ドラッグストア業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

2025.03.07

公開日:2025.03.07

2025.03.07

2026.01.01

更新日:2026.01.01

2026.01.01

ドラッグストア業界のM&A事情を詳しく解説!業界動向や事例もあわせて紹介

近年のドラッグストア業界では、食品や日用品の取扱いが拡大しています。スーパーやコンビニエンスストアとの競争が激化する中で、M&Aの動きも活発化しています。

ドラッグストア業界では、医薬品や化粧品のみならず食品や日用品の取扱いが増えたことにより、食品スーパーやコンビニエンスストアと競合する状況がさらに進展し、M&Aが活発に行われるようになっています。

ドラッグストア業界では、競争の激化や、併設店舗が増えている調剤薬局の薬剤師の獲得競争に直面しており、M&Aが有効な解決手段として注目されています。

では、具体的にドラッグストア業界のM&A事情はどうなっているのでしょうか。本記事では、最新のドラッグストア業界のM&A事情を解説します。さらに、ドラッグストア業界におけるM&Aのメリットや事例も紹介しているため、ドラッグストア業界でM&Aを考えている方はぜひ参考にしてください。

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ドラッグストア業界とは?業界の現状を解説

ドラッグストア業界の動向

ドラッグストア業界は、地域の健康を支える生活インフラへと進化しています。医薬品に加え、現在では食品の取扱いも一般化しました。一方で、物価高騰や人手不足といった課題が、経営に大きな影響を与えています。

また、大手企業による市場集約が進み、地方企業を中心とした統合の動きが加速しています。今後は、他業態との境界が曖昧になる中で、差別化につながる独自の専門性を明確に打ち出す姿勢が求められるでしょう。

ドラッグストア業界の定義

ドラッグストア業界とは、一般用医薬品や化粧品を中心に、日用雑貨や食品などを幅広く取り扱う小売業の一形態です。法律に基づき、薬剤師や登録販売者が常駐している点が、他の小売業との大きな違いといえます。

単に商品を陳列・販売するだけでなく、専門知識を持つスタッフによる健康相談や、適切な医薬品の選択に関する助言も行っています。店舗の存在意義は、消費者が自らの健康を管理する「セルフメディケーション」を支援する点にあります。

軽度の体調不良の際に、医療機関を受診する前の相談先として、地域に密着した役割を果たしています。近年では調剤薬局を併設する店舗も一般的となり、処方箋に基づく調剤業務も重要な機能の一つです。

このように、医療と物販が融合した独自のビジネスモデルを確立している点が、ドラッグストア業界の大きな特徴です。ドラッグストアは、単なる買い物の場にとどまらず、地域住民の健康寿命延伸を支えるパートナーとして進化を続けています。

ドラッグストア業界の動向

昨今のドラッグストア業界では、DXの進展やビジネスモデルの変化により、大きな転換期を迎えています。特に調剤併設型店舗の増加は顕著で、従来の物販中心の業態から、医療・介護サービスへと軸足を移す動きが鮮明になっています。

一方で、原材料費の高騰や物価上昇に伴う運営コストの増大に加え、深刻な人手不足が経営上の大きな課題として顕在化しています。

また、他業態との垣根が低下している点も、近年の顕著な変化の一つです。生き残りを図るためには、他社にはない独自性や専門性を明確に打ち出す必要性が高まっています。

このような競争環境の中で、大手チェーンによる市場集約や地方企業の統合が進んでいます。経営効率化を目的に、IT投資や物流網の再構築に取り組む企業も増加しています。業界全体として、従来の枠組みにとらわれない新たな価値提供を模索する段階に入っているといえるでしょう。

ドラッグストア業界の市場規模

日本チェーンドラッグストア協会によると、2024年のドラッグストアの商品販売額は、約10兆円となり、前年比9.0%の成長を記録しています。

食品や日用品の取扱いの増加もあり、市場規模は右肩上がりです。

ドラッグストアは、食品や日用品の価格を下げて集客し、化粧品や医薬品などで利益を確保するビジネスモデルを構築しています。全体的に商品販売額は増加しており、中でも食品や家庭用品は好調を維持しています。

