
- 株式交換・株式移転
株式譲渡
株式譲渡は、売り手株主が保有する株式を買い手に譲渡する手法です。法人格はそのまま残るため、会社に属する権利義務関係を維持したまま経営権を移転しやすい手法です。中小企業M&Aで最も多く使われる手法です。
メリットは手続きがシンプルで、事業の連続性を保ちやすいことです。デメリットは、簿外債務や偶発債務を含む会社全体のリスクを買い手が引き受ける構造になりやすい点です。売り手個人が対価を受け取る形になるため、創業者利益を得やすい手法でもあります。
事業譲渡
事業譲渡は、会社の中の特定事業や資産・契約を切り出して譲渡する手法です。譲渡対象を個別に指定できるため、不要事業や不要資産を会社側に残せる柔軟性があります。
メリットは譲渡範囲を柔軟に設計できること、買い手にとって簿外債務を引き継ぐリスクが低いことです。デメリットは、契約や雇用関係の承継に個別対応が必要になりやすく、実務負担が重いことです。消費税の課税対象となる資産が含まれる点にも注意が必要です。
会社分割
会社分割は、会社の事業に関する権利義務を別会社に承継させる組織再編手法です。新設分割(新しい会社を作って承継)と吸収分割(既存の会社に承継)の2種類があります。事業譲渡と異なり、権利義務を包括的に承継できる点が特徴です。
メリットは、包括承継を前提とするため、事業譲渡に比べて個別移転の実務負担を抑えやすいことです。適格分割の要件を満たせば、課税を繰り延べられる税務上のメリットもあります。デメリットは、会社法・税務の両面で設計が複雑になりやすく、専門家の関与が前提になりやすい点です。
株式交換・株式移転
株式交換・株式移転は、完全親子会社関係を構築するための組織再編手法です。株式交換は既存の会社を完全親会社にする手法、株式移転は新設の会社を完全親会社にする手法です。グループ再編や持株会社化の手段として使われます。
メリットは、株式を対価とした経営統合が可能で、グループ再編や持株会社化に活用しやすい点です。デメリットは、対価として受け取る株式の価値変動リスクがあることに加え、法務・税務の設計が複雑になりやすい点です。
M&Aが売り手企業の関係者に与える影響
M&Aは経営者個人だけでなく、従業員・取引先・家族など、さまざまな関係者に影響を与えます。関係者への配慮が不十分だと、M&A後にトラブルが発生し、結果として事業価値が損なわれる可能性があります。
- 従業員への影響
- 取引先・顧客への影響
- 家族への影響
従業員への影響
従業員にとって、M&Aは雇用条件や職場環境の変更につながり得ます。買い手の経営方針によっては、給与体系、評価制度、組織構造が変わることがあり、不安を感じる従業員は少なくありません。
経営者として必要なのは、情報共有のタイミング設計、買い手との雇用条件交渉、キーパーソンへの個別対応です。従業員の不安を軽減することで、離職を防ぎやすくなります。
取引先・顧客への影響
取引先や顧客は、経営権の変更によって取引条件、担当体制、品質水準が変わることを懸念します。長年の信頼関係に基づいて取引していた相手ほど、慎重に対応する必要があります。
説明タイミングは、基本合意後から最終契約までの間が一般的です。買い手と一緒に挨拶回りを行うことで、信頼を維持しやすくなります。主要取引先には早めに伝え、不安を解消する時間を確保することが重要です。
家族への影響
経営者の家族は、連帯保証人になっているケースや、会社の株式を保有しているケースがあります。M&Aの進め方によっては、家族の資産や責任に影響が及ぶため、事前の共有と合意が欠かせません。
特に配偶者が株主や連帯保証人になっている場合は、早い段階から相談し、M&Aの方針について合意を得ておくことが重要です。家族への事前共有が遅れると、交渉の途中で方針変更や手続き停滞が生じるリスクがあります。
M&Aのデメリットを最小化する6つのポイント
M&Aのデメリットは、事前の準備によって一定程度軽減できます。以下の6つのポイントを押さえることで、後悔の少ないM&Aにつながりやすくなります。
- M&Aの目的を明確にする
- 企業価値評価を理解する
- デューデリジェンスに備える
- 秘密保持を徹底する
- 社内外への説明タイミングを設計する
- 売却後のキャリアを準備する
M&Aの目的を明確にする
M&Aで何を実現したいのかを明確にすることが出発点です。売却益の最大化、従業員の雇用維持、事業の継続、後継者問題の解決など、目的によって最適な買い手や条件が変わります。
