動画制作業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

2026.07.08

公開日:2026.07.08

2026.07.08

2026.07.08

更新日:2026.07.08

2026.07.08

動画制作業界のM&A相場はいくら?売却の手法やコツも解説!

動画制作業界は、企業のPR動画、広告動画、商品・サービス紹介、採用・研修向け動画、SNS向け動画などを、企画から撮影・編集まで手がける事業領域です。

一方で、制作ツールの普及などにより参入しやすい領域もあり、案件内容によっては競争が激しくなりやすいこと、制作単価の低下圧力、ディレクターや編集者など特定人材の企画力・制作力に品質が左右されやすいこと、人材の確保や定着、生成AIをはじめとする技術の変化など、複数の経営課題を抱えています。

こうした環境を背景に、クリエイターの確保、顧客基盤の承継、動画広告・SNS動画などの領域への対応を目的として、M&Aが検討されるケースがあり、中堅・中小の動画制作事業者にとっても、売却や事業承継は検討対象となり得る選択肢の一つです。

本記事では、動画制作業界のM&Aを行う際の相場の考え方をはじめ、業界の現状や代表的な売却手法について解説します。

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動画制作業界の現状

動画制作業界は、動画・映像の企画、撮影、編集、配信支援までを担う事業領域です。手がける対象によって、企業のPR動画や会社紹介、テレビCMやWeb広告、商品・サービスの紹介動画、採用や研修向けの動画、YouTubeやSNS向けの動画、ライブ配信やイベント映像、アニメーションなどに大別されます。

企業から受託して制作を行う事業者が多い一方で、自社メディア運営、動画広告運用、配信支援、コンテンツ制作支援などを組み合わせる事業者も見られます。

動画広告やSNS動画、企業の採用・広報動画などの活用が広がるなかで、動画制作への需要が生じており、経済産業省の特定サービス産業実態調査でも、映像情報制作の分野は一つの産業として位置づけられています(※)。

事業者は、規模の大きい制作会社から、少人数の制作会社、フリーランスに近い形で活動する事業者まで幅広く存在します。

一方で、動画制作業界では、競争環境、単価低下圧力、人材確保、属人性、技術変化への対応など、複数の経営課題が指摘されています。

機材や編集ソフトが普及により参入しやすい領域もあり、案件内容によっては競争が激しく、制作単価に低下圧力がかかる場合があります。

また、企画・構成・撮影・編集の品質が、ディレクター、カメラマン、編集者など特定人材の経験やスキルに依存しやすく、人材の確保や定着が課題となっています。

生成AIを含む制作支援ツールの普及など、技術変化への対応も課題となる場合があります。

こうした構造的課題を背景に、広告代理店や大手映像制作会社、マーケティング支援会社、IT・Web制作会社、PEファンドなどが、中堅・中小事業者の買収や同業同士の経営統合を検討・実行するケースも見られ、動画制作業界全体でも、事業承継、人材確保、顧客基盤の承継、提供領域の拡大などを目的に、M&Aが選択肢として検討される場面があります。

※参考:経済産業省「特定サービス産業実態調査

動画制作業界でM&Aを行うのはなぜ?売却の理由を紹介

動画制作業界でM&Aが検討される理由は、主に「事業承継」と「経営基盤の強化・人材確保や成長領域への対応」の二つに整理できます。

まず、事業承継の観点では、動画制作事業者では、経営者本人や限られたディレクターに、企画力、顧客との関係、制作ノウハウが集中しているケースがあり、後継者不在やキーパーソンの離職が、事業継続に影響する可能性があります。

特に少人数で営む事業者では、案件獲得力や制作品質が、経営者や少数のクリエイターに集中している場合もあり、後継者や制作・営業体制の承継が不十分な場合、買い手候補の評価や譲渡後の事業継続に影響する可能性があります。

次に、経営基盤の強化・人材確保や成長領域への対応という観点では、クリエイターの確保や育成、SNS動画や動画広告といった成長領域への対応、生成AIなどの技術への対応といった事業環境の変化に、中小事業者が単独で対応するには、人材面・営業面・技術面で負担が大きくなる場合があります。

広告代理店、大手制作会社、マーケティング支援会社などの傘下に入ることで、人材確保、受注基盤の拡大、提供サービスの拡充などについて、買い手候補の経営資源を活用できる可能性があります。