しかし、ドラッグストア業界では調剤薬局を併設する店舗が増えており、そこで働く薬剤師の獲得競争に直面しています。薬剤師にとっては、専門領域である調剤関連業務に集中できる調剤薬局と異なり、レジ打ち等を含む他の業務も併任しなければならないため、就職先として敬遠されやすい傾向にあります。

さらに、食品や日用品などで集客していることを考えると、特に食品を中心に、食品スーパーやコンビニエンスストアとの競合も激化するでしょう。

サービス・運営形態の多様化

現在のドラッグストアは、多様化する顧客ニーズに対応するため、店舗形態の多角化を急速に進めています。中でも、食品の取扱いを大幅に拡充したフード&ドラッグ形式は、スーパーの代替として広く定着しました。近年では生鮮食品を扱う店舗も登場し、消費者から高い支持を得ています。24時間営業の宅配サービスの導入など、利便性を追求する動きも顕著です。

調剤機能の強化も、運営形態の変化における重要な柱といえるでしょう。処方箋の受付にとどまらず、在宅訪問による服薬指導やオンライン服薬指導など、新たなサービスが次々と展開されています。また、アプリを活用したデジタル販促やキャッシュレス決済の普及といったIT化も、顧客接点の強化に寄与しています。

さらに、健康測定コーナーの設置や管理栄養士による食事指導など、健康維持に特化した付加価値サービスも増加しています。今後も時代の変化に対応しながら、ドラッグストアのサービス形態は継続的に進化していくでしょう。

高齢化社会の進展

超高齢化社会を迎えた日本において、ドラッグストアが果たすべき社会的役割は、ますます重要になっています。特に在宅医療や訪問調剤のニーズ増加を受け、地域に密着した店舗が対応するケースが増加しています。

高齢者の日常生活を支えるための相談業務は、すでに日常的な光景となりました。シニア層向けのサービスとしては、カウンセリング販売や健康寿命の延伸を目的とした予防啓発が挙げられます。薬の飲み合わせ確認や栄養補助食品に関する助言を通じて、発症前段階での健康管理を重視する動きが広がっています。

また、バリアフリーに配慮した店舗設計や少量パック商品の拡充など、高齢者が買い物をしやすい環境整備も進められています。ドラッグストアは、地域の高齢者にとって最も身近な健康相談の窓口となっています。

一方で、こうしたサービス水準を維持するためには、薬剤師や登録販売者といった専門人材の確保が不可欠です。人手不足が深刻化する中、優秀な人材をいかに確保・育成できるかが、今後の経営を左右する重要な要素となるでしょう。

コロナ禍の影響

新型コロナウイルスの流行は、ドラッグストア業界の重要性を改めて浮き彫りにしました。社会が混乱する中でも、生活必需品を安定的に供給し続ける役割を果たしたといえるでしょう。

この期間を契機に、業界内のデジタル化は一気に加速しました。混雑を回避するためのモバイルオーダーや、非接触決済を可能にするキャッシュレス化の導入が急速に進んだのです。

また、ECサイトでの注文やデリバリーサービスの活用も一般化し、新たな購買体験が定着しました。消費者の健康意識がこれまで以上に高まったことで、免疫力向上を目的としたサプリメントなどの需要も定着しています。

一方で、訪日客の激減によるインバウンド需要の一時的な消失は、都市部を中心とした店舗に大きな打撃を与えました。現在は回復基調にあるものの、特定の需要に依存しない強固な経営体質への転換を促すきっかけにもなりました。

コロナ禍は、ドラッグストア業界にとって大きな試練であると同時に、変革と進化を促す重要な転機となったのです。

ドラッグストア業界のM&A動向とは?

