事業譲渡価格の決め方とは?適正価格や算出方法を解説
公開日:2025.12.30
2025.12.30
更新日:2026.01.01
2026.01.01
事業譲渡を行う際、どの程度の譲渡金額になるのか、またその金額をどのような基準で算出するのかは、売り手にとって最も重要な論点です。売却価格を過大・過小に設定すれば、交渉の停滞や取引後のトラブルにつながるリスクがあります。
適正な価格を把握するには、資産価値・収益性・将来の事業性など複数の要素を正しく評価する必要があります。この記事では、事業譲渡価格の決め方、適正価格の考え方、代表的な算出方法を整理して解説します。
事業譲渡を検討しているオーナー経営者の方は、判断材料として参考にしてください。
事業譲渡とは
事業譲渡とは、会社が営む事業のうち 特定の資産・負債・契約・従業員などを個別に選別して第三者へ移転する取引を指します。会社法上は、重要な事業を譲渡する場合、株主総会の特別決議が必要とされています。
事業譲渡の大きな特徴は、包括承継ではなく個別承継である点です。移転対象を契約単位で細かく選べるため、不要な資産や引き継がせたくない契約・負債を会社側に残すことができます。
事業譲渡と株式譲渡の違い
事業譲渡とよく比較される手法に株式譲渡があります。両者の本質的な違いは次のとおりです。
・株式譲渡:会社の所有権(株式)を移転する方式で、会社そのものは存続します。契約・許認可・雇用契約などは原則そのまま引き継がれ、事業の連続性が確保されます。
・事業譲渡:移転する事業に含める資産・契約・負債・従業員を 個別に選定して承継 する方式です。契約の再締結や従業員の個別同意が必要になるため、手続きが増える傾向があります。
このように、事業譲渡は必要な事業だけを切り分けて取得できる柔軟性がある一方で、手続き負荷は大きくなる点が実務上の重要なポイントです。
事業譲渡のメリット
事業譲渡には多くのメリットがあり、主に下記の4点が挙げられます。
・対象事業の選別:不採算事業を外し、成長領域へ経営資源を集中できる。
・負債・不要資産の切離し:包括承継でないため、承継対象外を明確にできる。
・買い手の安心感:リスク資産や不利な契約を譲渡対象から外せるため、DD(デューデリジェンス)で状況を把握しやすい。
・部分売却:会社全体ではなく特定事業のみ売却でき、資本政策の柔軟性が高まる。
事業譲渡では、売りたくない不動産などがあっても、譲渡する事業を選別できます。会社の経営権自体は移らないため、残す事業へ経営資源を集中しやすい点も特徴です。
また、契約書に記載されていない債務は原則承継されないため、買い手側もリスク範囲を明確に把握できます。事業譲渡のメリットを踏まえ、自社に適した手法か見極めましょう。
事業譲渡のデメリット
メリットが多い一方で、事業譲渡には次のようなデメリットも存在します。
・手続きの煩雑さ:契約・資産・雇用を一つずつ個別に承継設計する必要がある。
・ステークホルダー対応負荷:主要取引先や従業員との同意取得、再契約が発生する。
・税務負担の相違:売主は法人税の課税対象となり、株式譲渡とは税負担の構造が異なる。
・株主総会決議:重要な事業譲渡は特別決議が必要で、社内意思決定のハードルが上がる。
事業譲渡では多数の実務手続きが必要となり、取引先や従業員への説明・同意取得も欠かせません。また、譲渡益への法人課税や、その後の配当課税などを踏まえると、税負担が大きくなる点も留意点です。
メリットとデメリットの両方を理解したうえで、事業譲渡が自社にとって適切か慎重に検討する必要があります。
事業譲渡の適正価格を知る方法
事業譲渡の適正価格を把握する代表的な方法は、次の2つです。
・インカムアプローチ(DCF法)
・マーケットアプローチ
インカムアプローチ