また、動画制作業界では、制作物の著作権・利用許諾・素材ライセンスなどの権利関係、主要顧客との取引継続の見込み、クリエイターの定着などが重要な確認事項となるため、これらの権利関係、制作体制、取引関係をどのように維持・承継できるかは、M&Aを検討するうえで重要な確認事項です。

動画制作業界での企業売却方法は?3種類を紹介

動画制作業界のM&Aでは、売却対象、クリエイター・従業員との雇用・業務委託関係、顧客との取引関係、制作物の権利関係の扱いによって、適した手法が変わります。

代表的な手法は以下の3つです。

  • 株式譲渡
  • 会社分割
  • 事業譲渡

動画制作事業者のM&Aでは、制作物の著作権・利用許諾・素材ライセンスなどの権利関係、クリエイターの雇用契約・業務委託契約、主要顧客との取引関係の承継、未納品案件の責任分担などが論点となるため、手法選択にあたっては、これらをどのように承継するかを慎重に検討する必要があります。

それぞれの手法について解説します。

株式譲渡とは?中小企業M&Aで最も選ばれる手法の仕組みと特徴

株式譲渡とは、企業の株主が保有する株式を他者に譲渡することで、経営権を移転するM&Aの手法のひとつです。中小企業のM&Aにおいては最も多く活用されており、後継者不在や事業承継を目的としたケースでよく採用されています。

株式譲渡のメリット

株式譲渡において、売却対象となるのはあくまで「株式」であり、会社そのものの法人格や契約関係、資産・負債はそのまま引き継がれます。

そのため、以下のようなメリットがあります。

  • 従業員や取引先との契約を維持したまま、スムーズな引き継ぎが可能
  • 許認可や契約の再取得が原則不要で、実務上の負担が少ない
  • 法人格が継続するため、営業活動を中断せずに承継できる

とくに、現経営者が引退を検討している場合でも、事業を止めることなくバトンタッチできるため、後継者問題の有効な解決策となります。ただし、契約上のチェンジ・オブ・コントロール(COC)条項による相手方同意や、業種許認可の変更届・再許可が必要となる場合があるため、事前確認は不可欠です。

株式譲渡の注意点・デメリット

一方で、株式とともに過去の負債や簿外債務(帳簿に載っていないリスク)も引き継がれるという側面もあるため、買い手企業にとっては慎重な対応が必要です。

そのため、M&Aを進める際には、財務・法務・税務などに関するデューデリジェンス(詳細調査)を丁寧に実施し、リスクを洗い出すことが不可欠です。

会社分割とは?M&Aで活用される組織再編の手法と注意点

会社分割とは、企業が事業の一部を他の会社に移転することで、権利義務を承継させる法的な組織再編手続きです。M&Aにおいては、売却対象の事業を切り出してスムーズに移転させる手段として活用されています。

会社分割の主な種類

会社分割には、以下のような分類があります。

  • 新設分割:新たに設立した会社に事業を承継させる
  • 吸収分割:既存の他社に事業を承継させる

さらに、分割により得る対価の受け取り先によっても分類されます。

  • 分割型分割:対価を分割元会社の株主が受け取る
  • 分社型分割:対価を分割元会社自身が受け取る

会社分割のメリットと特徴

会社分割の最大の特徴は、契約・資産・負債などの権利義務を包括的に移転できる点です。これにより、個別契約ごとの承継手続きを省略でき、事業の引き継ぎが円滑に進められます。