ドラッグストア業界のM&A動向

ドラッグストア業界では中小規模の業績が厳しく、大手の傘下となるケースが多くなっています。好条件な出店場所も限られており、資金力・経営体力に劣る中小規模のドラッグストアは事業拡大が難しい状態です。

それを見計らった大手企業は、シェア拡大を狙って中小規模のドラッグストアとM&Aを実施するようになりました。未進出のエリアに店舗を拡大できれば、事業エリアの拡張を実現できるでしょう。

市場のパイが限られている中では、新規に出店して消費者を奪い合うよりも、既存店舗を買収して競争力を上げる方が効率的です。

また、異業種間のM&Aも増加傾向にあります。店舗販売のイメージが強いドラッグストアで、オンラインショップや通販などによる顧客の拡大を目指したEC業界とのM&Aや、プライベートブランドの展開を目的とした美容系企業などとのM&A、販売システム構築を目的としたIT企業とのM&Aなど、さまざまな業種との取引によって、シナジー効果の発揮に期待できるでしょう。

ドラッグストア業界と類似している業界として、調剤薬局業界のM&Aについても下記記事で紹介しています。
調剤薬局業界のM&A|調剤薬局業界のM&A動向やメリットも解説!

同業種間でのM&A

同業種間におけるM&Aは、ドラッグストア業界再編の中心的な動きであり、大手企業による地方企業の買収が目立ちます。最大の目的はドミナント戦略の強化で、特定地域に集中的に出店することで、配送効率やブランド認知度を一気に高める狙いがあります。

加えて、未進出エリアに拠点を持つ企業を取得すれば、新規出店を一から行うよりも短期間で事業規模を拡大できます。市場が成熟し、好立地の確保が難しくなる中では、極めて効率的な成長戦略といえるでしょう。

また、事業規模の拡大は仕入れ交渉において大きな優位性をもたらします。取扱商品のボリュームが増えることで、メーカーからの仕入れ条件を改善し、利益率の向上が期待できます。さらに、物流網や基幹システムの共通化により、運営コストの削減も可能となります。

業界の上位集中化は今後も進行し、数社の大手グループへ集約される可能性は極めて高いと考えられます。調剤報酬改定やコスト上昇の影響もあり、中小規模のドラッグストアが単独で生き残る難易度は年々高まっています。

こうした背景から、事業売却を検討するオーナーは増加しており、買い手企業とのマッチングも活発化しています。

異業種間でのM&A

近年では、ドラッグストア業界を舞台とした異業種間M&Aも増加傾向にあります。食品スーパーやコンビニエンスストアが、医薬品販売のノウハウを持つドラッグストアをグループに迎え入れる事例がその代表例です。調剤機能や専門性の高い医薬品売場を自社店舗に組み込むことで、集客力の向上を図っています。

また、EC事業者やテクノロジー企業との連携も重要な動きです。オンライン販売に強みを持つ企業と組むことで、実店舗とECを融合させたオムニチャネル戦略を一層加速させています。

さらに、美容関連企業やヘルスケア機器メーカーとの提携により、プライベートブランドや独自商品の開発を強化する動きも活発です。専門性の異なる知見を掛け合わせることで、他社との差別化につながる高付加価値商品の展開が可能となります。

異業種との融合は、単なる売上拡大にとどまらず、事業ポートフォリオの多様化にも寄与します。変化の激しい市場環境において、異なる強みを組み合わせる戦略は、今後のドラッグストア業界における重要なスタンダードとなっていくでしょう。

ドラッグストア業界のM&Aの流れ

ドラッグストア業界のM&Aの流れ

ドラッグストア業界におけるM&Aの流れは、大きく分けて下記の3つのステップから構成されます。

1.M&Aの事前準備、助言会社の選定
2.買い手候補先企業との接触、意向表明書受領
3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング

それぞれ詳しくみていきましょう。

Step1.M&Aの事前準備、M&A助言会社の選定

まず、M&Aの事前準備とM&A助言会社を選定します。

事前準備として、M&A助言会社と秘密保持契約を締結し、初期的な資料を開示します。秘密保持契約とは、自社の秘密情報を他社に開示する場合に、その情報を秘密に保持することを締結する契約です。

