警備保障業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介
公開日:2025.04.10
2025.04.10
更新日:2026.02.01
2026.02.01
昨今、警備保障業界は治安の悪化よって需要が高まっており、M&A取引が活発に行われるようになっています。
警備保障業界では、労働力不足の深刻化や技術の進歩に対応するために、M&Aが有効な解決手段として注目されています。
では、具体的に警備保障業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新の警備保障業界のM&A事情を解説します。さらに、警備保障業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、M&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。
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警備保障業界とは?業界の現状を解説

警備保障業界は、社会の安全を支える重要なインフラです。ここでは業界の定義や最新の動向を分かりやすく解説します。
警備保障業界の定義
警備保障業界とは、警備業法に基づき、契約者の安全を提供するサービス産業です。主な役割は、契約先の生命・身体・財産に対する侵害を未然に防ぐことにあります。業務内容に応じて、1号から4号までの4つの区分に分類される点が特徴です。
1号業務は、施設内での盗難や火災を警戒する施設警備が該当します。2号業務は、工事現場での交通誘導やイベント時の雑踏警備を指します。3号業務は、現金や貴金属などの貴重品運搬を担い、4号業務はボディガードとしての身辺警護を行います。
近年では、これらの有人警備に加え、センサーやカメラを用いた機械警備が、1号業務の主流となっています。警察活動を補完する「民間の治安維持組織」として、社会インフラの一翼を担う重要な存在です。
人々の防犯意識が高まる中で、提供されるサービスは高度化しており、最新技術と人の力を組み合わせた柔軟な対応が、各企業に求められています。
警備保障業界の動向
現在の警備保障業界は、テクノロジーの活用を背景に大きな転換期を迎えています。社会情勢の変化に伴い需要は拡大している一方で、深刻な人手不足が業界全体の共通課題となっています。特に若手人材の確保が難しく、現場スタッフの高齢化は経営上の大きなリスクです。
こうした課題への対応として、受注制限の実施や適正な単価交渉が急務となっています。同時に、AI搭載カメラやドローンを活用した機械警備への移行も急速に進んでいます。従来の「労働集約型」モデルから、技術を活用した「省人化モデル」への転換が進んでいる状況です。
また、従業員の処遇改善やキャリアアップ支援に対する要請も強まっています。質の高い安全サービスを継続的に提供するためには、優秀な人材の定着が不可欠だからです。
こうした業界の変化に柔軟に対応し、DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進できる企業こそが、顧客からの信頼を着実に獲得していくでしょう。
警備保障業界の市場規模
警察庁生活安全局生活安全企画課「令和5年度における警備業の概況」によると、令和5年度の警備業の売上高は、3兆3,059億5,009万円でした。
警備業には、施設警備の1号、雑踏・交通誘導警備の2号、運搬警備の3号、身辺警備の4号の4種類が存在しており、売上のほとんどを1・2号が占めている状態です。
警備業界は治安の悪化に伴い需要が増加しているものの、市場規模は縮小傾向にあります。さらに、警備業者数は増加しているにもかかわらず、高齢化が目立ち、若手の労働力不足に悩まされています。そこには、長時間労働や低賃金といった待遇の悪さが背景にあると考えられるでしょう。