目的が曖昧なまま進めると、交渉の途中で判断基準がぶれやすく、結果として納得感の低い成約になりやすくなります。複数の目的がある場合は、優先順位を決めておくことが重要です。
企業価値評価を理解する
自社の企業価値を客観的に把握することは、交渉の前提を固めるうえで欠かせません。代表的な評価手法には、インカムアプローチ(将来収益から算出)、マーケットアプローチ(類似企業比較)、コストアプローチ(純資産ベース)があります。
複数の手法で評価することで、自社の価値の幅を把握できます。買い手との交渉時に、評価の根拠を明確に説明できる準備をしておくことが重要です。
デューデリジェンスに備える
買い手側は、M&A実行前に財務・法務・ビジネス・人事などの詳細調査(デューデリジェンス)を行います。DDで不明点や問題点が多数発見されると、買収価格の減額や条件見直しにつながります。
事前に自社の資料を整備し、想定される質問への回答を準備しておくことで、DDをスムーズに進められます。決算書、契約書、許認可関連書類、人事資料などを体系的に整理しておくことが重要です。
秘密保持を徹底する
M&Aの検討中に情報が漏洩すると、従業員や取引先に動揺が広がり、事業価値が損なわれます。秘密保持は、M&Aを成功させるうえで欠かせない要素です。
NDA(秘密保持契約)の締結、社内関与者の限定、段階的な情報開示が基本です。関与者には秘密保持義務を明確に伝え、情報管理の徹底を共有する体制を作ることが重要です。
社内外への説明タイミングを設計する
従業員、取引先、金融機関への説明タイミングは、M&Aの成否を左右する重要な要素です。早すぎると情報漏洩のリスクが高まり、遅すぎると関係者の不信感につながります。
一般的には、基本合意後から最終契約締結後の間で、関係者ごとに段階的に説明します。タイミングごとの伝え方や優先順位を事前に設計しておくことで、混乱を最小化できます。
売却後のキャリアを準備する
M&A後に売り手経営者がどのようなキャリアを歩むかを、事前に準備しておくことが重要です。ロックアップ期間中の役割、引退後の生活設計、次の事業への準備など、売却後の姿を明確にしておくことで、交渉条件も固めやすくなります。
売却益の使途や、競業避止義務の範囲も、次のキャリア設計に応じて調整すべき論点です。キャリア全体の計画の中でM&Aを位置づけることが重要です。
売り手が失敗しないM&A支援会社の見極め方
M&A支援会社の選定は、売り手の利益に直結する重要な判断です。選定を誤ると、売却条件が不利になったり、交渉の主導権を失ったりするリスクがあります。売り手の立場から見た支援会社の見極め方を解説します。
- 手数料体系で見極める
- 契約形態で見極める
- 仲介形態で見極める
- 利益相反リスクで見極める
手数料体系で見極める
M&A支援会社の手数料は、レーマン方式が採用されることが多いものの、報酬体系は会社ごとに異なります。譲渡価額に応じて段階的に料率が変わる仕組みですが、会社によって料率や最低手数料の設定が異なります。
着手金・中間報酬・成功報酬の有無と金額、最低手数料の水準、何を基準額として成功報酬を計算するのかを確認することが重要です。同じ「レーマン方式」でも、条件次第でトータルの手数料が大きく変わります。
契約形態で見極める
M&A支援会社との契約には、専任か非専任かに加えて、契約期間や解除条件も確認が必要です。専任契約は1社にのみ依頼する形態で、担当会社の関与が深まりやすい一方、他社比較がしにくくなる面があります。非専任契約は複数社に相談できる柔軟性がありますが、案件への関与の深さは会社によって差が出ます。
売り手にとっては、契約期間、解除条件、他社への乗り換え可能性などを事前に確認することが重要です。長期の専任契約や解除しにくい契約条件には注意が必要です。
サービス形態で見極める
M&A支援サービスには、主に仲介サービスとFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスの2種類があります。両者は構造が大きく異なり、売り手にとっての意味合いも変わります。
仲介サービスは売り手・買い手の双方と契約し、中立の立場でマッチングを行います。FAサービスは売り手または買い手のいずれか一方と契約し、依頼者の利益を優先して助言・交渉支援を行います。売り手の利益追求を重視するなら、FAの起用を検討する価値があります。
両者の詳細な違いは以下の記事で解説しています。
M&A仲介とFAの違いとは?向いているケースや役割、失敗しない選び方も解説
