企業研修のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介
公開日:2025.04.30
2025.04.30
更新日:2026.02.19
2026.02.19
昨今、企業研修業界では異業種を含め、大手から小規模事業者まで幅広い参入がみられ、M&Aが活発化するとともに注目されています。
では、具体的に企業研修業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の企業研修業界のM&A事情を解説します。さらに、M&Aのメリットや事例も紹介しているため、企業研修業界でM&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。より良い評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
企業研修業界とは?業界の現状を解説

企業研修業界は、企業の持続的な成長を支える人的資本の育成において、重要な役割を果たしています。
ここでは、業界の基本的な定義と、社会情勢に伴う最新動向を整理して、詳しく解説します。
企業研修業界の定義
企業研修業界とは、企業が従業員に対して行う教育や訓練の機会を、専門的に支援する産業を指します。主な役割は、新入社員から経営幹部までを対象に、階層や職務に応じた適切な学習プログラムを提供することです。
研修会社は独自の教育メソッドを持ち、講師の派遣や教材の作成、eラーニングシステムの構築などを一手に担います。企業の組織力を高めるための戦略的なパートナーとしての側面が強いといえるでしょう。
また、単なる知識の伝達にとどまらず、社員の行動変容やマインドセットの変革を促すことが求められます。近年では、個々の企業の課題に合わせたカスタマイズ型の研修が増えており、その専門性はより高度化しています。
このように、企業の競争力の源泉となる人材の価値を最大化させることが、この業界の存在意義といえます。
企業研修業界の動向
企業研修業界は、働き方の変化や技術革新によって、大きな転換期を迎えている産業です。人的資本経営への注目が高まったことで、企業の教育投資は、以前よりも積極的な姿勢が見られるようになりました。
一方で、少子高齢化による労働力不足の影響から、限られた人材をいかに効率的に育成するかが、共通の課題となっています。DXの進展に伴うリスキリング需要の増加や、管理職候補の早期育成を目的とした選抜研修が活発化しているのが現状です。
さらに、研修の形式も、従来の対面型からデジタルを融合したスタイルへと、急速にシフトしています。また、個人の自律的なキャリア形成を支援する傾向が強まり、一律の教育からパーソナライズされた学習へと、ニーズが細分化しています。
こうした複雑な要望に応えられる、柔軟なサービス提供が、今後の業界成長の鍵を握るといえるでしょう。
企業研修投資の実態
厚生労働省の「能力開発基本調査」によると、令和5年度に正社員に対してOFF-JT(職場外研修)を実施した事業所の割合は、71.4%です。
このうち、正社員に対するOFF-JTの実施主体が「民間教育訓練機関」の比率は41.5%で、自社(75.3%)に次いで高くなっています。「民間教育訓練機関」の比率は2000年代後半以降は上昇傾向にありましたが、2020-21年度の調査では低下しました。
コロナ禍で研修をオンラインに切り替える動きがみられた一方で、外部研修自体を取りやめる企業も一定程度あったことがこの要因として考えられます。
また、同調査によると、OFF-JTに支出した労働者一人当たりの平均費用は1.5万円です。こちらもコロナ禍での一部の対面型研修の中止が2021年までの単価低下の背景として考えられますが、2022年には回復傾向にあります。
OFF-JTを実施した事業所割合
OFF-JTの実施率は新入社員が最多であり、中堅社員、管理職層、正社員以外と続いています。実施した内容は、「新規採用など初任層を対象とする研修」が最多であり、その他は「新たに中堅社員となったものを対象とする研修」「ビジネスマナー等のビジネス基礎知識」です。
サービス・運営形態の多様化
企業研修業界では、従来の対面型研修に加え、オンラインや動画配信など、多様な受講形態が広がっています。特に、eラーニングやLMS(学習管理システム)を活用した形態は、場所を問わず効率的に学べる点が特徴です。
また、短時間で要点を学ぶマイクロラーニングや、仮想空間で没入型体験ができるVR研修も注目を集めています。個々のスキルやレベルに合わせたパーソナライズ化が進み、企業はより柔軟な教育体制を構築できるようになりました。
多様な選択肢の提供は、社員の主体的な学びを促す大きな要因となっています。運営形態の多様化は、研修効果を最大化するだけでなく、教育格差を是正する役割も果たしているといえるでしょう。
高齢化社会の進展
日本の高齢化が進むにつれて、企業研修業界では、シニア層のリスキリングや活用を目的とした研修が増加しています。定年延長や再雇用制度の普及により、ベテラン層が持つ経験を、現代のビジネス環境に再適応させる必要があるためです。
一方で、若手人材の不足を背景に、次世代リーダーを早期に選抜・育成するプログラムの需要も高まっています。限られた人的資源を最大限に活用するため、階層を問わず生産性を向上させる教育が求められている状況です。
企業は、年齢層に応じたキャリア自律支援や、世代間のコミュニケーションを円滑にする研修に注力しています。高齢化の進展は、人材育成の重要性を再認識させる契機となり、業界における新たな成長機会となっていると考えられます。
コロナ禍の影響
コロナ禍では、集合研修の実施が困難となり、業界全体で急速なデジタルシフトが進みました。それまで対面が主流だった研修の多くがオンラインへ移行し、場所を選ばない学習スタイルが一般化しています。
在宅勤務の普及に伴い、セルフマネジメントやオンライン上でのチームビルディングをテーマとした研修の需要が伸びました。物理的な移動が制限されたことで、地方拠点や海外拠点と連携した大規模な同時研修も、容易に実施できるようになったといえるでしょう。
現在は対面形式も復活していますが、オンラインと対面を組み合わせたハイブリッド型研修が主流になりつつあります。この結果、デジタル技術を活用した新たな教育モデルを導入する企業が増えています。
この変化により、買い手は「研修運営能力」だけでなく、「LMS・eラーニングなど再現性の高い仕組み(継続課金・コンテンツ資産)」を持つ企業を評価しやすくなっています。
結果として、研修専業だけでなく、人材サービス・IT・教育プラットフォームからの参入型M&Aが増えやすい構造です。
企業研修業界のM&A動向とは?

