SaaS業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介
公開日:2025.04.30
2025.04.30
更新日:2025.04.30
2025.04.30
昨今、SaaS業界は市場規模が拡大しており、今後も需要が増して拡大が続くと予想されています。
SaaS業界では、ノウハウやスキル、人材の確保を目的としたM&Aが注目されています。
では、具体的にSaaS業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新のM&A事情を解説します。さらに、SaaS業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。
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SaaS業界とは?業界の現状を解説

SaaS業界は、クラウドを通じてソフトウェアを提供する産業です。企業のDXを支える基盤として、重要な役割を担っています。ここでは、業界の定義や最新の動向について詳しく解説します。
SaaS業界の定義
SaaS業界とは、インターネット経由でソフトウェアを利用する提供形態を指します。従来のような買い切り型ではなく、サービスとして提供される点が特徴です。場所を問わず、常に最新の機能を利用できる点も大きな強みといえるでしょう。
この業界では、サブスクリプション方式の収益モデルが基本となっています。利用者は月額料金を支払うことで、手軽に導入を開始できます。開発側は継続的な収益を得ながら、サービスの改善を繰り返すことが可能です。
データの管理や保守は、すべて提供会社側で行われます。そのため、導入企業はサーバー運用の手間を省くことができます。こうした利便性の高さが、SaaSの普及を後押ししている理由です。
このように、ソフトウェアを「所有」から「利用」へと転換した点が、SaaS業界の本質といえます。現代のビジネスにおいて、不可欠なインフラの一つです。
SaaS業界の動向
SaaS業界は、全産業におけるデジタル化の進展に伴い、急成長を続けています。多くの企業が業務効率化を目的として、導入を加速させています。近年では、特定の業種に特化したサービスも増えてきました。
一時期は、汎用的なソフトウェアが市場の大半を占めていましたが、最近では医療や建設など、専門領域向けのSaaSが注目されています。現場特有の課題を解決する製品への需要が高まっているためです。
また、AI技術の搭載により、自動化の精度も向上しています。単なる情報管理にとどまらず、意思決定を支援する機能も提供されるようになりました。利便性はさらに高まり、活用の幅は今後も広がるでしょう。
技術革新が進む中で、SaaS業界はさらなる進化を続けています。今後も、企業の競争力を左右する重要な分野であり続けると考えられます。
SaaS業界の市場規模
世界のパブリッククラウドサービス市場は、驚異的なスピードで拡大を続けています。総務省の資料によれば、2021年に4,106億ドルだった市場規模は、2026年に9,152億ドルへ達すると予測されています。5年間で2倍以上の規模に成長する、非常に勢いのある分野といえるでしょう。
日本国内の市場も、世界と同様に力強い成長を見せています。国内のパブリッククラウドサービス市場は、2024年に4兆1,423億円規模まで拡大しました。前年比26.1%増という、極めて高い成長率を記録しています。企業のIT投資がクラウドへ本格的にシフトした結果と考えられます。
その中でもSaaS市場は、総務省「データセンター市場及びクラウドサービス市場の動向」によると、2023年時点で約1.4兆円に達しています。現在は生成AIの活用が進み、市場の成長をさらに後押ししている状況です。今後も全産業でのDX推進に伴い、SaaS業界は日本のIT産業を牽引し続けると見込まれます。
今後も、働き方改革による業務効率化の推進やリモートワークの増加、運用・保守にかかる人手を減らすために、SaaSの利用が拡大すると予想されています。
様々なデータを扱う本業界は、セキュリティ対策やニーズに応えるための優秀なエンジニアやセールス人材が必要ですが、現状はそれらが不足している状態です。今後、事業を拡大していくには人材の確保が重要な課題となるでしょう。
サービス・運営形態の多様化
SaaS業界の運営形態は近年、大きく変化しています。以前は、一つのソフトウェアですべてを完結させる形が主流でしたが、現在は複数の専門ソフトを連携させて活用する形が増えています。
API連携の普及により、データの一元管理が可能になりました。部門ごとに最適なツールを選択できる環境が整い、利便性を追求した結果として、サービスの多様化が進んだといえます。
現場のニーズに応じて柔軟に構成を変えられる時代となり、サービスの組み合わせそのものが、企業独自の強みを生み出しています。
高齢化社会の進展
深刻な人手不足は、SaaSの需要を押し上げる大きな要因です。特に介護や医療の現場では、導入が急速に進んでいます。限られた人員で現場を回すための工夫が、強く求められている状況です。
記録業務を自動化することで、スタッフの負担を軽減できます。また、熟練者の技術やノウハウをデータ化して継承する動きも活発化しています。SaaSは、貴重な労働力を有効活用するための有力な手段といえるでしょう。
社会課題を解決する手段として、業界の役割は拡大しています。業務効率化の推進は、安定した経営に欠かせない要素となっています。
コロナ禍の影響
感染症の拡大は、働き方を根本から変える契機となりました。テレワークの普及により、クラウド活用は事業運営における必須条件となっています。オフィス外でも業務を遂行できる環境が、急速に整備されました。
対面でのやり取りが制限され、電子契約も一般化しています。いわゆる「ハンコ出社」の廃止など、従来の慣習が次々と見直されました。有事の際でも事業を止めない体制構築が、より重視されています。
このように、クラウド運用の価値は広く再定義されたといえるでしょう。こうした変化は一時的なものではなく、今後も定着していくと考えられます。
SaaS業界のM&A動向とは?

