合資会社のM&Aの進め方は?事業譲渡の方法や注意点も解説
-
#
- M&Aの進め方
公開日:2026.04.28
2026.04.28
更新日:2026.04.28
2026.04.28
合資会社は、株式会社とは異なる法的構造を持つ会社形態です。無限責任社員と有限責任社員で構成されるため、M&Aや事業承継を進める際には、株式会社とは異なる法務上の論点が生じます。持分の譲渡に他の社員の同意が必要になる場合があるなど、手続き面でも注意が必要です。
ただし、合資会社だからといってM&Aができないわけではありません。事業譲渡や持分譲渡など、会社の状態に合った方法を選べば、売却や承継は可能です。重要なのは、合資会社特有の制約を事前に把握したうえで進めることです。
本記事では、合資会社の基本的な特徴に加え、株式会社との違い、売却のメリット・デメリット、事業承継の方法、売却時の注意点、事業承継の進め方まで解説します。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFA(ファイナンシャル・アドバイザー)サービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
合資会社とは
合資会社とは、無限責任社員と有限責任社員の双方で構成される会社形態です。会社法上、持分会社の一つに位置付けられています。無限責任社員は会社の債務に対して個人財産を含めた全額の責任を負い、有限責任社員は出資額の範囲内で責任を負います。
合資会社の設立には、無限責任社員と有限責任社員がそれぞれ最低1名ずつ必要です。株式会社と比べて設立手続きが比較的簡易で、定款の自由度も高い一方、社員間の信頼関係が経営の前提になります。この構造が、M&Aや事業承継において特有の論点につながります。
合資会社と株式会社の違い
合資会社と株式会社の大きな違いの一つは、所有と経営の分離の度合いです。株式会社では株式を通じて所有権を移転でき、経営は取締役に委ねられます。一方、合資会社では社員が直接経営に関与し、持分の譲渡には原則として他の社員の同意が必要になります。
この違いは、M&Aの進め方にも影響します。株式会社であれば株式譲渡によって経営権を移転できますが、合資会社では持分譲渡に承諾手続が必要になるため、手続きが複雑になりやすくなります。また、合資会社には株式の概念がないため、株式譲渡という手法は使えません。事業譲渡や組織変更を組み合わせて進める場面が多くなります。
合資会社もM&Aは可能
合資会社であっても、M&Aは実行できます。株式譲渡が使えないため、株式会社と比べて選択肢は限られますが、事業譲渡や持分譲渡、あるいは組織変更(株式会社への変更)を経たうえでのM&Aなど、いくつかの方法があります。
実務では、事業譲渡が有力な選択肢として検討されることが多くあります。事業譲渡であれば、合資会社の法的構造とは切り分けて、事業そのものを買い手に承継できます。持分の譲渡が難しい場合でも、事業の価値を買い手に引き継ぐことは可能です。どの方法が最適かは、会社の状態や社員間の関係性によって異なるため、専門家と一緒に設計する必要があります。
合資会社を売却するメリット
合資会社を売却することで、廃業では得られない複数のメリットがあります。主なメリットは以下の通りです。
- 後継者問題を解決できる
- 事業の成長に繋がる
- 経営資源や従業員が守られる
いずれも、廃業を選んだ場合には実現しにくいメリットです。
後継者問題を解決できる
合資会社では、無限責任社員が経営の中核を担うケースが多く、後継者が見つからなければ事業の継続が難しくなります。M&Aによって外部の第三者に事業を引き継ぐことで、後継者不在の問題を解決できます。
特に合資会社は社員間の信頼関係で成り立っている場合が多いため、後継者選びには慎重さが求められます。M&Aであれば、事業の運営能力を持つ買い手を選べるため、事業の安定的な継続が期待しやすくなります。
事業の成長に繋がる
買い手が十分な資金力や販路を持っていれば、売却後に事業が成長する可能性があります。合資会社は資金調達の手段が限られるため、自力で事業を拡大するのが難しい場合があります。M&Aによって資金力のある買い手のもとに入ることで、これまで実現できなかった投資や事業展開が可能になる場合があります。
売り手にとっては、事業を手放すことへの抵抗感がある場合でも、会社の将来を考えたときに、より強い基盤を持つ相手に託す方が合理的な判断になることがあります。
経営資源や従業員が守られる
廃業を選んだ場合、従業員は全員職を失い、取引先との関係も途絶えます。M&Aであれば、事業をそのまま引き継ぐ買い手に渡すことで、従業員の雇用や取引先との関係を維持できる可能性があります。