本業界の主要企業としては、幅広い内容の企業研修を手がけるTAC、インソース、セルム、ウィルソン・ラーニング ワールドワイドなどが挙げられます。
企業研修業界では、少子高齢化による労働力不足やDXの進展を背景に、活発な再編が行われています。大手企業がノウハウを取り込む動きや、隣接業界からの参入が相次いでいるのが現状です。
同業種間でのM&A
企業研修業界における同業種間のM&Aは、サービスの拡充や顧客基盤の拡大を目的として、活発に行われています。大手研修会社が、特定の専門分野に強みを持つ中堅企業を買収することで、提供できるカリキュラムの幅を広げるケースが目立ちます。
例えば、マネジメント研修に強い企業が、ITスキル研修を手がける会社を傘下に収めることで、ワンストップでの支援が可能になります。講師陣の共有やカリキュラムの共同開発により、運営コストを抑えながら、収益性を高める狙いもあるといえるでしょう。
また、デジタル領域に強みを持つ企業との統合により、対面研修とeラーニングを組み合わせたハイブリッド化が加速しています。競合他社との差別化を図るため、独自の教育メソッドを確保する動きは、今後も続くと予想されます。
異業種間でのM&A
異業種から企業研修業界への参入を目的としたM&Aは、人材サービス業界やIT業界を中心に、増加しています。求人媒体や人材紹介事業を運営する企業が、採用した人材の育成までを一貫して担うために、教育事業を買収する事例が典型的です。
採用から育成、定着支援までをワンストップで提供することで、顧客企業との取引を深める戦略といえるでしょう。これにより、既存の顧客基盤を活かし、効率的に教育サービスを提案することが可能になります。
加えて、システム開発会社が、教育コンテンツを保有する研修会社を買収し、独自のプラットフォームを構築する動きも見られます。技術とノウハウを融合させることで、次世代型の教育サービスを創出することが期待されています。
異業種との融合は、業界に新たな視点をもたらし、さらなる市場の活性化につながっているといえるでしょう。
企業研修業界のM&Aの流れ

企業研修業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。
1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
それぞれ詳しくみていきましょう。
Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。
事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。
その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。
譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。
また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。
M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。
仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。
それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。
弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。
また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。
※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、買い手候補先企業と接触します。
ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。
対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。
売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。
そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。
M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。
買い手にとってDDには、以下のような目的があります。
・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる
その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。
譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]
企業研修業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