警備保障業界が含まれる警備業界は、大手事業者による寡占度が低く、分散型の構造となっています。業界で首位のセコムの売上高は例年2割程度であり、2位の綜合警備保障(ALSOK)でも1割程度と、両社を足しても3割程度にしかなりません。
警備業界ではAIや機械の導入が進み、AI搭載カメラや5G通信技術を活用した業務効率化が進行中です。セキュリティ面ではスマートロックシステムの普及も進み、特にコロナ禍をきっかけに市場が拡大しました。全体として市場が縮小している中、好調を維持しています。
2020〜2021年は新型コロナウイルスの影響で売上が減少しましたが、2022年には経済回復により持ち直しています。警備業者数は2020年に1万人を突破し、増加傾向が続いている状態です。今後も技術革新による省人化・コスト削減が求められる中、業界の構造変化が進むと考えられるでしょう。
サービス・運営形態の多様化
近年の警備保障業界では、運営形態がこれまでにないスピードで変化しています。最新技術の導入により、単なる「見守り」にとどまらないサービス提供が可能となりました。
従来の有人警備に依存した手法から、高精度なセンサーやAIカメラを活用したスマート警備への移行が一般化しています。DXの推進は現場の在り方を変え、警備ログのデジタル化によって、データに基づく効率的なスタッフ配置が実現しました。
無駄な待機時間を削減し、必要な場所にのみ人員を配置する手法は、収益性の改善に直結しています。さらに、少子高齢化を背景とした高齢者の見守りなど、生活支援領域への進出も活発化しています。
個人顧客のライフスタイルに合わせたオーダーメイド型プランも増えており、利便性と安全性を高い水準で両立させる工夫が求められています。
このように、有人と機械を高度に組み合わせ、顧客の多様なニーズに柔軟に応える姿勢が、今後の企業成長を左右するでしょう。
高齢化社会の進展
日本の高齢化社会の進展は、警備業界に対して需要と供給の両面で大きな影響を与えています。需要面では、独居高齢者世帯の増加により、緊急駆けつけサービスや日常的な見守りニーズが急速に拡大しています。
社会インフラとしての警備の役割は、ますます重要性を増しています。一方、供給面では警備員の高齢化が、経営上の大きなボトルネックとなっています。若手人材の確保が難しい中、ベテラン層の体力的負担をいかに軽減し、長期的に活躍してもらうかが喫緊の課題です。
対策としては、定年後の雇用を維持しつつ、自動化技術を併用して現場の負荷を軽減する取り組みが有効です。ウェアラブルデバイスを活用した健康管理や、重い装備を補助するアシストスーツの導入など、人への投資も欠かせません。
技術によって人を補完し、持続可能な体制を早期に構築できるかどうかが、高齢化の波を乗り越えるための重要な経営判断となるでしょう。
コロナ禍の影響
コロナ禍という未曾有の危機は、警備業界のビジネスモデルに新たな視点をもたらしました。感染症対策とセキュリティを融合させた業務が一般化し、検温業務や入館制限といった「新しい安全」の提供が定着しています。
イベントの中止により一時的な減収を余儀なくされた企業もありましたが、一方で非接触ニーズによる特需も生まれました。特に、物理的な接触を避けるための機械警備へのシフトは、この数年で急速に加速しています。
また、景気変動の影響を受けにくい業界としての安定性が再評価され、投資対象としての注目度も高まりました。現在では、より効率的かつ衛生的な警備体制の構築が、業界標準となりつつあります。
人々に安心感を与えるための視覚的な警備に加え、目に見えないリスクへの対応力も求められるようになりました。こうした急激な変化を好機と捉え、従来の枠組みにとらわれない柔軟な経営方針へ舵を切ることが、ポストコロナ時代の成長には不可欠といえるでしょう。
警備保障業界のM&A動向とは?