また、分割によって整理された事業をその後に売却することで、M&Aの手続きも効率化されます。

税務上の注意点:適格分割と非適格分割の違い

会社分割には税務上の取り扱いに注意が必要です。「適格分割」であれば譲渡益の課税は繰り延べされますが、採用するスキームによっては「非適格分割」に該当します。

非適格分割では、資産が時価で評価され、譲渡益課税やみなし配当課税の対象となるため、税負担が発生します。

また、会社分割と株式譲渡をセットで行う場合、タイミングによって課税リスクが高まるため、スキーム設計は専門家のアドバイスを受けながら慎重に進めることが重要です。

事業譲渡とは?M&Aで活用される承継手法と税務上の注意点

事業譲渡は、企業が事業の一部または全部を、契約に基づいて他社へ売却するM&A手法のひとつです。

譲渡の対象となる資産・負債・契約関係を個別に指定して承継する点が特徴であり、柔軟性が高い一方で、手続きは煩雑になりやすいという側面もあります。

事業譲渡のメリット:簿外債務を回避しやすい

事業譲渡では、契約書に記載されたものだけが承継対象となるため、買い手企業にとっては、不要な債務やリスクを回避しやすくなります。

特に、簿外債務の存在が懸念されるケースでは、株式譲渡ではなく事業譲渡を希望する買い手企業が多い傾向にあります。

売り手側の税務上の扱い:事業譲渡益に課税

事業譲渡によって得た対価のうち、譲渡対象資産・負債の簿価純額との差額は「事業譲渡益」として、売り手側に法人税が課税されます。

また、事業譲渡には以下のような消費税に関する注意点もあります。

課税資産と非課税資産の両方をまとめて譲渡するため、資産ごとの課税・非課税を区分し課税対象資産部分の消費税を計算する必要があり、それぞれの対価を合理的に区分し、課税・非課税の計算を行う必要があります。

事業譲渡のデメリット:承継手続きが煩雑

個別承継であるため、以下のような実務負担が大きい点はデメリットと言えます。

  • すべての契約(従業員との雇用契約含めて)を再締結する必要がある
  • 許認可や届出が一から取得し直しとなる場合がある

動画制作業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

動画制作業界の売却の流れは?3つのステップを紹介

動画制作業界のM&Aを進める場合は、大きく3つのステップに分けて進められます。

  1. M&Aの準備と助言会社の選定
  2. 買い手候補先企業との接触、意向表明受領
  3. 詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

それぞれの段階で必要となる準備や手続きが異なるため、流れを把握しておきましょう。

Step1.M&Aの準備と助言会社の選定

はじめに、売却目的と希望条件を整理したうえで、M&AアドバイザーやFAなどの助言会社を選定します。

この段階で重要なのは、想定される売却価格だけでなく、どのような買い手候補に、クリエイターの体制、顧客との関係、制作物の権利関係をどのように承継したいのかを明確にしておくことです。

動画制作業の場合、買い手候補の評価や取引条件に影響し得る論点として、主要顧客との取引関係、売上依存度、取引期間、発注実績、取引継続の見込み、ディレクター、カメラマン、編集者、モーショングラフィックス担当者などの在籍状況、雇用・業務委託・外注の契約形態、得意とする制作領域、案件単価、粗利率、制作工程の内製・外注の区分、制作物の著作権・利用許諾、素材・音源・フォント・出演者・ナレーション等に関する権利処理の状況、継続契約・リピート案件・スポット案件の構成などが挙げられます。

これらを事前に棚卸しし、資料として説明できる状態に整えておくことで、後工程での論点整理や条件交渉を進めやすくなる場合があります。

Step2.買い手候補先企業との接触、意向表明受領

次に、助言会社を通じて買い手候補へ打診を行います。初期段階では概要資料を提示し、関心を示した企業と秘密保持契約を締結したうえで、財務・事業などに関する詳細情報を段階的に開示します。

買い手候補からは、譲渡価格のレンジ、取引方法、引き継ぎ条件、売却後の運営方針などをまとめた意向表明書が提出されます。

売り手は、提示金額だけでなく、クリエイターの処遇、主要顧客との取引継続方針、制作体制やブランドの運営方針なども含めて比較し、基本合意に進むかを判断します。

Step3.詳細調査(DD)、最終契約とクロージング

基本合意後は、買い手による詳細調査が行われます。

動画制作業では、財務・税務・法務・労務・ビジネス面の確認に加えて、取引継続性、制作体制、人材の定着、権利関係の確認が重視されやすい点が特徴です。

特に確認されやすいのは、主要顧客との取引条件、発注実績、売上依存度、取引継続の見込み、クリエイターの雇用契約・業務委託契約・外注契約、契約期間、著作権譲渡・利用許諾の有無、離職・契約終了リスク、制作物の著作権の帰属、顧客への利用許諾範囲、使用素材・音源・フォント・出演者・ナレーション等の権利処理状況、継続契約、リピート案件、スポット案件、進行中案件、受注残の状況、従業員の労務管理、業務委託・外注先との契約管理、フリーランス取引に関する管理状況などです。

調査結果を踏まえて、譲渡価格、表明保証、補償条項、クロージング条件、未納品案件の責任分担などを調整し、最終契約を締結します。

その後、対価の決済と引き渡しを行うクロージングをもって、取引が完了します。

M&Aの流れについてより詳しく知りたい方は以下のページをご覧ください。

M&Aの流れとは?準備からクロージング・PMIまで全ステップを売り手目線で解説

動画制作業界の売却の相場は?価値算定方法を解説

動画制作業界のM&Aにおける売却価格は、「〇〇円が相場」と一律に決まるものではありません。

実務では、主要顧客との取引関係、取引継続の見込み、クリエイターの体制、得意とする制作領域、権利関係、収益力、負債、買い手候補の評価方針などを踏まえ、最終的には売り手と買い手候補の交渉によって価格が決まります。

