事業譲渡とは何か?オーナー経営者が知っておくべき基本と実務ポイント
公開日:2025.09.23
2025.09.23
更新日:2025.09.23
2025.09.23

事業承継やM&Aの初期検討では、「事業譲渡とは何か」を正しく理解することが出発点になります。
基本を曖昧にしたまま進めると、税務・契約・労務・ステークホルダー対応で齟齬が生じ、後戻りできない不利条件に陥りやすいからです。
本記事では、事業譲渡の定義から株式譲渡との違い、メリット・デメリット、税務論点、実務チェックリストまでを体系的に整理します。
1.事業譲渡とは:定義と基本構造
そもそも事業譲渡とはどのような意味なのでしょうか。事業譲渡の定義は、下記のとおりです。
定義:事業譲渡は、会社の特定事業(資産・負債・契約・従業員等)を選別して第三者に移転する取引です。
会社法では重要な事業の譲渡に株主総会の特別決議が必要とされます。
特徴:移転対象は個別に特定され、包括承継ではありません。すなわち、承継対象外の資産・契約は会社側に残せます。
2.株式譲渡との違い(包括承継と個別承継)
事業譲渡と似た言葉で、株式譲渡が存在します。それぞれの違いとしては、下記のとおりです。
・株式譲渡:会社の所有権(株式)を移すため、契約・許認可・雇用は原則として会社に残り連続性が保たれます。
・事業譲渡:対象資産・契約・人を個別承継するため、契約の再締結や従業員の個別同意が必要になります。
このように「欲しい事業だけ切り出す」柔軟性がある一方、手続は煩雑になりやすいのが実務上の要点です。
3.事業譲渡のメリット(実務視点)
事業譲渡には、下記の4つのメリットが存在します。
・対象事業の選別:不採算事業を外し、成長事業に集中できる。
・負債・不要資産の切離し:包括承継でないため、承継対象外を明示できる。
・買い手の安心感:リスク資産や不利な契約を承継対象から除外可能で、DDでの見通しが立てやすい。
・部分売却:会社全体ではなく特定事業のみの譲渡が可能で、資本政策の自由度が増す。
4.事業譲渡のデメリット(実務視点)
事業譲渡にはさまざまなメリットが存在する一方で、デメリットも存在します。下記にて、事業譲渡の4つのデメリットを紹介します。
・手続の煩雑さ:契約・資産・雇用を一つずつ承継設計する必要がある。
・ステークホルダー対応負荷:主要取引先や従業員の同意・再契約が必要となる。
・税務負担の相違:売主側は法人課税となり、株式譲渡(株主に課税)と仕組みが異なる。
・株主総会決議:重要な事業譲渡は特別決議が必要となり、社内意思決定の難易度が上がる。
5.税務の観点から見た事業譲渡
ここまで、実務視点から事業譲渡の解説をしてきましたが、税務の観点からも知っておく必要があります。
・法人課税(売主側):譲渡益は法人所得となり、法人税が発生。
・消費税:資産ごとに課税可否を判定。株式譲渡が非課税であるのに対し、事業譲渡では課税対象となる資産が含まれ得る。
・のれん(買主側):譲受対価と純資産との差額はのれんとして計上し、会計・税務で償却取扱いが生じる。
結論として、税務影響はケースにより大きく異なるため、初期段階からシミュレーションを行うことが不可欠です。
6.実務の要チェックリスト(オーナー経営者向け)
・対象の特定:資産・負債・契約・知財・人の承継範囲を明細レベルで特定。
・契約の再締結:重要取引・リース・代理店・サプライ契約等の再締結可否とスケジュール。
・従業員の同意・労務対応:雇用条件の変更有無、就業規則・退職金制度の取り扱い。
・許認可・表示:業法許認可や商標・ドメイン・表示変更の計画。
・競業避止義務:売主の将来事業に制約がかかる条項の範囲・期間・地域。
・情報漏洩対策:段階開示とNDA、社内外コミュニケーション計画。
・PMI準備:組織・システム・顧客移管のプランを事前策定。
7.他スキーム比較
事業譲渡と他のスキームに関して、比較表にまとめました。それぞれの特徴を理解し、自身に最適な方法を探してみましょう。
観点 | 株式譲渡 | 事業譲渡 | 会社分割 |
手続きの簡便さ | ◎(包括承継) | △(個別承継) | △ |
契約・許認可 | 自動承継が多い | 再締結・個別承継 | 自動承継・個別承継 |
税務(売主側) | 株式個人課税 | 法人課税 | 法人課税 |
消費税 | 非課税 | 資産ごと判定 | 資産ごと判定 |
部分売却 | 原則不可 | 可能 | 可能 |
スピード | 速い傾向 | 設計次第で中~長期 | 案件依存 |
情報漏洩体制 | 比較的高い | ステークホルダーで調整しやすい | 中程度 |
PMI負荷 | 低~中 | 中~高 | 中~高 |
社内承継という“第三の選択肢”も、幹部や従業員に継承しつつ外部資本を組み合わせることで、文化維持と資金調達を両立できる点が特長です。
8.失敗を避ける進め方(売り手専属FAの活用)
仲介はネットワークに強みがある一方、両手報酬による利益相反が構造的に生じやすい一方で、売り手専属FAは、報酬設計と評価制度を通じて売り手利益に特化でき、条件交渉・DD論点の深堀り・PMI設計まで伴走しやすいという特徴があります。
報酬は企業価値基準/成功報酬の発生時点/最低報酬・実費を明確化するのが実務の肝です。
まとめ:事業譲渡とは実務負荷は大きいが、「選択できるM&A」
事業譲渡は不要事業の切離しや成長事業集中に有効な柔軟スキームですが、契約再締結・同意取得・税務対応など手続負荷は高くなります。
実行にあたっては、承継範囲の明確化/利害関係者対応/税務シミュレーション/競業避止の見極め/PMI準備が不可欠です。
株式譲渡・会社分割、そして社内承継とも比較し、自社目的に合致する方法を選びましょう。
オーナーズ株式会社は売り手専属FAとして、報酬の透明性と利益相反回避を徹底し、買い手探索・条件交渉・DD・PMIまで伴走します(オーナーズ株式会社プレスリリース)。まずは無料相談で、自社に最適な承継・M&Aの選択肢を検討してください。
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