レーマン方式とは?計算方法や利用するメリット・デメリットを解説
公開日:2026.01.31
2026.01.31
更新日:2026.02.01
2026.02.01
M&Aを検討する売り手オーナーにとって、仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)の報酬設計は、成約条件と同じくらい重要な意思決定ポイントです。
特にレーマン方式は、取引金額に応じて段階的に料率が低下していく代表的な成功報酬の計算方法であり、日本のM&A市場では広く採用されています。ただし、基準となる金額の考え方や最低報酬の有無によって、実質的な負担額は大きく変わる点には注意が必要です。
本記事では、レーマン方式の定義から計算方法、種類、メリット・注意点までを解説します。
レーマン方式とは?
レーマン方式とは、M&Aの取引金額に応じて、報酬料率が段階的に低下していく成功報酬の計算方式です。
中小企業M&Aにおける標準的な手数料体系として広く用いられており、M&A仲介会社やFA(フィナンシャル・アドバイザー)の多くが採用しています。
一般的なレーマン方式の算出方法は、以下のとおりです。
| 取引金額 | 料率 |
| 5億円以下の部分 | 5% |
| 5億円超 10億円以下の部分 | 4% |
| 10億円超 50億円以下の部分 | 3% |
| 50億円超 100億円以下の部分 | 2% |
| 100億円超の部分 | 1% |
このように、取引金額が大きくなるほど、適用される料率は段階的に低下していきます。
レーマン方式は、大規模な案件ほど報酬負担が相対的に軽くなる設計となっており、事業規模の大きい企業や高額売却を目指す売り手にとって有利に働きやすい方式といえます。
一方で、小規模案件では報酬負担が相対的に重くなりやすいため、売り手は自社の取引規模に照らして、報酬体系の妥当性を慎重に判断する必要があります。
レーマン方式の計算方法
レーマン方式の報酬額は、「取引金額 × 段階別料率」を累積して算出されます。
例えば、譲渡価格が8億円だった場合、一般的な料率例を用いると、次のようになります。
・~5億円部分:5% → 2,500万円
・5億~8億円部分:4% → 1,200万円
・合計手数料:3,700万円+(消費税)
単純に「譲渡額 × 5%」で計算されるわけではない点を、まず押さえておきましょう。
また、レーマン方式では「取引金額」を何に基づいて算定するかが重要な論点になります。主に、以下の4つが基準として用いられます。
・株式価値(株価)ベース
・企業価値ベース
・オーナー受取額ベース
・移動総資産ベース
どの基準を採用するかによって報酬額は大きく変わるため、売り手は契約締結時に必ず確認し、必要に応じて交渉することが重要です。
さらに、レーマン方式とは別に最低報酬額が設定されているケースも多く見られます。小規模案件であっても一定額の報酬が発生する点には注意が必要です。
レーマン方式の種類
先述のとおり、レーマン方式には基準となる金額の違いによって、いくつかの種類があります。売り手にとっては、どの基準が採用されるかによって、実際の報酬負担が大きく左右されます。
株価レーマン方式
株価レーマン方式とは、譲渡する株式の対価(株式売却額)を基準として、レーマン方式を適用する方法です。最もシンプルで分かりやすい方式とされることが多く、特に株式譲渡案件で採用されやすい傾向があります。
主な特徴は、以下のとおりです。
・計算が比較的明確
・オーナーが実際に受け取る金額と連動しやすい
・負債の影響を受けにくい
特に、買い手が多額の負債を引き継ぐ案件では、負債を含めた実質的な取引金額に比べて株式価値が低くなる場合があるため、他のレーマン方式との比較において報酬の負担が軽減される場合がある点について注意が必要です。
企業価値レーマン方式
企業価値レーマン方式とは、株式譲渡価格に有利子負債の合計額を加えた企業価値を基準としてレーマン方式を適用する方法です。M&Aでは企業価値を基準に評価を行うケースが多く、特に大規模案件で採用されやすい方式といえます。