動画制作事業者は、継続的な取引のある法人顧客の有無、クリエイターの体制と定着状況、制作領域の専門性、制作工程の内製・外注の区分などが買い手候補の評価上重視されやすく、同規模の売上であっても、継続契約・リピート案件の比率、案件単価、粗利率、外注比率、SNS動画・動画広告などの領域への対応状況によって、買い手候補の評価に差が出る可能性がある業態です。

特に、リピート案件や年間契約など、継続的な発注実績のある取引を持つ事業者や、特定の制作領域で実績や認知を持つ事業者、属人化を抑えてチームで制作できる体制を整えた事業者は、財務数値に加えて、顧客基盤、制作体制、クリエイターの定着、権利関係の整理状況、案件管理体制などが評価上考慮される場合があります。

こうした理由から、動画制作事業者のM&Aでは、まず企業価値を算定し、そのうえで負債や現金などを考慮しながら、評価の全体像を整理するのが一般的です。

以下では、その基本的な考え方について解説します。

1.企業価値を算定する

動画制作業界のM&A実務において事業価値の算定には、大きく分けて2つの方法があります。

  • インカムアプローチ
  • マーケットアプローチ

インカムアプローチは、営業資産が生み出す将来キャッシュフローを評価の基礎とする方法です。代表的なディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)法では、将来キャッシュフローを現在価値に割り引いて事業価値を試算します。

理論的に優れた方法ではあるものの、将来キャッシュフローの見積もりや割引率の計算は非常に難易度が高く、経験を積んだ専門家でないと試算が困難で、初見では理解しづらいのが大きな欠点でしょう。

本稿では「価値の概算を簡単に知る」ことを目的にしていますので、インカムアプローチの詳細な説明は割愛します。

マーケットアプローチは、市場における取引価格を参考にして事業価値を算定する方法です。具体的には、以下のような方法が存在します。

  • 類似会社比較法
  • 類似取引比較法

類似会社比較法は、評価する対象の企業の類似会社にあたる上場会社の企業価値と、営業利益や収益力(EBITDA)といった財務指標から算出された倍率(マルチプル)を評価対象会社に適用することで、事業価値を算出する方法です。

具体的には、以下のように算定します。

EBITDA×業界相場の倍率(EBITDAマルチプル)=企業価値
(EBITDAマルチプル=上場類似会社の企業価値/上場類似会社のEBITDA)

EBITDAは、営業利益に減価償却費を足して算出されるものです。

また、類似会社は、業界が同じ上場企業を選定するのはもちろんのことですが、ビジネスモデルや収益構造、顧客の層などの類似性から選定するパターンもあります。類似会社をどのように選ぶかによって、算定結果は大きく左右されます。

2.株式価値を算定する

企業価値を算出したら、株式価値を算出しましょう。株式価値は、以下のように算出します。

企業価値-有利子負債+現金同等物=株式価値

第三者に譲渡する場合に、どの程度の価値がつくかを把握しておくことは重要なため、理解しておきましょう。

なお、マーケットアプローチには、類似会社比較法のほか、類似するM&Aによる取引事例を用いた類似取引比較法という方法が存在します。

しかし、参照する過去の取引における対象会社が非上場である場合、入手可能な財務数値が限定的であるため、同方法が中小企業のM&Aで利用されることは少ないのが現状です。

M&Aにおける価値の算定については、下記で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてください。

うちの会社、結局いくらで売れるの?~事業オーナーの疑問に答えるコラム①~

また、自社の具体的な株式価値を知りたい場合には、株価シミュレーターを用意していますので、以下で試算可能です。ぜひご活用ください。

株価算定シミュレーター

動画制作業界で企業を売却する3つのメリット

動画制作業でM&Aを活用するメリットは、経営者個人の利益にとどまりません。

適切な承継は、クリエイター・従業員の雇用や、顧客に対する制作対応の継続につながる可能性があります。

  • クリエイター・従業員の雇用と制作ノウハウを維持しやすくなる
  • 経営者は売却対価を得られる可能性がある
  • 顧客への制作対応を継続しやすくなる

ここでは、売り手にとって特に重要な3つのメリットを解説します。

クリエイター・従業員の雇用と制作ノウハウを維持しやすくなる

動画制作事業者は、企画、撮影、編集を担うディレクター、カメラマン、編集者などのクリエイター・従業員の存在が重要です。

廃業を選択した場合、クリエイター・従業員の雇用や業務機会の継続が難しくなるほか、長年にわたって培われた制作ノウハウや顧客対応に関する知見が、事業として承継されにくくなる可能性があります。