その上で、売却戦略をM&A助言会社と策定し、買い手候補先企業を優先順位ごとに並べたロングリスト(※1)を作成します。

譲渡の目的を満たすストラクチャー(※2)の検討や、譲渡完了に至るまでの全体のスケジュールについても事前準備の段階で検討します。

また、この段階でM&A助言会社とエージェント契約を締結します。

M&A助言会社を選定する際に注意しておきたいのが、仲介とFA(フィナンシャル・アドバイザー)の違いです。

仲介とは、いわゆるマッチングサービスのことで、売り手と買い手の双方とそれぞれ仲介契約を締結します。M&Aの当事者双方から依頼を受けているため、いずれか一方の利益のみを優先的に取り扱うことはできず、双方の意向を一元的に把握し、双方の共通の目的であるM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。また、手数料は売り手と買い手の双方から受領します。

それに対してFAとは、M&Aを実行するためのアドバイスを提供するサービスのことで、M&Aの当事者一方のみから依頼を受けます。M&Aの相手方(買い手候補先企業を含む。)に対して、依頼者に対して提供するのと同様の業務を提供することはありません。M&Aの当事者一方のみから依頼を受けているため、依頼者の意向を踏まえて、依頼者にとって有利な条件でのM&Aの成立を目指し、助言や調整を行います。

弊社では、売り手のみと契約を締結してM&Aを支援する専属エージェントサービス(売り手特化型FAサービス)を提供しており、手数料は依頼者である売り手のみから受領し、売り手の利益を最大化することを目指します。

また、譲渡戦略の策定と並行して、買い手候補先企業へ開示する資料準備も進めます。M&Aプロセスの初期に買い手候補先企業に対して開示する資料には、匿名の企業概要書(ティーザー(※3))、インフォメーション・パッケージ(※4)があります。

※1 ロングリスト:一定の条件で絞り込んだ買い手候補先の企業をまとめたリストのこと。
※2 ストラクチャー:M&Aを実行するための手段や方法のこと。
※3 ティーザー:匿名の企業概要書で、通常1枚から2枚で構成される資料のこと。
※4 インフォメーション・パッケージ:買い手候補先企業がM&Aを検討する際の参考資料。対象会社(事業)の魅力を伝え、買い手候補先企業が企業価値評価を実施できることを目的に作成される。

Step2.買い手候補との接触、意向表明受領~

次に、買い手候補先企業と接触します。

ロングリストに基づき、M&A助言会社が買い手候補先企業と接触し、ティーザーを開示します。その上で関心を示す相手に対して、秘密保持契約を締結した上でインフォメーション・パッケージを開示します。

対象会社(事業)の譲受を希望する買い手候補先企業は、売り手に対して意向表明書を提出します。意向表明書には、譲渡価格の水準や取引の前提条件、取引後の対象会社の運用方針などが記載されます。売り手はこれを検討・比較し、受け入れ(基本合意)可能かを判断します。

売り手においては、後述する詳細調査(デュー・デリジェンス:DD)のプロセスにおいて、対象会社の秘密情報が買い手候補先企業に開示されることになるため、DDを受け入れる前に納得感の得られる取引条件であることを確認することが非常に重要です。買い手候補先企業においても、DDにおける専門家起用の費用負担や多大な労力が生じるため、この段階で独占交渉権を求めることが一般的です。

そのため、基本合意を締結し、守秘義務や独占交渉権などを取り決めた上で、次のステップに進むことになります。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約締結・クロージング~

意向表明書を受理して基本合意書の締結をしたら、デュー・デリジェンス(DD)と呼ばれる詳細調査と最終契約締結・クロージングです。

M&Aにおいては、売り手と買い手との間に、情報の非対称性が必然的に生じます。この非対称性をできるだけ解消するために、買い手が実施する対象企業への調査がDDです。

買い手にとってDDには、以下のような目的があります。

・自社のM&A戦略に合致した事業かどうか詳細まで検討する
・定量化可能なDDの発見事項を、譲渡価格へ反映する
・定量化できないDDの発見事項を、最終契約書の条件へ反映し、リスクを遮断する
・M&Aの目的を達成するためのストラクチャーを検討する
・M&A実行後に必要な対応を明確化し、統合計画に反映させる