主な特徴は、以下のとおりです。
・負債が多い企業ほど基準額が大きくなり、報酬が高額になりやすい
・実際のオーナー受取額よりも、報酬額が大きくなる可能性がある
売り手は、企業価値ベースなのか、株式価値ベースなのかを慎重に確認したうえで、必要に応じて報酬体系について交渉することが重要です。
オーナー受取額レーマン方式
オーナー受取額レーマン方式とは、株式の譲渡額に加えて、譲渡時にオーナーに返済されるオーナーやその親族からの会社の借入金を加えた売り手オーナーが実際に受け取る金額を基準として、レーマン方式を適用する方法です。売り手にとって、比較的納得感が高い方式といえます。
主な特徴は、以下のとおりです。
・オーナーの手取り額に連動した報酬設計
・負債(オーナーやその親族からの借入金を除く)の影響を受けにくい
この方式は、売り手の実質的な負担感を重視した報酬体系といえるでしょう。
移動総資産レーマン方式
移動総資産レーマン方式とは、株式の譲渡金額に全ての負債金額を加えた合計額を基準として、レーマン方式を適用する方法です。主に事業譲渡案件で採用されることがあります。
主な特徴は、以下のとおりです。
・事業の規模感を反映しやすい
・株式譲渡と比べて、計算が複雑になりやすい
どの資産が報酬計算の対象になるのかを、事前に明確にしておくことが重要です。
レーマン方式を利用するメリット
レーマン方式には、売り手にとっていくつかのメリットがあります。
以下にて、主なポイントを解説します。
報酬体系が比較的明確
レーマン方式は、あらかじめ料率と段階が定められているため、報酬計算の仕組みが比較的明確です。売り手は「いくらで売れた場合に、いくらの報酬が発生するのか」を事前に把握しやすくなります。
また、仲介会社やFAごとの報酬体系を比較しやすく、条件交渉の材料として活用できる点もメリットといえるでしょう。
大規模取引なほど負担が減る
レーマン方式は、取引規模が大きくなるほど、実質的な報酬負担率が低下します。例えば、取引金額が10億円を超えるような案件では、平均料率が低くなる傾向があります。
そのため、高額売却を目指す売り手にとって、レーマン方式は合理的な報酬体系といえます。
費用を事前に算出しやすい
取引金額の目安がある程度見えていれば、レーマン方式に基づいておおよその報酬額を事前に算出できます。
これにより、売り手は手取り額を見積もりやすくなり、M&Aにおける意思決定を行いやすくなります。
レーマン方式の注意点
多くのメリットがある一方で、レーマン方式には売り手が注意すべき点も存在します。
小規模取引の場合は負担が大きくなる
レーマン方式は、取引金額が小さいほど高い料率が適用されるため、小規模案件では報酬負担が相対的に重くなります。例えば、1〜2億円規模の案件では、5%前後の料率が適用されるケースが一般的です。
そのため、売り手は自社の想定売却額に対して、レーマン方式が適切な報酬体系かどうかを慎重に判断する必要があります。
最低報酬額が設定されている場合がある
多くのM&A仲介会社やFAでは、レーマン方式に加えて最低報酬額が設定されています。この場合、取引金額が小さくても一定額の報酬が発生します。
売り手は、契約締結前に以下の点を必ず確認しましょう。
・最低報酬額はいくらか
・どのタイミングで発生するのか(基本合意時か、最終契約時か)
まとめ
レーマン方式は、取引金額に応じて段階的に料率が下がる成功報酬体系であり、採用する基準額によって報酬額が大きく変動します。
大規模案件では有利に働きやすい一方、小規模案件では相対的に負担が大きくなりやすい点には注意が必要です。専門家に依頼する際は、最低報酬額の有無や報酬計算の基準を必ず確認しましょう。
売り手オーナーは、レーマン方式を単なる「コスト」として捉えるのではなく、「どのような成果を得るための対価なのか」という視点で評価し、自社にとって最適な報酬設計を選択することが重要です。
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