長年築いてきた技術やノウハウ、顧客基盤といった経営資源も、廃業すれば失われますが、M&Aであれば買い手のもとで活かし続けることができます。
合資会社を売却するデメリット
合資会社の売却には、株式会社にはないデメリットや注意すべき点があります。主なデメリットは以下の通りです。
- 譲渡後も一定の責任が残る場合がある
- 手続きに時間がかかる場合がある
- 資金調達が難しい場合がある
これらを事前に把握しておくことで、想定外のリスクを避けやすくなります。
譲渡後も一定の責任が残る場合がある
合資会社の無限責任社員は、会社の債務に対して個人財産を含めた無限の責任を負います。持分を譲渡したり、退社したりした場合でも、退社登記前に生じた債務については、登記後2年間は責任を負い続けることがあります。
この点は、株式会社の株式譲渡と比べて注意が必要な論点です。売り手にとっては、譲渡後に残り得る責任の範囲を事前に整理し、契約条件に反映させておくことが重要です。
手続きに時間がかかる場合がある
合資会社の持分譲渡には、原則として社員全員の同意が必要です。社員間の関係が良好であればスムーズに進みますが、意見が合わない社員がいる場合は交渉に時間がかかります。
また、事業譲渡を選ぶ場合でも、契約関係の個別承継や許認可対応が必要になることがあり、手続き全体が長期化しやすい傾向があります。
資金調達が難しい場合がある
合資会社は株式を発行できないため、株式会社のように株式市場や第三者割当増資を通じた資金調達ができません。買い手候補が買収資金を調達する際にも、合資会社の法的構造がネックになる場合があります。
このため、合資会社のM&Aでは、株式会社へ組織変更を行ったうえで売却を検討するケースもあります。組織変更には手続きや費用がかかりますが、買い手の選択肢が広がる点ではメリットがあります。
合資会社における事業承継の方法
合資会社の事業承継には、大きく分けて3つの方法があります。誰に、どのような形で引き継ぐかによって、手続きや論点が変わります。
- 親族内承継
- 親族外承継
- M&Aによる承継
どの方法が最適かは、後継者の有無、社員構成、会社の財務状況によって異なります。
親族内承継
親族内承継は、経営者の子や親族に持分と経営権を引き継ぐ方法です。合資会社では、後継者が無限責任社員として加入し、現経営者が退社する形で進めることが多くあります。
ただし、無限責任社員になるということは、会社の債務に対して個人財産を含めた責任を負うことを意味します。後継者がこのリスクを理解し、受け入れられるかどうかが前提になります。また、持分の移転には贈与税や相続税の論点も生じるため、税務面の事前整理が必要です。
親族外承継
親族外承継は、社内の従業員や外部の第三者に持分と経営を引き継ぐ方法です。親族に適任者がいない場合の選択肢になります。
合資会社の場合、新たな無限責任社員の加入には社員全員の同意が必要です。また、後継者に十分な資力がない場合は、持分の取得資金をどう確保するかが論点になります。事前に資金計画を含めて設計しておくことが重要です。
M&Aによる承継
社内に後継者がいない場合、M&Aによって外部の買い手に事業を引き継ぐ方法があります。事業譲渡が中心になりますが、組織変更を経て株式譲渡に持ち込むケースもあります。
M&Aによる承継は、後継者不在の問題を解決しながら、経営者が売却対価を得られる点が利点です。一方で、買い手を見つけるまでに時間がかかることもあるため、早めに準備を始めることが重要です。
合資会社を売却する際の注意点
合資会社の売却では、株式会社とは異なる注意点があります。特に以下の点は事前に確認しておく必要があります。
- 事業承継の戦略を事前に考えておく
- 定款の定めを事前に確認しておく必要がある
- 相続税や負債が多額になる可能性がある
- 社員が死亡した場合、会社の形態が変わる可能性がある
これらの論点を放置したまま進めると、手続きの途中で想定外の問題が発生するおそれがあります。
事業承継の戦略を事前に考えておく
合資会社の売却は、株式譲渡のように手続きがシンプルではないため、場当たり的に進めるとうまくいきにくくなります。誰に引き継ぐのか、どの手法を使うのか、税務上の影響はどうなるのかを事前に整理しておく必要があります。
特に、事業譲渡とするのか、組織変更を経て株式会社化したうえで譲渡を目指すのかによって、手続きの負担やスケジュールが大きく変わります。早い段階で専門家と相談し、自社に合った承継戦略を固めておくことが重要です。
事業承継で取り得る選択肢の全体像を把握したい方は、以下の記事もご覧ください。
多くのオーナー経営者が「M&A」を検討せざるを得ない状況だが…そもそも「事業承継」にはどんな選択肢があるのか?