深刻な人手不足を背景に、業界ではM&Aが活発です。人材確保やエリア拡大を目的とした提携が増えています。
同業種間でのM&A
警備保障業界における同業種間のM&Aは、主に「エリア拡大」と「人材確保」を目的として活発化しています。警備業は地域密着型の性格が強く、新たな地域へ進出する際には、ゼロから拠点を構築するよりも、既存企業を買収する方が効率的です。
拠点を統合することで、現場への警備員配置を最適化し、稼働率を向上させられるメリットがあります。特に、有資格者をまとめて確保できる点は、大規模案件の受注を目指す企業にとって大きな魅力となるでしょう。
複数の拠点を束ねることで、制服や装備品の調達コストを削減し、スケールメリットを享受することも可能です。さらに、管理部門や司令センターを共通化すれば、収益構造の改善も期待できます。
人件費や固定費の高騰が続く中、効率的な運営体制を構築する動きは今後も継続すると見込まれます。競争が激化する市場で生き残るために、組織規模を拡大し、経営基盤を強化する戦略は、極めて有効な選択肢といえます。
異業種間でのM&A
近年、他業界から警備保障業界への参入を目的としたM&Aが増加傾向にあります。代表的な事例としては、ビルメンテナンス業や不動産管理会社による警備会社の買収が挙げられます。清掃や設備管理に警備を組み合わせ、ワンストップでサービスを提供することで、顧客の利便性を高める狙いがあります。
また、IT企業やセキュリティ機器メーカーが、自社の最新技術を実装・検証する場として警備会社を傘下に収める例も目立ちます。高精度なAIカメラや顔認証システムを実際の現場で運用することで、機械警備の高度化を図る戦略です。
既存の顧客基盤に対して、これまでにない付加価値の高いセキュリティプランを提案できる点は、大きな強みといえるでしょう。こうした異業種間の連携は、事業の多角化にとどまらず、従来の慣習が残る警備業界に新しい発想をもたらす契機となります。
他業種のノウハウや最新の経営手法を取り入れることで、従来の枠組みを超えた革新的なサービスが生まれる可能性を秘めています。
警備保障業界のM&Aの流れ