その後、最終契約締結に移ります。譲渡価格や契約条件を交渉し、双方が納得のいく形で契約を締結します。そしてM&A取引が実行され、対象の株式・事業の引き渡しをし、譲渡代金を支払って経営権の移転が完了します。

譲渡企業オーナーの譲渡を想定したより詳細なM&Aのプロセスは、以下の記事で解説していますので、ぜひご活用ください。
[M&Aのプロセス]

ドラッグストア業界のM&Aのメリットとは?5つを紹介

ドラッグストア業界のM&Aのメリット

ドラッグストア業界でM&Aを実施するメリットとして、以下の5つが挙げられます。

・事業を継続でき、従業員の雇用を守れる
・仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる
・経営の安定化が図れる

・ブランド力・販売力を強化できる
・経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

それぞれ詳しくみていきましょう。

ドラッグストア業界のM&Aのメリット①:事業を継続でき、従業員の雇用を守れる

第三者への事業承継を選択せずに廃業を選択した場合は、従業員は職を失うことになり、新しい職を探す必要があります。また、経営者としては、従業員のために新しい職を見つけてあげるなどの対応をするケースも考えられます。

一方で、M&Aの実施により、従業員の雇用を継続でき、経営者は従業員に対する責任を果たせるでしょう。

ドラッグストア業界のM&Aのメリット②:仕入先・取引先への影響を最小限に抑えられる

事業承継において、廃業を選択した場合には、仕入先や取引先との契約を終了させる必要が出てきます。債権債務の整理など、さまざまな影響が自社および取引先に波及します。

一方で、M&Aを実施する場合、一般的には既存取引先との契約関係は引き継ぐことが多く、廃業による影響を最小限に抑えられます。

ドラッグストア業界のM&Aのメリット③:経営の安定化が図れる

M&Aを実施して大手企業の傘下となれば、経営の安定化に期待できます。

大手による寡占化が進んでいる中で、中小規模のドラッグストアは成長が止まる可能性が高くなっています。

大手の傘下となって豊富なノウハウや資産、人材を活用できれば、経営基盤を強化でき、人材不足を解消でき、経営不振から脱却できるでしょう。

ドラッグストア業界のM&Aのメリット④:ブランド力、販売力を強化できる

M&Aによって大手企業の傘下に入ることで、強力なブランド力を短期間で獲得できます。知名度の高いブランドを掲げることで、地域住民からの信頼を早期に得られるでしょう。ブランドに対する安心感は新規顧客の来店を促し、集客力を根本から底上げする効果をもたらします。

自社単独では難しかった広域からの集客も、大手の知名度を活用することで実現可能となります。販売面においても、大規模な広告宣伝や共通ポイント制度といった仕組みの恩恵を直接享受できます。その結果、リピート率の向上や客単価の引き上げが期待できるでしょう。

さらに、利益率の高いプライベートブランド商品を取り扱える点も大きな強みです。独自機能を備えた商品をラインナップに加えることで、他店との差別化がより明確になります。こうした組織的な支援を活かすことで、店舗の営業力を飛躍的に高めることが可能です。

ドラッグストア業界のM&Aのメリット⑤:経営リスクを軽減し、事業承継をスムーズに進められる

M&Aは、後継者不在に悩むオーナーにとって、確実な事業承継の解決策となります。これまで築き上げてきた店舗や従業員の雇用を、信頼できる企業へ引き継ぐことが可能です。廃業を回避し、顧客との関係性を次世代へ継承できます。経営者自身も、引退後の生活資金として創業者利益を確保し、安心してリタイアできるでしょう。

また、買い手企業の安定した財務基盤を活用することで、経営リスクを大幅に軽減できます。老朽化した店舗の改装や最新設備の導入も、大手の資本があれば実行可能です。資金繰りに関する不安から解放され、サービス品質の向上に専念できます。

さらに、複雑化する法令遵守への対応についても、組織的なサポートにより体制を強化できます。管理業務の効率化が進むことで、本業である接客や調剤業務に、より多くのリソースを割けるようになるのです。