M&Aにより事業が承継されれば、クリエイター・従業員の雇用や業務機会を維持しながら制作を継続しやすくなる場合があります。売り手にとっては、人材や制作ノウハウを次の運営体制へ承継しやすくなる点がメリットです。

企画や編集のスキルが特定のクリエイターに蓄積されている場合、当該人材の継続関与の可否は、買い手候補の評価や譲渡後の運営に影響する可能性があります。

経営者は売却対価を得られる可能性がある

M&Aによる売却は、これまで築いてきた顧客基盤、クリエイターの体制、制作実績やブランドを含む事業価値を、譲渡対価として回収する手段の一つです。

売却対価を得られた場合、引退後の生活資金、資産承継、次の事業への投資などに活用できる可能性があります。

後継者不在のまま廃業した場合、進行中案件の引き継ぎ対応、顧客への説明、クリエイター・外注先との契約整理などが必要になる可能性があります。また、顧客基盤や制作体制が事業として評価されにくくなる場合があります。

M&Aでは、買い手候補は一般的には事業の継続性を前提に価値を評価するため、経営者は計画的に出口を設計しやすくなります。

顧客への制作対応を継続しやすくなる

動画制作事業者は、顧客の動画や映像を継続的に制作することで、企業のマーケティングや情報発信に関わっているケースが少なくありません。

突然の廃業は、顧客にとって新たな制作先の確保、進行中案件の引き継ぎ、過去制作物の権利・データ確認などの負担につながる可能性があります。

M&Aによって承継されることで、制作体制を維持しながら対応を継続しやすくなるため、顧客への影響を抑えながら事業を引き継ぎやすくなる点は、売り手にとってメリットの一つです。

動画制作業界で企業を売却する際の3つのポイント

動画制作業でM&Aを円滑に進めるには、売上規模だけでなく、買い手候補が重視する論点を整理しておく必要があります。

買い手候補は、顧客との取引継続の見込み、クリエイターの体制、制作物の権利関係を慎重に確認します。

  • 顧客基盤・クリエイター体制・権利関係を棚卸しする
  • 事業の属人性を下げる
  • 信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する

ここでは、動画制作事業者の売却を検討する際に、特に重要な3つのポイントを解説します。

顧客基盤・クリエイター体制・権利関係を棚卸しする

動画制作事業者の買い手候補による評価は、財務数値に加えて、主要顧客との取引関係、クリエイターの体制、得意領域、制作物の権利関係などに影響を受ける可能性があります。

買い手候補は、これらが譲渡後も維持・活用できるかを慎重に確認します。

そのため、売却前に以下の点を棚卸しし、説明できる状態にしておくことが重要です。

  • 主要顧客の一覧、取引条件、発注実績、売上依存度、リピート案件や年間契約の状況
  • ディレクター、カメラマン、編集者などの在籍・稼働状況、雇用・業務委託・外注の契約形態、契約期間、離職・契約終了リスク
  • 得意とする領域(広告動画・SNS動画・アニメーションなど)、制作実績、案件単価、粗利率、内製・外注の区分
  • 制作物の著作権の帰属、顧客への利用許諾範囲、使用素材・音源・フォント・出演者・ナレーション等の権利処理状況
  • 継続契約、リピート案件、スポット案件、進行中案件、受注残、案件ごとの粗利率

これらの整理が不十分だと、DDを経て価格見直し、追加条件の設定、交渉停止などにつながる可能性があります。

事業の属人性を下げる

動画制作事業者で買い手候補の評価に影響しやすい要因の一つが、経営者や特定のディレクター・クリエイターへの過度な依存です。

企画力、顧客対応、品質管理が一部のキーパーソンに集中している場合、買い手候補から、譲渡後の運営リスクが高い事業と判断される可能性があります。

属人性による懸念を抑えるためには、以下のような取り組みが重要です。

  • 企画、構成、撮影、編集、品質管理、納品前確認の手順の標準化と文書化
  • クリエイター間でのナレッジ共有と教育体制の整備
  • 顧客対応の組織的な管理(担当の複数化など)
  • 案件管理、制作フロー、権利確認、素材管理、納品データ管理の体系化