企業研修業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・売却益を獲得できる
・個人保証を解消できる
・ブランド力、販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
それぞれ詳しくみていきましょう。
企業研修業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。
一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。
企業研修業界のM&Aのメリット②:売却益を獲得できる
M&Aによって会社もしくは事業の一部を売却すれば、その対価として買い手企業から売却益を得られます。
獲得した売却益は、負債の返済や新規事業の立ち上げ資金、老後の資金など自由に利用できます。リスクのある中で少しずつ利益を得るよりも、M&Aによってまとまった売却益を獲得する方が長期的にメリットとなることもあるでしょう。
企業研修業界のM&Aのメリット③:個人保証を解除できる
中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。
M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。
企業研修業界のM&Aのメリット④:ブランド力・販売力を強化できる
企業研修業界において、大手企業の傘下に入ることは、自社のブランド価値を飛躍的に高める機会となります。知名度の高い買い手企業と一体化することで、自社サービスの信頼性が客観的に裏付けられます。
実績を重視する大手企業や官公庁などの新規顧客に対しても、自信を持って提案できるようになるでしょう。また、買い手企業が全国に有する広範な営業ネットワークを活用できる点は、販売面において極めて大きな利点です。
これまで接点のなかった業界や地域にも、迅速にサービスを展開することが可能になります。さらに、自社が独自に開発した教育メソッドを、大手の強力なプラットフォームを通じて発信できます。
これにより、単独では難しかった市場シェアの急速な拡大が現実的になるでしょう。優れたノウハウと資本力が融合することで、業界内での競争優位性をより強固なものにできます。
企業研修業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
M&Aは、後継者不在に悩む企業にとって、事業を次世代へ確実につなぐための有効な手段となります。長年培ってきた教育ノウハウや顧客との信頼関係は、企業にとって貴重な資産です。第三者へ承継することで、これらを途絶えさせることなく、従業員の雇用も継続して守ることができます。
また、大手資本を背景に得ることは、経営の安定化に大きく寄与します。講師の採用難や景気変動による売上減少といった不安を軽減し、腰を据えた事業運営が可能になります。
加えて、経営者が抱える個人保証から解放される点も、精神的な負担を大きく軽減するメリットです。創業者としての利得を適切に確保しつつ、ハッピーリタイアや新たな事業への挑戦も視野に入れられます。
円滑な事業承継を実現することで、企業の将来に対する不安を取り除き、持続的な成長を支援できます。
企業研修業界のM&Aの相場

企業研修業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売上やブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。
これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。
その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。
企業研修業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
・類似会社比較法
・類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]
企業研修業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

企業研修業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。
・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・早めの行動を心がける
それぞれ詳しく解説します。
企業研修業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する
M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。
真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。
企業研修業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する
売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。
税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。
企業研修業界のM&Aのポイント③:早めの行動を心がける
事業承継に関する解決手段としてM&Aという選択肢を検討している場合、早めの行動が重要です。
M&Aは業界ごとの特性や経済状況に影響を受けやすく、買い手候補が見つかりやすい条件、タイミングが存在します。行動が遅れてしまうと、相手を選ぶ余裕がなくなり、悪条件での取引となってしまう可能性が高まります。
企業研修業界のM&A売却事例6選