ドラッグストア業界のM&Aの相場

ドラッグストア業界のM&Aの相場

ドラッグストア業界の相場は、一概にいくらと明言できません。その企業の売り上げやブランド力、立地などさまざまな要素から判断されます。

これまでM&A仲介会社では年買法といわれる簡便的な株式評価手法を用いて評価を実施することが一般的でした。これは純資産に営業利益の数年分を加算する簡単な計算方法であり、理解が容易な一方、実績ベースの評価で、加算される営業利益の年数も業界ごとに固定的なものとなります。

その結果、成長性のある事業ほど低く株式価値が算定されてしまうリスクがあります。正しく買い手の株式価値評価手法を理解することは、売り手オーナーが自身の利益を守るために重要です。

ドラッグストア業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

・インカムアプローチ
・マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

・類似会社比較法
・類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかで算定結果は大きく依存します。

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。
[うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~]

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。
[株価シミュレーター]

ドラッグストア業界のM&Aのポイントとは?押さえておきたい3つを紹介

ドラッグストア業界のM&Aのポイント

ドラッグストア業界でM&Aを実施する際に押さえておきたいポイントとして、下記の3つが挙げられます。

・適切なM&A助言会社を選定する
・自社の正当な収益力・財務状況を把握する
・地域性の高さをアピールする

それぞれ詳しく解説します。

ドラッグストア業界のM&Aのポイント①:適切なM&A助言会社を選定する

M&A助言会社に求められる能力は、法務・会計・税務・ファイナンスに精通していること、誠実であること、顧客の立場に寄り添って助言を提供できる立ち位置であること、M&Aの売り手・買い手の双方の行動原理を理解しそれを交渉に活かせること、と多岐に渡ります。

真に顧客に寄り添える立場であるか、また、上記を見極めるためにも売り手・買い手の双方から報酬を受領する仲介会社ではなく、売り手と同じ船に乗り事業オーナーに対し助言する会社(FA)であるかを選定することが重要です。また、その会社に在籍するアドバイザーの知識や経験、ノウハウなどを含むFAサービスの品質が重要です。

ドラッグストア業界のM&Aのポイント②:自社の正当な収益力・財務状況を把握する

売り手にとって、自社をよい条件で売却するために必要なのは、自社の正当な収益力・財務状況の把握です。

税務対策やオーナーの個人的な経費を費用計上している中小企業は数多くあるため、具体的な買い手候補にアプローチする前に、自社の実質的な収益力や、貸借対照表においても現金化可能資産や非事業用資産を確認し、実質的な自社の財務状況の把握が必要です。

ドラッグストア業界のM&Aのポイント③:地域性の高さをアピールする

自社が売り手となってM&Aを進める際、地域に根付いた地域密着型のドラッグストアであれば、買い手からの評価も高くなります。

地域住民から、医薬品はもちろん、食品や日用品などにおいても頼られる店舗をアピールできれば、事業拡大を目指している買い手側は魅力的に感じ、よりよい条件を提示してくれる可能性が高まります。

ドラッグストア業界のM&A売却事例6選

ドラッグストア業界のM&A売却事例

ここでは、ドラッグストア業界で実施されたM&Aの売却事例を紹介します。本記事では、下記の6つの事例を紹介します。

・ウエルシアホールディングス×ふく薬品
・キリン堂ホールディングス×BCJ-48
・スギホールディングス×薬日本堂

・マツキヨココカラ&カンパニー×新生堂薬局
・ウエルシアホールディングス×コクミン
・クスリのアオキHD×ナルックス

実際の取引を参考にして、自社の売却のために役立ててください。

ドラッグストア業界のM&A売却事例①:ウエルシアホールディングス×ふく薬品

ウエルシアは、2022年12月1日付でドラッグストア経営のふく薬品を買収し、52.58%の株式を取得しました。

ふく薬品は1978年創業、売上高69億7500万円。沖縄県内に25店舗(ドラッグストア17店舗、調剤薬局7店舗、コンビニエンスストア1店舗)を展開しています。本件M&Aに先立ち、グループ会社のサンキュウファーマシーを完全子会社化したうえで、吸収合併しました。