警備保障業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。
1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
それぞれ詳しくみていきましょう。
Step1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。
事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。
その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。
譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。
また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。
M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。
仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。
それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。
弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。
また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。
※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。
Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領
次に、買い手候補先企業と接触します。
ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。
対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。
売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。
そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。
Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング
意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。
M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。
買い手にとってDDには、以下のような目的があります。
・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる
その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。
譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]
警備保障業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

警備保障業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。
・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・経営の安定化が図れる
・個人保証を解除できる
・ブランド力、販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
それぞれ詳しくみていきましょう。
警備保障業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。
一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。
警備保障業界のM&Aのメリット②:経営の安定化が図れる
M&Aを実施して大手企業の参加となった場合、今まで経営難に陥っていた中小企業も経営の安定化が図れるようになるでしょう。
大手企業の参加となると、ブランド力の向上や、大手企業が保有するノウハウや資金を活用できるようになります。シナジー効果が見込まれる企業とM&Aを実施すれば、事業拡大や企業の成長につながるでしょう。
警備保障業界のM&Aのメリット③:個人保証を解除できる
中小企業においては、金融機関から借入れをする際に経営者個人が個人保証を行うケースが一般的です。経営者保証のガイドラインが策定されたものの、いまだに解消されていないのが現状です。
M&Aを行うと、売り手の借入れ返済義務を買い手が引き継ぐ形となるため、金融機関に対して買い手と協力して、売り手である経営者の個人保証を解除する手続きを行います。
警備保障業界のM&Aのメリット④:ブランド力、販売力を強化できる
大手グループの傘下に入ることで得られるブランド力の向上は、中堅・中小警備会社にとって計り知れないメリットです。警備業の本質は「信頼」にあり、知名度の高い企業の看板を掲げることは、新規契約を獲得するうえで極めて強力な武器となります。
特に、公共案件や大規模商業施設の入札においては、企業としての信頼性が有利に働き、受注率の向上が期待できます。また、買い手企業が全国に展開する広範な営業網を活用できる点も見逃せません。
自社単独ではアプローチが難しかった地域や大手クライアントに対しても、グループのネットワークを通じてサービス提供が可能となります。
さらに、企業の信用力が高まれば、採用活動においても大きな優位性を確保できます。大手ブランドの安心感は、優秀な人材や有資格者を惹きつけ、慢性的な人手不足を解消する糸口となるでしょう。
投資負担を最小限に抑えつつ、グループの経営資源を活用して売上拡大を図れるこのスキームは、成長を志向する企業にとって理想的な選択肢といえます。
警備保障業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる
M&Aは、後継者不在の問題に直面している経営者にとって、従業員の雇用と自社の歴史を守るための有効な選択肢です。親族や社内に適任者がいない場合でも、信頼できる第三者に事業を託すことで、廃業という最悪の事態を回避できます。
長年築き上げてきた技術や顧客との信頼関係を次世代へ引き継ぐことは、経営者としての最後の責務といえるでしょう。買い手企業の資本力や管理体制を取り入れることで、経営環境の安定化も図れます。
中小企業特有の脆弱な財務基盤を強化し、不測の事態にも耐えうる組織へと進化させることが可能です。また、多くの経営者が課題として抱える「個人保証」の解除が期待できる点も、大きな利点といえます。
金融機関からの借入金に対する保証責任から解放されることで、心身の負担を大幅に軽減し、円満なリタイアを実現できるでしょう。
株式譲渡によって得られる譲渡益は、引退後の生活資金や新たな事業への投資資金として活用でき、経営者自身のセカンドライフを支える重要な基盤となります。
警備保障業界のM&Aの相場