定款の定めを事前に確認しておく必要がある
合資会社では、社員が死亡した場合に持分や社員たる地位の承継は、定款の定めや会社法上の取扱いを踏まえて整理する必要があります。事業承継を円滑に進めるには、社員死亡時の取扱いについて定款でどのように定めるかを事前に確認・整備しておくことが重要です。
定款や会社法上の整理によっては、社員の死亡が退社事由となり、払戻しや承継の取扱いが問題になる場合があります。事業承継を見据えるのであれば、早めに定款の内容を確認し、必要に応じて変更しておくべきです。
相続税や負債が多額になる可能性がある
合資会社の持分や関連する財産を承継する場合、その評価額に応じて相続税の論点が生じます。会社の業績が良い場合は持分の評価額が高くなり、相続税も大きくなる可能性があります。
また、無限責任社員としての地位を承継する場合には、会社債務に対する責任の範囲も重要な論点になります。相続税と債務リスクの両面を事前に把握し、税理士と連携して対策を講じておく必要があります。
社員が死亡した場合、会社の形態が変わる可能性がある
合資会社は、無限責任社員と有限責任社員がそれぞれ最低1名ずつ必要です。どちらか一方の社員が全員いなくなると、合資会社としての要件を満たせなくなります。
このような場合には、会社形態や社員構成の再整理が必要になる可能性があります。社員の死亡や退社が、承継やM&Aのスケジュールに影響することもあるため、社員構成に関するリスクは事前に確認しておくべきです。
合資会社の事業承継の進め方
合資会社の事業承継は、計画なしに進められるものではありません。株式会社と比べて手続きが複雑になりやすいため、進め方を誤ると途中で行き詰まるおそれがあります。基本的な進め方は以下の通りです。
- 計画立案と後継者の選定を行う
- 社員間の合意を形成する
- 財務状況の把握と整理をしておく
- 税務対策の検討をする
- 法的手続きを実施する
それぞれの工程で何を行い、何に注意すべきかを解説します。
計画立案と後継者の選定を行う
はじめに、承継の目的と方針を整理します。親族に引き継ぐのか、社内の従業員に渡すのか、外部の買い手を探すのかによって、その後の進め方はすべて変わります。
後継者の選定にあたっては、無限責任社員としての責任を理解し、引き受けられる人物かどうかが重要な判断基準になります。候補者の意向と能力を確認したうえで、承継のスケジュールを設計します。
また、この段階で、FAなどのM&Aの支援業者も選定しておくことが重要です。計画の初期から専門家が入ることで、手法の選定や税務面の設計を含めた全体の見通しが立てやすくなります。
社員間の合意を形成する
合資会社の持分譲渡や新たな社員の加入には、他の社員の承諾や定款の定めが問題になるため、事前確認が必要です。社員間の関係が良好であれば問題になりにくいですが、意見の相違がある場合は事前に調整が必要です。
この合意形成は、社員間の意見対立がある場合は長期化しやすいため、早い段階から方針を共有し、合意形成を図ることが重要です。必要に応じて、弁護士やFAを介して進める方が円滑に進みやすくなります。
財務状況の把握と整理をしておく
事業承継を進める前に、会社の財務状況を正確に把握しておく必要があります。帳簿上の資産・負債だけでなく、簿外債務や個人保証の有無、未払税金の状況まで含めて整理します。
規模の小さい合資会社では、経営者の個人資産と会社資産の区分が曖昧になっていることも少なくありません。買い手や後継者に正確な情報を提示できるよう、事前に財務の整理を進めておくことが重要です。
税務対策の検討をする
持分の譲渡や承継には、譲渡所得税、贈与税、相続税などの税務上の影響が生じます。どの方法で承継するかによって税負担が大きく異なるため、税理士と連携して最適な方法を検討する必要があります。
特に、持分等の評価額が高い場合は、承継時の税負担が後継者の経営に影響することがあります。暦年贈与の活用や退職金の支給など、使える制度を早めに検討しておくことが重要です。
法的手続きを実施する
承継方針と税務対策が固まったら、法的手続きに入ります。定款の変更の要否の確認、持分譲渡契約の締結、社員の加入・退社に伴う登記など、複数の手続きを順序立て進める必要があります。
事業譲渡を選ぶ場合は、事業譲渡契約の締結に加え、個別の契約移転や許認可の再取得が必要になることがあります。手続きの漏れがあると、承継後に問題が発覚するおそれがあるため、弁護士の支援を受けながら進めるのが安全です。
まとめ
合資会社のM&Aや事業承継は、株式会社と比べて手続きが複雑になりやすいものの、適切な方法を選べば実行可能です。事業譲渡や持分譲渡、株式会社への組織変更後の株式譲渡など、会社の状態に応じた選択肢があります。
特に売り手にとっては、以下のような論点を早い段階で整理しておくことが重要です。
- 持分譲渡には社員全員の同意が必要であり、合意形成に時間がかかる場合があること
- 無限責任社員の責任は退社後も一定期間残ること
- 定款に持分承継の定めがなければ、社員死亡時に持分が承継されないこと
- 税務上の影響を事前に整理し、最適な承継方法を設計する必要があること
合資会社の事業承継は、計画と準備の精度が結果を左右します。早い段階からFA、弁護士、税理士と連携し、自社に合った承継戦略を固めていくことが、納得感のある結果につながります。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
関連記事
-
合資会社のM&Aの進め方は?事業譲渡の方法や注意点も解説
2026.04.28
2026.04.28
#M&Aの進め方
-
M&Aの流れとは?準備からクロージング・PMIまで全ステップを売り手目線で解説
2026.04.27
2026.04.27
#M&Aの進め方
-
事業承継・M&A補助金とは?売り手でも使える枠や申請の流れを解説
2026.03.31
2026.04.23
#M&Aの進め方
-
会社売却のやり方は?手続きの流れやメリットを解説
2026.03.29
2026.04.23
#M&Aの進め方
-
M&Aの相談先一覧!メリットやデメリット、成功のポイントを解説
2026.03.29
2026.04.23
#M&Aの進め方