事業が将来生み出すキャッシュフローを基準に価値を算定する手法です。最も一般的な DCF(ディスカウント・キャッシュ・フロー)法では、将来キャッシュフローを現在価値へ割引することで事業価値を算出します。
理論的に正確な評価が可能ですが、将来キャッシュフローの予測精度や割引率の設定が難しく、実務では専門家の関与が不可欠です。初学者が独力で正確に試算するのは現実的ではありません。
マーケットアプローチ
市場で実際に成立した取引価格を基準に評価する方法です。主に以下の2つがあります。
・類似会社比較法
・類似取引比較法
類似会社比較法は、評価対象と事業構造が近い上場企業を選び、その企業の EV(企業価値)と EBITDA との倍率(EBITDA マルチプル)を算定し、その倍率を対象企業へ適用して事業価値を求める手法です。
算定式は以下のとおりです。
企業価値 = EBITDA × 業界相場の倍率(EBITDA マルチプル)
EBITDA マルチプル = 上場類似会社の企業価値 ÷ 上場類似会社の EBITDA
EBITDA は「営業利益 + 減価償却費」で算定します。
なお、どの企業を「類似会社」と見なすかで算定結果は大きく変わるため、選定基準の妥当性が価値算定の精度を左右します。
事業譲渡に課せられる税金
事業譲渡では、譲渡対価から譲渡対象となる資産・負債の薄価純額を差し引いた差額が事業譲渡益となります。この譲渡益に対して売り手側で課税されます。主に発生する税金は以下のとおりです。
・消費税
・法人税、事業税、地方法人税、法人住民税
それぞれ詳しく解説します。
消費税
譲渡対象に課税資産が含まれる場合、その部分に対して消費税が課されます。消費税の納付義務者は売り手ですが、最終的な負担者は一般の取引と同じく買い手側です。
法人税・事業税・地方法人税・法人住民税
事業譲渡によって利益が発生した場合、概ね、譲渡価格から譲渡対象資産・負債の帳簿価額(純額)を差し引いた差額が事業譲渡益となり、法人税等の課税対象になります。
上記を踏まえ、事業譲渡に伴う税負担を事前に把握しておくことが重要です。
事業譲渡価格に対する考え方
事業譲渡において、売り手はできるだけ高い価格で売却したいと考えるのが一般的です。しかし、思い入れや苦労といった感情面が価格に反映されやすく、実務上は高い見積もりになりがちです。
一方で、買い手は利益相反の関係にあり、可能な限り安価に取得したいと考えるのが通常です。
そのため、交渉に臨む際は、この構造を理解したうえで適正価格を算出することが不可欠です。適正な評価は、最終的なトラブル防止にもつながります。
譲渡価格の決定で失敗を避けるために
仲介はネットワークに強みがある一方、両手報酬による利益相反が構造的に生じやすい一方で、売り手専属FAは、報酬設計と評価制度を通じて売り手利益に特化でき、条件交渉・DD論点の深堀り・PMI設計まで伴走しやすいという特徴があります。
報酬は企業価値基準/成功報酬の発生時点/最低報酬・実費を明確化するのが実務の肝です。
まとめ:譲渡価格の決定で失敗を避けるために
仲介会社は買い手とのネットワークを強みに持つ一方、利益相反が構造的に発生しやすい点に注意が必要です。
これに対して 売り手専属 FA(フィナンシャル・アドバイザー)であれば、報酬体系と評価制度の関係から売り手利益に特化しやすく、条件交渉・DD 論点の深掘り・PMI 設計まで伴走しやすい特徴があります。
報酬体系については、企業価値評価の基準、成功報酬発生のタイミング、最低報酬や実費の扱いを明確化することが実務上の重要なポイントです。
オーナーズ株式会社は売り手専属FAとして、よりよい評価額での売却に向けたアドバイスをするだけでなく、売り手が十分に納得できる案件成約も実現可能です。
まずは無料相談で、自社に最適な事業承継の選択肢を検討してください。
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