SaaS業界では、事業成長を加速させるM&Aが活発に行われています。市場競争が激化する中で、業界再編の動きも強まっています。ここでは、主な動向として二つのパターンを解説します。
同業種間でのM&A
業種間では、シェア拡大を目的とした買収が多く見られます。競合他社のユーザー基盤を一度に獲得できる点が、その大きな理由です。短期間で市場の占有率を高める有力な手段といえるでしょう。
また、複数のプロダクトを統合することで、開発コストの最適化が可能になります。エンジニアの確保も、大きな買収目的の一つです。規模の経済を働かせることで、収益性の向上が期待されます。
特定の領域で圧倒的な地位を築くため、戦略的にM&Aが行われています。業界内での生き残りをかけた動きは、今後も続くと考えられます。
異業種間でのM&A
異業種によるSaaS企業の買収は、DX推進を主な目的としています。既存事業にデジタル技術を取り入れたい企業が増えており、自社サービスをIT化して付加価値を高める狙いがあります。
顧客基盤を持つ事業会社が、高い収益性を求めて買収に踏み切るケースも少なくありません。ストック型の収益モデルを自社に取り込むことで、従来のビジネスモデルを大きく転換する契機となります。
さらに、周辺領域のソフトウェアを取り込み、プラットフォーム化を狙う動きも見られます。業種の垣根を越えた連携は、新たな価値を生み出す可能性が高いといえるでしょう。
SaaS業界のM&Aの流れ

SaaS業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。
1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
それぞれ詳しくみていきましょう。
Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。
事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。
その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。
譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。
また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。
M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。
仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。
それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。
弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。
また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。
※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、買い手候補先企業と接触します。
ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。
対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。
売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。
そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。
M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。
買い手にとってDDには、以下のような目的があります。
・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる
その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。
譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]
SaaS業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

SaaS業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・人材不足を解消できる
・個人保証を解除できる
・ブランド力・販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
それぞれ詳しくみていきましょう。
SaaS業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。
一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。
SaaS業界のM&Aのメリット②:人材不足を解消できる
SaaS業界は、トレンドや必要なスキルの更新が早く、最先端の技術確保には費用や時間がかかってしまいます。特にエンジニアは人材が不足しており、確保が困難であることが課題となっています。
しかし、M&Aを実施すれば素早くエンジニアを確保でき、スキルやノウハウの共有も可能です。さらに、大手企業の知名度やブランド力を活用すれば、優秀なエンジニアも確保しやすくなるでしょう。
SaaS業界のM&Aのメリット③:個人保証を解除できる
中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。
M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。
SaaS業界のM&Aのメリット④:ブランド力・販売力を強化できる
大手企業の傘下に入ることで、自社の信頼性は大きく向上します。これまで知名度の不足で苦戦していた営業活動も、有利に進めやすくなるでしょう。ブランドの看板が、新規顧客に対する安心感につながるためです。
また、買い手企業が持つ広範な販路を、そのまま活用できる点も大きなメリットです。自社単独では難しかった大手企業との契約も実現しやすくなり、販売スピードを大きく高めることが可能になります。
信頼性と販路の両方を獲得することで、事業は急成長を遂げやすくなります。ブランド力の強化は、市場における優位性を確立するための重要な要素といえるでしょう。
SaaS業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
SaaS事業は、多額の開発費が継続的に発生しやすいビジネスモデルです。強力な資本力を確保できれば、経営の安定性は大きく高まります。資金繰りに対する不安を解消し、開発やサービス改善に専念できる環境が整うでしょう。
後継者不在に悩む企業にとって、M&Aは有効な出口戦略となります。第三者に事業を託すことで、従業員の雇用や技術を確実に守ることが可能です。また、個人保証の解除により、経営者が抱えていた精神的な負担も軽減されます。
事業の継続と創業者利益の確保を同時に実現できる点は、M&Aならではのメリットです。スムーズな事業承継は、経営者だけでなく、従業員や取引先を含む関係者全員に安心感をもたらすでしょう。
SaaS業界のM&Aの相場