利益相反リスクで見極める
仲介サービスは、売り手と買い手の双方から手数料を受け取る構造上、利益相反リスクが存在します。売り手の希望価格を引き下げる方向に交渉が働く可能性や、買い手に有利な条件で合意に至る可能性があります。
売り手としては、その支援会社がどこまで自社の利益を優先して動ける構造かを見極める必要があります。過去の売り手支援実績、担当者の経験、説明の透明性、セカンドオピニオンの可否などを確認することが重要です。売り手専属のFAを起用することで、利益相反リスクを回避する選択肢もあります。
仲介サービスで売り手の利益追求が難しい構造については、以下の記事で詳しく解説しています。
中小企業オーナーが知っておくべき、「M&A仲介サービスでは売り手の利益追求が難しい」根本理由
M&A以外の選択肢との比較
M&Aは有力な選択肢の一つですが、唯一の選択肢ではありません。他の選択肢と比較することで、自社にとって最適な出口戦略を整理しやすくなります。
- 廃業・会社清算とM&Aの比較
- 事業承継とM&Aの比較
- 休業とM&Aの比較
- IPOとM&Aの比較
廃業・会社清算とM&Aの比較
廃業は、会社を自主的に終了させる選択肢の一つです。M&Aと比較すると、従業員の雇用や取引先との関係を維持しにくく、個人保証の整理も別途課題になりやすい点に違いがあります。
手元に残る金額の面でも、M&Aでは事業の継続価値が価格に反映される余地があるため、廃業より有利になる場合があります。事業に承継価値がある会社であれば、廃業を決める前に、まずはM&Aを検討する価値があります。
事業承継とM&Aの比較
事業承継は、親族内承継や役員・従業員承継によって事業を引き継ぐ方法です。後継者がいる場合の選択肢で、長期的な準備期間をかけて進めるのが一般的です。
M&Aと比較すると、事業承継では創業者利益を受け取りにくい一方、経営理念や企業文化を引き継ぎやすい特徴があります。後継者候補の有無、承継までの準備期間、税制優遇の活用可否などを踏まえて比較検討することが重要です。
休業とM&Aの比較
休業は、事業活動を一時的に停止する選択肢です。将来的な事業再開の可能性を残せる点が特徴で、M&Aや廃業と比べて可逆性があります。
ただし、休業中も法人としての申告対応や一定の固定的負担は残ります。長期の休業は実質的な廃業と変わらない状態になりやすいため、最終的にどうするかを計画的に決める必要があります。あくまで一時的な選択肢として位置づけるのが現実的です。
IPOとM&Aの比較
IPO(株式上場)は、株式市場への上場を通じて資金調達や企業成長を目指す選択肢です。M&Aと比較すると、会社の独立性を保ちながら成長できる一方、上場準備に数年かかり、費用負担も大きくなります。
IPOは高い成長を目指す企業に向いた選択肢で、後継者問題の解決や経営者の引退を主目的とする場合は、M&Aの方が選択肢になりやすいです。自社の目的とフェーズに応じて、選択肢を比較することが重要です。
会社売却の全体像については、以下の記事も参考になります。
まとめ
M&Aにはデメリットもありますが、事前準備と適切な専門家の関与によって軽減できるものも少なくありません。特に以下の点を意識することで、後悔のないM&Aを実現しやすくなります。
- 売り手側には、希望条件未達・情報漏洩・個人保証・譲渡後の残留負担など複数のリスクがあり、事前対応によって軽減できるものもある
- 買い手側のリスクを理解することで、交渉時に相手の懸念を先回りして整理しやすくなる
- M&A手法(株式譲渡・事業譲渡・会社分割・株式交換)によって発生する法務・税務・実務上の負担が変わるため、目的に合った選択が重要
- 支援会社の選定は売り手の利益に直結するため、手数料体系・契約条件・支援形態・利益相反リスクを見極める必要がある
- 廃業・事業承継・休業・IPOなど、M&A以外の選択肢と比較して、自社に最適な出口戦略を判断する
M&Aは経営者にとって一度きりの取引であることが多いため、情報格差をできるだけ整理したうえで臨むことが重要です。売り手の立場で条件交渉を重視するなら、FAの起用も含めて選択肢を検討することが望ましい対応です。早い段階から専門家と相談し、準備を進めていくことで、デメリットを抑えたM&Aにつながりやすくなります。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
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