ウエルシアは関東を中心に、東北地方から九州地方まで展開しています。健康を意識した付加価値の高い商品やサービスの提供を行う「専門総合店舗」を目指し、「調剤」、「カウンセリング」、「深夜営業」及び「介護」を中心とした独自のビジネスモデルによる店舗づくりを行っています。

本取引により、ウエルシアは沖縄エリアでの経営規模の拡大と経営体質の強化を図り、ふく薬局はノウハウや人材資源のプラスを図っています。

ドラッグストア業界のM&A売却事例②:キリン堂ホールディングス×BCJ-48

ドラッグストア中堅であるキリン堂の寺西豊彦社長と寺西忠幸会長は、米投資ファンドのベインキャピタルと共同で、キリン堂をMBOにより買収しました。ベインキャピタルが投資助言を行うファンドが100%出資するBCJ-47が全額出資で設立したBCJ-48を通じてTOBを実施し、完全子会社化、非上場化を目指します。

キリン堂は東証1部上場廃止となり、寺西社長と寺西会長は継続してキリン堂の経営にあたります。また、寺西廣行氏は引き続き完全子会社のキリン堂の取締役となり、3人はSPCに対して直接または間接に出資することを検討しています。

この結果、同3人とベインキャピタルの所有割合は原則として40:60となる予定です。キリン堂は売上高営業利益率3%の目標を達成すべく単独で経営努力をしてきましたが、上場企業として売上や利益を確保しながら構造改革を行うことには限界があると判断しました。継続的な既存店売上の強化や新規出店に加えてM&A実行の両輪からなる事業構造改革を進めています。

ドラッグストア業界のM&A売却事例③:スギホールディングス×薬日本堂

スギは、2023年12月27日付で漢方相談店舗運営の薬日本堂を買収し、全株式を取得しました。

薬日本堂は1971年に設立され、全国で16店舗を展開しています。「カガエ カンポウ ブティック」、「ニホンドウ漢方ブティック」、「薬日本堂」という3つの業態を有する「漢方相談店舗」を中核に、「スクール」、「商品開発」、「書籍監修」、「商品流通」、「ウェブメディア」、「ミュージアム」など、「漢方」を軸とした事業を幅広く展開しています。

スギは「漢方」を含めた服薬領域に注力している企業です。関東・中部・関西・北陸エリアに1,600店舗以上を展開し、約4,000名の薬剤師と約500名の管理栄養士を擁する調剤併設型ドラッグストアを強みに、地域の生活者の病気予防・健康管理に生涯にわたって関わり、健康増進に貢献する「トータルヘルスケア戦略」を展開しています。

本取引によって、独自性の高い商品開発、グループ店舗での新業態の開発、一般用漢方医薬品の販売強化、医療用漢方医薬品を含む処方せんの応需促進などを図ります。

ドラッグストア業界のM&A売却事例④:マツキヨココカラ&カンパニー×新生堂薬局

マツキヨココカラ&カンパニーの子会社であるマツキヨココカラ&カンパニー分割準備株式会社は、2024年3月15日付で新生堂薬局を買収し、子会社化することを決議しました。

買い手のマツキヨココカラ&カンパニーは、国内最大級のドラッグストアおよび調剤薬局チェーンを運営する持株会社です。

売り手の新生堂薬局は、1978年に設立された福岡県を拠点とする企業です。売上高は約350億円であり、九州地方を中心にドラッグストアや調剤薬局を約100店舗展開しています。地域密着型の「健康寿命延伸」を掲げた独自の店舗運営に強みがあり、地元住民から高い信頼を得てきました。専門性の高いカウンセリングとICTを活用した利便性の高いサービスを提供しています。

本件によって、マツキヨココカラグループは九州エリアにおける経営基盤を大幅に強化します。双方のノウハウを融合させることで、地域医療を支える次世代のドラッグストアモデルの構築が予測されています。

ドラッグストア業界のM&A売却事例⑤:ウエルシアホールディングス×コクミン

ウエルシアホールディングスは、2022年6月1日付で老舗ドラッグストアのコクミンを買収し、連結子会社化しました。

買い手のウエルシアホールディングスは、調剤併設型ドラッグストアの国内最大手として知られる企業です。

売り手のコクミンは、1935年に設立された大阪府を拠点とする老舗のドラッグストア企業です。売上高は約400億円であり、全国の主要駅前や地下街を中心に約170店舗を展開しています。都市部の一等地に多くの店舗を持つことが強みであり、長年にわたり高いブランド力と顧客基盤を築いてきました。