SaaS業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。
これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。
その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。
SaaS業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
・類似会社比較法
・類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]
SaaS業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

SaaS業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。
・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・自社の魅力をわかりやすく伝える
それぞれ詳しく解説します。
SaaS業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する
M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。
真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。
SaaS業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する
売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。
税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。
SaaS業界のM&Aのポイント③:自社の魅力をわかりやすく伝える
M&Aでより良い条件で売却を成功させるには、自社の魅力や強みを買い手候補にわかりやすく伝える必要があります。魅力や強みを伝えられなければ、そもそも買い手候補が見つからない可能性もあります。
買い手候補が魅力に感じるサービスやスキル、人材やノウハウを保有している場合は、良い条件での買い手が見つかりやすくなるでしょう。
SaaS業界のM&A売却事例6選

ここでは、SaaS業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。
・トーマツ×フォーブス
・マネーフォワード×シャトク
・AVILEN×LangCore
・プラスアルファ・コンサルティング×グローアップ
・インフォマート×タノム
・アンドパッド×コンベックス
実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。
SaaS業界のM&A売却事例①:トーマツ×フォーブス
トーマツは、2025年4月1日付でフォーブスを買収し、全株式を取得しました。また、同社は社名を「デロイトトーマツエフビー」に変更しました。
トーマツは、会計および監査の知見を基礎としたアドバイザリーサービスを推進しており、財務会計・決算業務のDXにおいては、クラウドツールの導入を起点とした、次世代のファイナンス組織の構築および経営管理領域の高度化に向けた構想策定から実装まで企業のビジネスを支援しています。
フォーブスは2009年に設立され、中堅企業向けの財務会計クラウドソフトの導入支援、導入後の伴走支援を主力とし、過去3年で40社以上のOracle NetSuite導入実績がある企業です。
過去3年で40社以上のOracle NetSuite導入実績がある。中堅企業に対して財務会計・決算業務の効率化や正確性向上、データ管理など、SaaSの活用による業務プロセスの高度化・効率化支援サービスを提供しています。
本件M&Aによって、トーマツは構想策定からERP導入、現場での運用までを包括的に提供できる体制の強化を図っています。
SaaS業界のM&A売却事例②:マネーフォワード×シャトク
マネーフォワードは、2024年12月25日付でシャトクを買収し、千葉史生代表取締役から全株式を取得しました。
マネーフォワードは2012年に設立された企業で、PFMサービスおよびクラウドサービスの開発・提供を行っています。
シャトクは2018年に設立され、売上高は1,800万円ほどです。中小企業/中堅企業向けSaaS型社宅管理システム「シャトク福利厚生賃貸」を提供しています。具体的には、福利厚生制度として、社宅制度導入を検討する企業が抱える、導入時における仕組み作りのサポートから運用時のシステムです。
本件M&Aによって、マネーフォワードはプロダクトラインアップの拡充、自社のネットワーク・顧客基盤を活用した「シャトク福利厚生賃貸」顧客の拡大を目指しています。また、HR領域でのソリューションの拡大も図っています。
SaaS業界のM&A売却事例③:AVILEN×LangCore
AVILENは、2024年11月30日付でLangCoreを買収し、北原麦郎代表取締役ら2人から4億500万円で全株式を取得しました。
AVILENは、「AIを搭載したソフトウエアの開発」と「デジタル組織の構築を支援するプログラムの提供」を主軸に、企業のAI活用/DX推進による成長を支援している企業です。