ここでは、企業研修業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。
・アガルート×ワクコンサルティング
・アガルート×エーアイアカデミー
・ウィザス×アンガーマネジメント
・ウィザス×吉香
・ブリッジインターナショナル×アイ・ラーニング
・ベネッセHD×Waris
実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。
企業研修業界のM&A売却事例①:アガルート×ワクコンサルティング
アガルートは2024年6月21日付でワクコンサルティングを買収し、全株式を取得しました。
アガルートは、オンライン難関資格予備校「アガルートアカデミー」や医学部受験オンライン予備校「アガルートメディカル」などを運営しており、「教育を中核とする社会的インフラの構築」を目指しています。
ワクコンサルティングは2003年に設立された、製造業コンサルティングおよび企業研修会社です。製造業を中心とするクライアントに対して、コンサルティング、研修サービスを提供しています。
本件M&Aによって、アガルートは今後成長が期待されるB2Bの教育関連事業において製造業向けのコンサルティング・研修の知見を取り入れ、グループ内のコンサルティング事業、研修事業とのクロスセルによるコンサルタントの稼働率向上や研修サービスの売上拡大といったシナジー創出を図っています。
企業研修業界のM&A売却事例②:アガルート×エーアイアカデミー
アガルートは2023年8月31日付でエーアイアカデミーを買収し、全株式を取得しました。
アガルートに関する説明は先述の通りです。個人の学習者向けのサービスを中心に提供しています。
エーアイアカデミーは2016年に設立された、オンラインプログラミング学習サービス「AI Academy Bootcamp」を運営している企業です。近年は、法人向けのAi研修サービスにも注力しています。
本件M&Aによって、アガルートアカデミーではITエンジニア養成講座を販売するなど幅広い事業展開が可能となるため、法人向け研修・セミナー事業とのシナジー創出を図っています。また、エーアイアカデミー代表取締役 谷 一徳氏は、売却後もより一層の事業成長に尽力する為留任しています。
企業研修業界のM&A売却事例③:ウィザス×アンガーマネジメント
ウィザスは、2021年5月19日付でアンガーマネジメントを買収し、全株式を取得しました。
ウィザスは、学習塾事業、日本語教育事業、ICT教育・能力開発事業、企業内研修ポータル事業などを展開している総合教育サービス企業です。
アンガーマネジメントは2015年に設立され、売上高は3億5,000万円です。「アンガーマネジメント」の重要性と必要性を、企業や医療機関を中心にセミナーなどで訴求しています。
本件M&Aによって、ウィザスはアンガーマネジメントのノウハウや経営資源をもとに、社会的ニーズに応えるサービスの提供を目指します。企業や学校、医療や福祉現場での「怒りの感情」を適切にコントロールできる人材育成を支援し、サービスの提供範囲拡大を図っています。
企業研修業界のM&A売却事例④:ウィザス×吉香
ウィザスは、2016年7月21日付で株式会社吉香(きっか)の全株式を取得し、完全子会社化しました。
買い手のウィザスは、学習塾「第一ゼミナール」の運営や、法人向け研修ポータル事業「まなびの窓口」を展開する総合教育サービス企業です。
売り手の吉香は、1979年に設立された老舗の通訳・翻訳および語学研修サービス企業です。官公庁や大手企業を主要顧客とし、皇室の通訳から閣僚級の国際会議まで、極めて専門性の高い言語サービスを提供してきました。法人向けにも、ビジネスシーンに即した質の高い語学教育プログラムを展開している点が強みです。
本件によって、ウィザスは法人向けグローバル人材育成の分野を飛躍的に強化しました。自社の顧客基盤と吉香の高度な教育ノウハウを融合させ、企業の国際化に伴う多様な教育ニーズに対応しています。
企業研修業界のM&A売却事例⑤:ブリッジインターナショナル×アイ・ラーニング
ブリッジインターナショナルは、2021年3月31日付でアイ・ラーニングを完全子会社化しました。
ブリッジインターナショナルは2002年に設立された企業で、インサイドセールスなどのアウトソーシングサービスを展開している企業です。
アイ・ラーニングは1990年に日本アイ・ビー・エムの研修子会社として設立され、新入社員向け研修あるいは営業職向け研修プログラムを展開しています。近年は、DX人材育成やデザインシンキング研修など、新しい人財育成を支援する研修プログラムの構築と提供に強みを発揮しています。
このM&Aによって、ブリッジインターナショナルは、これまでのインサイドセールス関連やオンライン営業研修などに加えて、アイ・ラーニングの研修プログラムを幅広く提供し、研修サービス分野でのメニューを強化する見込みです。
企業研修業界のM&A売却事例⑥:ベネッセHD×Waris
ベネッセホールディングスは、2023年6月30日付で株式会社Waris(ワリス)を買収し、連結子会社化しました。
買い手のベネッセホールディングスは、教育・介護事業を展開する大手グループです。近年は、オンライン学習プラットフォーム「Udemy」の国内展開など、社会人向けのリスキリング事業を強化しています。
売り手のWarisは2013年に設立された、女性のキャリア支援や人材紹介、リスキリング支援を行う企業です。フリーランス人材のマッチングに加え、企業向けに「女性管理職の育成」や「DE&I(多様性の受容)」をテーマにした研修を提供している点が強みです。
本件M&Aにより、ベネッセは社会人教育のラインナップにWarisの専門性を加えました。多様な働き方を支援する研修サービスを拡充し、法人の人的資本経営を支える体制を強化しています。
企業研修業界のM&Aに関するよくある質問

企業研修業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。
理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。
企業研修業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?
もちろん全国問わず、M&Aは可能です。
全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。
企業研修業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?
いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。
業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。
企業研修業界のM&Aに関するよくある質問③:従業員にはどのタイミングで話すべきですか?
勤務している会社がM&Aによって売却されることは、従業員にとって驚くことで不安を招いてしまいます。自身がこの先どうなるのかという不安に対して、明確に回答できない状態は従業員に不信感を与え、その結果退職者が出るかもしれません。
従業員にはM&Aが成立する直前まで話さず、極秘にする必要がある場合もあります。
まとめ

企業研修業界では、異業種を含めた大手から小規模事業者まで幅広い参入が多くなっています。コロナ禍による企業研修形態の複雑化や多岐にわたる研修内容に対応するため、M&Aを実施するケースが多くなっています。
企業研修業界でM&Aを実施すれば、従業員の雇用を確保できます。また、売却益を獲得でき、個人保証の解除も可能となるでしょう。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。より良い評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
まずは一度、弊社の無料相談サービスをご利用ください。
関連記事
-
業界別M&A
引っ越し業者のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
2026.02.24
2026.02.24
-
業界別M&A
住宅設備機器業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
2026.02.24
2026.02.24
-
業界別M&A
レジャー施設のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
2026.02.24
2026.02.24
-
業界別M&A
塗装工事会社のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
2026.02.24
2026.02.24
-
業界別M&A
眼科のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
2026.02.24
2026.02.24
-
業界別M&A
英会話教室のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!
2026.02.24
2026.02.24