警備保障業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売り上げやブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。
これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。
その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。
警備保障業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。
・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ
インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。
理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。
本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。
マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。
・類似会社比較法
・類似取引比較法
類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。
具体的には、以下のように算定します。
EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)
EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。
また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。
企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。
企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値
第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。
なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。
しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。
M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]
また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]
警備保障業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

警備保障業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。
・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・アピールできるポイントを準備しておく
それぞれ詳しく解説します。
警備保障業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する
M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。
真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。
警備保障業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する
売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。
税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。
警備保障業界のM&Aのポイント③:アピールできるポイントを準備しておく
よりよい条件でM&Aを実施するには、企業としてアピールできる魅力を準備しておくことが重要です。
先述の通り、警備保障業界は深刻な人材不足に陥っているため、ある程度のスキルのある人材を欲しがる企業は多いでしょう。また、地域性や顧客リストなども、買い手が選定するうえで重要なポイントとなります。
警備保障業界のM&A売却事例6選

ここでは、警備保障業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。
・東洋テック×関西ユナイトプロテクション
・トスネット×アイワ警備保障
・セントラル警備保障×東亜警備保障
・セコム×セノン
・ALSOK×日本ガード
・トスネット×アーバンセキュリティ
実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。
警備保障業界のM&A売却事例①:東洋テック×関西ユナイトプロテクション
東洋テックは、2024年6月3日付で関西ユナイトプロテクションを買収し、全株式を取得しました。
東洋テックは、セキュリティサービスとビル総合管理をコア業務とし、コールセンター、防犯機器・省エネサービス販売、防災サービスなどを展開しています。
関西ユナイトプロテクションは1978年に設立され、売上高は11億600万円ほどです。イベント警備や施設警備を行っており、イベント警備に関する高度なスキルやノウハウを有しています。
本件M&Aによって、東洋テックはサービスラインナップの拡充を図り、顧客のニーズにあったサービスの提供を目指します。
警備保障業界のM&A売却事例②:トスネット×アイワ警備保障
トスネットは、2024年4月9日付でアイワ警備保障を買収し、全株式を取得しました。
トスネットは、警備事業、電源供給事業、メーリングサービス事業、人材派遣事業、ビルメンテナンス事業を行っている企業です。現在、トスネットグループはトスネット及び16社で構成されています。
アイワ警備保障は1992年に設立され、売上高は4億3,300万円ほどです。警備業を行っており、千葉県内で官公庁、病院、税務署などの施設警備を中心に交通誘導警備などを幅広く展開しています。
本件M&Aによって、トスネットは首都圏の子会社と連携させるとともに、事業拡大を図っています。
警備保障業界のM&A売却事例③:セントラル警備保障×東亜警備保障
セントラル警備保障は、2023年4月26日付で東亜警備保障を買収し、大島スミ子氏らから74.7%の株式を取得しました。
セントラル警備保障は、施設警備、防火・防災の安全管理、要人身辺警護等の常駐警備、オンラインセキュリティ、ホームセキュリティ等の機械警備を行っている企業です。
東亜警備保障は1970年に設立され、売上高は9億500万円ほどです。栃木県内を中心に常駐警備、機械警備、運輸警備などを展開しています。
本件M&Aによって、セントラル警備保障は地域補完子会社の1社として直接支社・事業部の無いエリアの取り込みを図るとともに、機械警備事業の強化を目指しています。
警備保障業界のM&A売却事例④:セコム×セノン
セコムは、2017年7月1日付でセノンを買収し、子会社化を完了しました。
買い手企業のセコムは、国内首位の警備保障会社です。オンラインセキュリティを核に、防災や医療など幅広い社会信頼インフラを提供しています。
売り手企業のセノンは1969年に設立されました。直近の売上高は約260億円にのぼります。同社は全国の主要空港で、保安検査や常駐警備を専門に手がけてきました。特に空港警備の分野では、高度な専門性と豊富な実績を有しています。
本件によってセコムは、強みである機械警備とセノンの有人警備を融合させます。これにより空港などの大型施設向けサービスの、質的な向上につながるでしょう。
警備保障業界のM&A売却事例⑤:ALSOK×日本ガード
綜合警備保障は、2020年10月1日付で日本ガードを買収し、連結子会社化しました。
買い手企業の綜合警備保障は、ALSOKのブランドで知られる業界大手です。機械警備や警備輸送を中心に、全国規模で防犯サービスを展開しています。
売り手企業の日本ガードは1966年に設立されました。売上高は約50億円規模を誇ります。岐阜県を拠点として、地域密着型の機械警備や常駐警備を提供してきました。県内の金融機関や自治体から、非常に厚い信頼を得ている優良企業です。
本件M&Aにより、ALSOKは岐阜エリアでのシェアを一気に拡大させます。両社の経営資源を統合し、地域に根ざした守りの体制がさらに強まるでしょう。
警備保障業界のM&A売却事例⑥:トスネット×アーバンセキュリティ
トスネットは、2021年12月1日付でアーバンセキュリティを買収し、完全子会社化しました。
買い手企業のトスネットは、交通誘導警備を主力とする企業です。東北地方から事業を広げ、現在は全国規模での拠点展開を加速させています。
売り手企業のアーバンセキュリティは、2003年に設立されました。東京都内に拠点を置き、常駐警備や身辺警護、イベント警備を行っています。売上高は約10億円に達し、首都圏の優良な顧客基盤を持っている点が特徴です。質の高い警備員の育成にも定評があります。
この買収を通じ、トスネットは首都圏での営業体制を大幅に強化しました。グループ内の各社と連携し、受注機会の増大が予測されています。
警備保障業界のM&Aに関するよくある質問

警備保障業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。
理想の取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。
警備保障業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?
もちろん全国問わず、M&Aは可能です。
全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。
警備保障業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?
いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。
業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。
警備保障業界のM&Aに関するよくある質問③:赤字や債務超過の場合でも売却はできますか?
買い手候補は見つかりづらいかもしれませんが、可能性がゼロというわけではありません。
数字的には赤字でも、ある事業や地域の観点で見ると収益性や資産性が認められる場合もあれば、保有している技術やノウハウに魅力を感じて買い手候補が見つかるケースもあります。
まとめ

警備保障業界では、労働力不足の深刻化や技術の進歩へ対応する手段として、M&Aが注目されています。
警備保障業界でM&Aを実施すれば、経営の安定化が期待でき、後継者問題の解決にもつながるでしょう。
M&Aを実施する際には、適切な助言会社の選定や自社の収益力・財務状況の把握、アピールポイントの事前準備が重要です。これらを意識して、理想のM&Aを実現させましょう。
オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。
また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。
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