M&AにおけるEBITDAとは?指標とするメリットや注意点も解説

2026.01.31

公開日:2026.01.31

2026.01.31

2026.02.01

更新日:2026.02.01

2026.02.01

M&AにおけるEBITDAとは?指標とするメリットや注意点も解説

M&Aで頻繁に用いられる財務指標の一つに、EBITDAがあります。

EBITDAは、日本語では「利払い前、税引き前、減価償却前、その他償却前利益」と訳されます。

ただし、EBITDAは万能な指標ではありません。設備投資の必要性や実際のキャッシュフローを十分に反映しないという限界もあります。そのため、M&A実務ではEBITDAを中心に据えつつも、フリーキャッシュフロー、運転資本、負債状況などと組み合わせて総合的に判断されます。

本記事では、「EBITDAとは何か」という基礎から、計算方法、EBIT・フリーキャッシュフローとの違い、M&Aで用いるメリットと注意点、そして売り手が取るべきEBITDAの改善策までを解説します。

EBITDAとは?売り手向けに基礎から解説

M&AにおけるEBITDAは、企業価値評価や買収価格の目安として、最も頻繁に用いられる指標の一つです。

EBITDA(イービットディーエー/イービットダー)は、「Earnings Before Interest, Taxes, Depreciation and Amortization」の略です。日本語では「利払い前、税引き前、減価償却前、その他償却前利益」といった意味になります。

M&Aでは、単年度の純利益よりも、事業そのものの持続的な収益力が重視されます。その際、EBITDAは支払利息、法人税、減価償却費などの影響を排除し、本業の収益力を測る指標として活用されます。

特に中小企業M&Aでは、「EBITDA × 倍率(マルチプル)」による企業価値算定が、実務上の標準となっています。M&Aにおいて価格の目線で会話する際の「マルチプル(倍率)」とは、EBITDA倍率を指すことが一般的です。

売り手の立場では、自社のEBITDAがいくらなのか、どのような前提で算出されているのかを理解することが、M&A交渉の出発点となります。EBITDAが高ければ、一般的に評価額も高くなりやすく、買い手候補の関心も集まりやすくなります。

一方で、EBITDAが低い、あるいはマイナスの場合には、買い手候補の評価額も低くなる、もしくは関心を得られない(M&Aの対象とならない)可能性が高まります。

もっとも、EBITDAは万能な指標ではありません。設備投資の必要性や実際のキャッシュフローを正確に反映しないという限界があるため、M&A実務ではフリーキャッシュフロー、運転資本、負債状況などと併せて、総合的に評価されます。

EBITDAの計算方法

EBITDAの基本的な計算式は、以下のとおりです。本来は既述のとおり、最終利益に支払金利や税金、減価償却費やその他の償却費を足し戻して算出するものですが、中小企業M&Aにおいては簡便的に、営業利益に減価償却費を加えて算出しています。

EBITDA = 営業利益 + 減価償却費

オーナー企業では、オーナーの高額な役員報酬や役員保険、事業との関連性が低い交際費など、いわゆるオーナーコスト(※営業損益の計算に含まれているものに限る)を加算し、譲渡後の事業の収益力を表す調整を行うケースがあります。

この場合の算式は、次のとおりです。

調整後EBITDA = 営業利益 + 減価償却費 + オーナーコスト

EBITDAとEBITの違い

EBIT(利払い前・税引き前利益)は、減価償却費を差し引いた後の利益を指します。一方、EBITDAは、EBITに減価償却費を足し戻した指標であるため、通常はEBITDAの方が大きな数値になります。

この違いが特に重要となるのは、設備投資の規模やタイミングが企業ごとに大きく異なる場合です。製造業や物流業など、設備を多く保有する業種では減価償却費が大きくなりやすく、EBITのみで比較すると、特に近い時期に大きな設備投資を行った場合などに、実態以上に収益力が低く見えてしまう可能性があります。

EBITDAを用いることで、過去の設備投資の影響を排除し、純粋な事業収益力を比較しやすくなるというメリットがあります。

EBITDAとフリーキャッシュフローの違い

フリーキャッシュフローは、以下の計算式で算出され、実際に企業の手元に残る現金の動きを示す指標です。

営業活動によるキャッシュフロー - 設備投資

一方、EBITDAは会計上の利益指標であり、実際の現金収支とは必ずしも一致しません。

例えば、EBITDAが高水準であっても、支払利息の負担や税負担、設備更新や運転資本の増加が大きい場合には、フリーキャッシュフローがマイナスになることもあります。そのため、M&Aにおける企業価値評価では、EBITDAを重視しつつも、キャッシュフローの持続可能性を併せて確認することが不可欠です。