属人性を下げることで、人員交代後も事業を維持しやすい体制として評価される可能性が高くなり、買い手候補が検討しやすくなるというプラスの効果があります。

信頼できるM&Aアドバイザー、弁護士、税理士などの専門家を活用する

動画制作事業者のM&Aでは、制作物の著作権・利用許諾・素材ライセンスの扱い、クリエイターの雇用契約・業務委託契約・外注契約の承継、主要顧客との取引関係、未納品案件の責任分担など、業種特有の論点が生じる場合があります。

準備やスキーム設計が不十分なまま進めると、譲渡条件の見直し、クロージング条件の追加、売却後の紛争などにつながる可能性があります。

そのため、以下のような専門家の支援を受けることが重要です。

  • 売り手側の立場で支援するFA・M&Aアドバイザー
  • 税務は税理士、契約・権利関係・責任分担は弁護士、会計・財務DDは公認会計士、労務は社会保険労務士、知的財産は弁理士などの専門家

売り手側のFAを活用することで、価格交渉や条件調整において、売り手の意向を踏まえた交渉方針を整理しやすくなります。

感情に左右された場当たり的な判断を避けるという観点でも、第三者による専門的な視点を取り入れることが望ましいです。

動画制作業界での企業売却にかかる税金とは?

企業を売却する際には、売却益に対して税金が発生します。この税金の仕組みは、「個人オーナーが売却する場合」と「法人が株式を譲渡する場合」で異なるため、正しく理解しておくことが重要です。個人・法人別にわかりやすく解説します。

個人オーナーの場合

個人が自社株などの株式を譲渡し、譲渡益(売却益)が発生した場合、その利益は「譲渡所得」として扱われます。

課税の仕組み

譲渡所得 = 売却価格 -(取得費 + 譲渡費用)

この譲渡所得には、以下の税が課せられます。

  • 所得税(復興特別所得税含む)
  • 住民税

給与所得などとは分離して課税されるため、所得の合算は不要ですが、確定申告が必要です。

ただし、ミニマムタックスに該当する場合は給与所得等の他の所得との合算して算出する必要があるため、適切に節税するためには、事前に税理士など専門家への相談が欠かせません。

法人の場合

法人が保有する株式を譲渡した場合、その売却益は法人の「益金(収益)」として扱われ、他の事業収益と合算されて法人税等が課税されます。

法人の場合の税務処理

  • 譲渡益は法人所得として計上され、通常の法人税率で課税
  • 譲渡損失が出た場合、他の所得と損益通算が可能
  • 所得と損失の調整により、柔軟な節税が可能

評価差額にも注意

帳簿価額と時価の差(含み益)がある場合、譲渡時に課税対象となる可能性があります。

まとめ

動画制作業界は、企業のマーケティングや情報発信に関わる事業領域である一方で、競争環境、制作単価への低下圧力、人材の確保・定着、属人性の高さ、生成AIを含む制作支援ツールの普及など、複数の経営課題を抱えています。

中堅・中小の動画制作事業者にとっては、単独でこれらに対応する負担が大きくなる場合があります。そのため、M&Aは事業継続や関係者への影響を踏まえた選択肢の一つになり得ます。

売却を円滑に進めるためには、顧客基盤、クリエイター体制、制作物の権利関係の棚卸しに加えて、属人性の低減や主要顧客との関係維持を含めた準備を、M&Aアドバイザー、弁護士、税理士、弁理士などの専門家に確認しながら早期に進めることが望ましいです。

RISONALでは、売り手に特化したFAサービスを提供しています。専属のエージェントがお客様の希望に沿った取引を実現するため、最適なサポートを行います。より高い評価額での売却を目指したアドバイスを受けられるだけでなく、余計な仲介手数料を抑えた成約も可能です。

動画制作業界のM&Aでは、買い手目線で条件調整が進みやすい仲介型の支援の場合、価格や引き継ぎ条件が売り手に不利になるケースも少なくありません。そのため、誰の利益を最優先に交渉するのかを明確にした支援体制が重要です。

無料相談が可能です。実際にどの程度の価格で売却できるのか、また、どのようにすればより高く売却できるのかを、ぜひご確認ください。

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この記事の著者

RISONAL編集部(オーナーズ株式会社 )

RISONAL編集部

売り手の理想のM&Aの実現に特化した専属M&Aエージェントサービスおよび事業オーナー向けの資産運用サービスを提供するオーナーズ株式会社

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