今回のM&Aにより、ウエルシアは手薄だった都市部の駅前立地を一挙に獲得しました。コクミンの持つ好立地な店舗網と、ウエルシアの調剤・介護ノウハウを融合させることで、さらなる成長が予測されています。

ドラッグストア業界のM&A売却事例⑥:クスリのアオキHD×ナルックス

クスリのアオキホールディングスは、2022年3月1日付で食品スーパーのナルックスからスーパー事業を買収し、子会社化しました。

買い手のクスリのアオキホールディングスは、北陸地方を中心にフード&ドラッグ形式の店舗を全国展開しています。

売り手のナルックスは、石川県で地域密着型のスーパーマーケットを展開してきた企業です。売上高は約40億円であり、地元産の新鮮な食材や惣菜の販売において高い支持を得てきました。創業以来、地域住民の食生活を支える重要なインフラとしての役割を担い、強固な仕入れネットワークを保有しています。

この事例は、ドラッグストアが食品スーパーの機能を取り込む戦略的な決断といえるでしょう。生鮮食品の取り扱いを強化することで、店舗の集客力と利便性がさらに高まると予測されています。

ドラッグストア業界のM&Aに関するよくある質問

ドラッグストア業界のM&Aに関するよくある質問

ドラッグストア業界でのM&Aにおいてよくある質問を紹介します。

最適な取引を実現するためにも、ぜひ参考にしてください。

ドラッグストア業界のM&Aに関するよくある質問①:地方企業でもM&Aは可能ですか?

もちろん全国問わず、M&Aは可能です。

全国対応するM&A助言会社はありますし、買い手もまだ事業展開していない地域への進出を目的として、M&Aを戦略の一つとして活用することは一般的です。

ドラッグストア業界のM&Aに関するよくある質問②:どうすればよい条件で会社を売却できますか?

いくつかの留意点を押さえれば、よい条件で売却できる可能性は高まります。

業界によって、株式価値評価の相場が異なるため、M&A助言会社に相談し、企業評価を取得することから始めるのが、よい選択であると考えられます。

ドラッグストア業界のM&Aに関するよくある質問③:小規模なドラッグストアでも売却できますか?

小規模なドラッグストアでも、もちろん売却可能です。

大手ドラッグストアは、小規模ながらも地域密着型のドラッグストアを欲しているケースが多くなっています。そのため、小規模なドラッグストアでも地域密着性や顧客の継続性などが高ければ、中規模のドラッグストアよりも好条件で売却できるかもしれません。

まとめ

まとめ

ドラッグストア業界では、大手企業による中小企業の買収のみならず、大手同士の合従連衡が進んでおり、資金力や経営体力に劣る中小企業は淘汰される傾向にあります。また、食品スーパーやコンビニエンスストアなど他業態との競争も激化しています。

ドラッグストア業界でM&Aを進められれば、会社が淘汰されることを回避し経営の安定化を図れるだけでなく、後継者問題の解決も可能になるでしょう。

しかし、買い手から魅力的と感じられなければ、理想的なM&Aは実現できません。買い手が魅力的に感じる要素として地域性の高さが考えられるため、しっかりとしたアピールが重要です。

オーナーズ株式会社では、売り手に特化したFAサービスを展開しています。専属のエージェントがお客様の理想の取引実現に向けて、お客様のご希望に即したサービスをとことん提供いたします。よりよい評価額での売却に向けたアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を削減した案件成約も実現可能です。

また、具体的な買いニーズを持っている企業のほか、業界・買い手企業分析に基づき事業親和性の高い企業を買い手候補としてご提案します。大手金融機関や大手M&A仲介、M&Aマッチングサービスとも連携しているため、買い手探索のルートが豊富です。

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この記事の著者

RISONAL 編集部(オーナーズ )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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