EBITDAを指標とするメリット

M&AにおいてEBITDAを指標とするメリットはいくつかあります。代表的なポイントを解説します。

設備投資の影響を排除できる

EBITDAは減価償却費を足し戻して算出されるため、過去の設備投資の影響を受けにくい指標です。これにより、設備投資の規模や実施タイミングが異なる企業同士でも、本業の収益力を比較しやすくなります。

M&Aでは、買い手は「この事業自体がどれだけ稼げるか」を重視するため、EBITDAは実務上、非常に有用な指標といえます。

資本構成の影響を排除できる

EBITDAは支払利息の影響を除外しているため、当期純利益と異なり借入金額の大小による影響を受けません。企業が資金を借入により調達をしているのか出資(エクイティ)により調達しているのか(資本構成)の影響を受けずに、本業の収益力を比較することが可能です。

海外企業の収益性を比較できる

国や地域によって税制や会計基準が異なるため、当期純利益のみでは企業間比較が難しい場合があります。EBITDAは税金や支払利息の影響を除外しているため、国際比較に適した指標とされています。

そのため、クロスボーダーM&Aでは、EBITDAが評価の中心指標として用いられるケースが多く見られます。

中長期的な視点で企業価値評価ができる

EBITDAは、単年度の一時的な損益変動に左右されにくく、事業の持続的な収益力を測る指標として適しています。そのため、M&Aの企業価値算定では、「EBITDA × 倍率(マルチプル)」という手法が広く用いられています。

倍率は、業界特性、成長性、リスク水準、競争環境などによって異なりますが、売り手にとっては、自社の企業価値を客観的に把握するための重要な目安となります。

EBITDAを用いる際の注意点

EBITDAにはさまざまなメリットがある一方で、注意すべき点も存在します。以下で詳しく解説します。

設備投資負担を見落とす可能性がある

EBITDAは減価償却費を加算して算出されるため、将来的に必要となる設備投資の負担を反映しません。設備更新が不可欠な事業では、EBITDAが高く見えても、実際のキャッシュフローは厳しい可能性があります。

売り手はこの点を理解したうえで、設備投資計画や更新スケジュールを整理しておくことが重要です。

実際のキャッシュフローとは異なる

EBITDAはあくまで会計上の利益指標であり、実際の現金収支を直接示すものではありません。

支払利息や税負担、設備投資、運転資本の増減、在庫の変動、売掛金の回収期間、借入金の返済などは考慮されていないため、M&AではEBITDAだけでなく、フリーキャッシュフローや資金繰りの状況もあわせて確認されます。

EBITDAの改善方法

EBITDAが評価のネックになっている場合、改善に取り組む必要があります。EBITDAの改善方法はいくつか存在するため、自社の状況に適した施策を選択しましょう。

売上や営業利益の増加

EBITDAを改善する最も基本的な方法は、売上や営業利益を増加させることです。具体的には、既存顧客の単価向上、新規顧客の開拓、販売チャネルの拡大、利益率の高い商品・サービスへの集中などが挙げられます。

M&Aを見据える場合、安定的な売上や利益の成長を示せるかどうかが、評価に大きく影響する点を意識しておきましょう。

原価や経費の削減

コスト削減もEBITDA改善の重要な手段の一つです。仕入先の見直し、業務プロセスの効率化、不要な固定費の圧縮、間接部門のスリム化などを行うことで、営業利益を押し上げることができます。

まとめ

M&AにおけるEBITDAは、売り手の企業価値を測るうえで最も重要な指標の一つです。

設備投資や会計処理の違いを排除し、本業の収益力を客観的に評価できる点が大きなメリットである一方で、実際のキャッシュフローや設備投資の必要性を反映しないという限界もあります。そのため、フリーキャッシュフローなど他の指標と併用することが不可欠です。

売り手としては、自社のEBITDAを正確に把握し、必要に応じて改善策を講じたうえでM&Aに臨むことが、より有利な条件での成約につながります。専門家と連携しながら財務状況を整理し、正規化EBITDAを適切に提示できる体制を整えることが望ましいでしょう。

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この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

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