また、既存取引先のLTV最大化に加え、AIソリューションの新パッケージ開発及びM&A に向けた取り組みにより一層注力し、非連続成長の実現に向けた施策を推進しています。
LangCoreは2023年に設立され、売上高は7,300万円ほどです。生成AI領域に特化したエンジニア集団で、課題特定からアプリケーション開発まで一気通貫でサービス提供し、開発実績を有しています。
本件M&Aによって、AVILENは生成AI技術力の向上と開発案件の拡大を図っています。また、LangCoreの開発リソースを中小企業に対しても提供し、業界/業務特化型の生成AISaaSの開発へつなげることを目指しています。
SaaS業界のM&A売却事例④:プラスアルファ・コンサルティング×グローアップ
プラスアルファ・コンサルティングは、2023年2月28日付でグローアップを買収し、子会社化しました。
買い手は、タレントマネジメントシステムなどを展開しています。顧客の声を分析するマーケティングソリューションにも強みを持つ企業です。
売り手のグローアップは2008年に設立されました。直近の売上高は約11億円に達しており、新卒採用向けのスカウト型イベントや採用支援SaaSを運営しています。若手人材の集客力に優れ、企業の採用課題を解決する伴走型支援を幅広く展開している点が大きな特徴です。
本件M&Aによって、採用から入社後の活躍までを一気通貫で支援する体制が整うと考えられます。人材データの活用範囲が広がり、HRテック領域での競争力が一段と強化される見込みといえるでしょう。
SaaS業界のM&A売却事例⑤:インフォマート×タノム
インフォマートは、2024年3月29日付でタノムを買収し、同社を連結子会社化しました。
買い手のインフォマートは、BtoBプラットフォームを運営する企業です。電子請求書や受発注システムなど、企業のバックオフィス業務を効率化するSaaSを提供しています。
売り手のタノムは、2018年に設立された卸売業者向けの受発注システムを展開する企業です。直近の売上高は約1億3,100万円で、スマホで簡単に発注できるSaaS型サービスを提供しています。FAXや電話によるアナログな受注業務をデジタル化し、食品卸業界のDXを推進している点が大きな特徴です。
本件M&Aにより、飲食業界の受発注DXが一段と加速すると予測されます。両社の顧客基盤を相互に活用することで、より付加価値の高いサービスの提供が可能になるでしょう。
SaaS業界のM&A売却事例⑥:アンドパッド×コンベックス
アンドパッドは、2024年4月1日付でコンベックスを買収し、同社を完全子会社化しました。
買い手のアンドパッドは、建設業界向けの施工管理SaaS「ANDPAD」を運営しています。現場の効率化から経営管理までをデジタル化し、建設DXを牽引している企業です。
売り手のコンベックスは、2005年に設立された住宅・リフォーム業界向け顧客管理SaaSを展開する企業です。主力の営業支援システム「Digima」は、見込み客の管理や追跡を自動化する機能に優れています。長年にわたり住宅業界特有の営業プロセスを熟知し、高い継続利用率を維持している点が強みです。
本件M&Aによって、施工管理から営業支援までを一気通貫で提供できる体制が整います。建設業界全体の業務フローをデジタルでつなぎ、さらなる生産性向上に寄与すると考えられるでしょう。
SaaS業界のM&Aに関するよくある質問

SaaS業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。
理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。
SaaS業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?
もちろん全国問わず、M&Aは可能です。
全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。
SaaS業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?
いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。
業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。
SaaS業界のM&Aに関するよくある質問③:事業が赤字の場合でも売却できますか?
SaaS事業が赤字の場合でも、売却は可能です。保有しているスキルやノウハウによっては、価値があると判断されるかもしれません。
しかし、基本的に赤字の場合は良い条件を提示してもらえなかったり、買い手企業が見つかりづらかったりします。そのため、売却する際はなるべく黒字の状態にしておきましょう。
まとめ

SaaS業界では、今後も市場規模が拡大すると予測されており、国内企業のみならずM&Aが活発的に行われています。
SaaS業界でM&Aを実施すれば、人材不足を解消でき、個人保証の解除にもつながるでしょう。
M&Aを実施する際には、適切な助言会社の選定や自社の収益力・財務状況を把握し、自社の魅力をわかりやすく伝えることが重要です。これらを意識して、理想のM&Aを実現させましょう。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
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